カブトムシの幼虫、さなぎの育て方2018年

虫好きな猫たちのために、ベランダでカブトムシの幼虫を育てる悪戦苦闘の物語

カブトムシの大きさの秘密①「自然界で極稀に見られる”カブトムシの大型化・小型化”の原因」(「幼虫の栄養過剰や栄養失調」が原因ではなく、「幼虫の発育速度が遅いこと・速いこと」が原因。健康な「オオカブト」「ミニカブト」に育てるには、単なる「幼虫のエサの質と量の調整」ではなく「幼虫の発育速度の調整」が必要)

例年、夏休みも終わる頃になると「飼育していたカブトムシが卵を産んだので、幼虫を育てたい」という相談が相次ぐ。但し、どの家庭も一度はカブトムシの幼虫飼育の経験があるので、その内容は昔と違って専門的だ。「出来るだけ赤いカブトムシに育てたい」とか「出来るだけ大きな80ミリ台のオオカブトに育てたい」とか「うちの子供はカナブンのような小さなカブトムシの方がカワイイというので、ミニカブトに育てたい」というユニークなものばかりだ。

(1)「赤カブト」については「カブトムシの色の秘密①②」で述べたように、「カブトムシの色は天敵から身を守る保護色として餌場の色と遺伝に関係しているため、その選別飼育は難しいこと(ここ数年のメダカブームの火付け役である楊貴妃メダカ等のカラーメダカの品種改良も保護色と遺伝が関係している)」、「飼育・養殖されたカブトムシの中にも遺伝法則に従い一定の割合で赤カブトは存在するため、毎年入手可能であること」を理由に、従来の飼育方法で納得してもらう。

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(今年猫たちのために飼育した幼虫4匹のうち、赤カブトになったのは1匹)

(2)「オオカブト」「ミニカブト」については、「育てたい理由は何故か」と聞くと、「売ってないから」という。確かに、ペットショップやホームセンター等で販売されているカブトムシは、大半が「普通のカブトムシ」だ。カブトムシは寿命が非常に短く「季節限定」であるため、「大きさ」よりも「健康で丈夫であること」を第一に大量に養殖されるのだろう。そのため、ペットショップやホームセンター等で販売されているカブトムシは、長い角のあるオスとないメスで価格の違いはあっても、「大きさ」によって価格の違いは無いようだ。
(3)そこで、「オオカブト」「ミニカブト」については、「幼虫のエサの質と量の調整で、オオカブトやミニカブトに育てることは可能。但し、栄養過剰や栄養失調といった少し不健康なカブトムシでよければ」と言うと「それでは困る」という。要するに「栄養過剰の肥満のオオカブト」や「栄養失調のミニカブト」はすぐ死んでしまいそうだから、自然界に極稀に現れる「オオカブト」や「ミニカブト」のように健康に育てたいというのだ。贅沢な話である。

(4)そもそも、自然界に極稀に現れる「カブトムシの大型化・小型化」の原因は、「幼虫の栄養過剰や栄養失調」が原因なのだろうか?それとも「幼虫の発育速度が遅いこと・速いこと」が原因なのだろうか?

①「大型化・小型化」⇒「幼虫の栄養過剰や栄養失調」が原因?

②「大型化・小型化」⇒「幼虫の発育速度が遅いこと・速いこと」が原因?

(5)なぜなら、飼育ケースの中とは違って、自然界にはカブトムシの幼虫のエサ(腐葉土など)は、クヌギやコナラなどの広葉樹が存在する場所であれば、どこにでも豊富に存在するからだ。都市部の公園でさえクヌギやコナラなどの広葉樹の落ち葉が集められた一角が必ず存在する。都市部の公園にカブトムシが少ないのは、「カブトムシの餌場の秘密①(整備された都市部の公園ほどカブトムシが居ない理由)」で述べたように、カブトムシの成虫のエサとなる樹液を出す広葉樹が少ないのが理由であって、カブトムシの幼虫のエサ(腐葉土など)は豊富に存在する。

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(今年の8月13日、晩夏に実家の庭先に現れた実測75ミリの茶カブト。実家の近所では例年に比べ「小さい方だ」という)

(6)「カブトムシの寿命が尽きる時期」で述べたように、日照時間の長さがピークを迎え、樹液の生成に必要な樹木の光合成が最も活発になるのは梅雨が明ける7月以降だ。そのため、 大半の普通のカブトムシは仲夏(7月上旬頃)に羽化する。

一方、【お盆休み番外編①】で「小さなカブトムシほど初夏に出現し、大きなカブトムシほど晩夏に出現する傾向がある」と述べた。

①「初夏(6月上旬頃)の小型化」⇒極少ない小型のカブトムシ

②「仲夏(7月上旬頃)の標準」⇒大半の普通のカブトムシ

③「晩夏(8月上旬頃)の大型化」⇒極少ない大型のカブトムシ

(7)それでは、仲夏(7月上旬頃)に羽化する大半の普通のカブトムシを「標準のカブトムシ」とすると、初夏(6月上旬頃)に出現する極少ない小型のカブトムシは「幼虫の栄養失調(幼虫の発育不足)」が原因で「小型化」したのだろうか?また、晩夏(8月上旬頃)に出現する極少ない大型のカブトムシは「幼虫の栄養過剰(幼虫の発育過剰)」が原因で「大型化」したのだろうか?

①「初夏の小型化」⇒「幼虫の栄養失調(幼虫の発育不足)」が原因?

②「仲夏の標準」⇒「標準のカブトムシ」

③「晩夏の大型化」⇒「幼虫の栄養過剰(幼虫の発育過剰)」が原因?

(8)それとも、初夏(6月上旬頃)に出現する極少ない小型のカブトムシは「幼虫の発育速度が速いこと」が原因で「小型化」したのだろうか?また、晩夏(8月上旬頃)に出現する極少ない大型のカブトムシは「幼虫の発育速度が遅いこと」が原因で「大型化」したのだろうか?

①「初夏の小型化」⇒「幼虫の発育速度が速いこと」が原因?

②「仲夏の標準」⇒「標準のカブトムシ」

③「晩夏の大型化」⇒「幼虫の発育速度が遅いこと」が原因?

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(8月31日朝5時撮影。1匹目のオス、羽化55日目。相変わらずの大食漢。夜は食い散らかし、昼は猛暑を避けるため、朝からマットに身を隠してしまう)

1.カブトムシの「初夏(6月上旬頃)の小型化」の原因は、「幼虫の栄養失調(幼虫の発育不足)」が原因ではなく、「幼虫の発育速度が速いこと」が原因

(1)仮に、「初夏の小型化」の原因が、「貧しい栄養環境」や「卵の孵化時期の遅れ」に伴う「幼虫の栄養失調(幼虫の発育不足)」にあるならば、何故、わざわざ、標準のカブトムシより早い時期(初夏)に羽化するのだろうか?

(2)「発育不足」な幼虫ほど、まだ羽化の準備は整っていないのだから、その分の「発育不足」を補うために、幼虫の発育期間を長くとるだろう。わざわざ、樹液があまり出ていない梅雨の時期(初夏)に、標準のカブトムシより早く羽化する必要はない。

(3)従って、「初夏(6月上旬頃)の小型化」の原因は、「幼虫の栄養失調(幼虫の発育不足)」が原因ではなく、「幼虫の発育速度が速いこと」が原因と考えられる。

 2.カブトムシの「晩夏(8月上旬頃)の大型化」の原因は、「幼虫の栄養過剰(幼虫の発育過剰)」が原因ではなく、「幼虫の発育速度が遅いこと」が原因

(1)仮に、「晩夏の大型化」の原因が、「豊富な栄養環境」や「卵の孵化時期の早め」に伴う「幼虫の栄養過剰(幼虫の発育過剰)」にあるならば、何故、わざわざ、標準のカブトムシより遅い時期(晩夏)に羽化するのだろうか?

(2)「発育過剰」な幼虫ほど、既に羽化の準備は整っているのだから、その分早く成虫となってより多くの子孫を残すために、幼虫の発育期聞を短くとるだろう。わざわざ、樹液が枯れ始めるお盆の時期(晩夏)まで待って、標準のカブトムシより遅く羽化する必要はない。

(3)従って、「晩夏(8月上旬頃)の大型化」の原因は、「幼虫の栄養過剰(幼虫の発育過剰)」が原因ではなく、「幼虫の発育速度が遅いこと」が原因と考えられる。 f:id:chart15304560:20180831063121j:plain

(8月31日朝5時撮影。2匹目のオス、羽化50日目。こちらも明け方にはマットに身を隠すため、エサを食べているところを撮影するには早起きが必要)

3、健康な「オオカブト」「ミニカブト」に育てるには、単なる「幼虫のエサの質と量の調整」ではなく「幼虫の発育速度の調整」が必要

(1)このように、「カブトムシの初夏(6月上旬頃)の小型化」は「幼虫の発育速度が速いこと」が原因であり、「カブトムシの晩夏(8月上旬頃)の大型化」は「幼虫の発育速度が遅いこと」が原因である。

(2)したがって、これを飼育ケースで実現し、カブトムシの幼虫を健康な「オオカブト」「ミニカブト」に育てるには、単なる「幼虫のエサの質と量の調整」ではなく「幼虫の発育速度の調整」が必要になると考えられる。

それでは、カブトムシの幼虫が「発育速度」を変えて「大型化・小型化」する仕組みは何だろうか?

長くなるので、次回へ続く。