そろそろクリスマス、”冬のカブトムシ”も天国へ(10月中旬以降、ベランダから屋内へ引っ越した2匹目オス(茶)の寿命がとうとう尽きた(12/5)。最期は体中がバナナまみれであったが、羽化後約5カ月の大往生であった。天国へ向かう2匹目オス(茶)「シュワッチュ♪♪1匹目オス、遅くなってごめん。バナナ食べながらベランダで”日向ぼっこ”してたら、少し寝過ごした。もう秋だよね??」天国の1匹目オス(赤)「あれから二ヶ月経ちました。ずっと待ってました。もう冬ですけど??」2匹目オス(茶)「そんなバナナ!!」)
1.そろそろクリスマス、”冬のカブトムシ”も天国へ
(2匹目オス(茶):約70mm、蛹化6/27、羽化7/11、後食7/18、死亡12/5)
10月中旬以降ベランダから屋内へ引っ越した2匹目オス(茶)の寿命がとうとう尽きた(12/5)。最期は体中がバナナまみれであったが、羽化後約5カ月(147日)の大往生であった。振り返れば、一匹のカブトムシのために飼育ケースの掃除や餌交換を147回もしたことになる。「そんなこと、もう一度やれるか?」と問われれば、こう答えるであろう。「喜んで」と。
(12/5朝、2匹目オス(茶)から全ての生命反応が消えた。とても健やかな表情で天国へ旅立った)
11/24ブログ「カブトムシと地球温暖化⑤」で次のように述べた。
『もしかしたら、2匹目オス(茶)は、高温障害で先立った3匹目オス(黒)を思って、飼い主が「カブトムシと地球温暖化」を書き終えるのを見届けようとしているのかもしれない』。
そんなことを思いながら、12/3ブログ「カブトムシと地球温暖化⑥」で「夏の昆虫たちの最後の砦」の記事を書いた。その2日後、2匹目オス(茶)から全ての生命反応が消えた。とても健やかな表情で天国へ旅立った。
(1)2匹目オス(茶)蛹化6/27
(蛹化前日6/26 朝6時12分撮影) ⇩
(蛹化当日6/27 朝5時28分撮影)
(2)2匹目オス(茶)羽化7/11
(羽化前日7/10 朝6時13分撮影) ⇩
(羽化直後7/11 朝6時40分撮影) ⇩
(羽化当日7/11 昼12時57分撮影)
2.2匹目オス(茶)が天国へ旅立つ前日(12/4)
(1)”冬(12月)の季節はずれの夏日”(最高気温≧25℃)
2匹目オス(茶)が天国へ旅立つ前日(12/4)、全国各地で”冬(12月)の季節はずれの夏日”(最高気温≧25℃)が観測された。
暑すぎる12月の夏日、気象庁「暖冬傾向続く」 : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
『全国各地は4日、季節はずれの暖かさとなった。43都道府県337地点で12月の過去最高気温を更新し、東京や福岡、徳島など66地点で25度以上の夏日になった』
(2)また都内でセミが羽化
11/18ブログ「カブトムシと地球温暖化④」で「セミ、立冬(11月7日)に現れる」というニュースを取り上げたが、また都内で11/28にセミが現れたようだ。
冬の異変、都内でセミが羽化 公園職員もびっくり:朝日新聞デジタル
『東京都調布市の神代植物公園では、職員が園内でセミを見つけてツイッターに写真を投稿。「こんな時期に地上に出てくるなんて!来年まで待てなかったのでしょうか?」と伝えた。園内では春に開花するツツジやシャクナゲの花が何輪か開きだした。秋の終わりとともに花が散るバラは、いまだに花びらをつけているという。「暖冬の影響かわからないが、普通じゃない」と担当者も驚く』
(3)”冬のカブトムシ”もベランダで”季節外れの日向ぼっこ”
このように、この日は全国各地で12月の過去最高気温を更新し、”冬(12月)の季節はずれの夏日”(最高気温≧25℃)を観測した地域も多かった。東京(北緯35度41.5分)の最高気温(23.4℃ )は夏日(最高気温≧25℃)に届かなかったが、先月(11月)の最高気温(22.8℃)を超えた。
室内よりベランダの方が気温が高くなったので、”冬のカブトムシ”もベランダで”季節外れの日向ぼっこ”であった。前回、ベランダで”日向ぼっこ”をしたのは11月11日(最高気温20.1℃)であったので、約3週間ぶりの”日向ぼっこ”であった。
(死亡前日12/4 午前10時20分撮影) ⇩
(死亡前日12/4 午後14時40分撮影) ⇩
(死亡前日12/4 午後14時41分撮影) ⇩
(死亡前日12/4 午後14時48分撮影)
3.2匹目オス(茶)が天国へ旅立った日(12/5)
前回述べたように、2匹目オス(茶)は、12月に入ってから老衰が急速に進み「瀕死の状態」にあった。そして、12/5朝、2匹目オス(茶)から全ての生命反応が消えた。
(1)12月に入ってからの変化
①歩き回って仰向けに転がっていることが多い(原因不明)。
②エサを食べられなくなった可能性がある(消化系等の内臓の老化の可能性)。
③外見にも変化が見られる(固い外側の前翅が縮んでいる)。
(2)12/2時点の健康診断チェック
①夜間は、マットの上に出て活動していること(食事・排泄など)⇒△。
②木にしがみつく力が強いこと(体力)⇒×。
③日中は、マットの下に潜っていること(休息・太陽光や熱の遮断)⇒×。
(3)12/5朝、2匹目オス(茶)から全ての生命反応が消えた
前日までは、毎日のエサ交換の際に、バナナで塞がった鼻や口をウエットティッシュで拭いてやると、2匹目オス(茶)は、前足四本と触覚を動かして「まだ生きている」としっかり反応してくれた。また、エサ皿の上に置くと、大きな角をゆっくり上下に動かして「まだ食べられる」としっかり反応してくれた。
12/5朝、バナナで塞がった鼻や口をウエットティッシュで拭いてやると、2匹目オス(茶)は、いつものように、前足四本と触覚を動かして「まだ生きている」とわずかに反応してくれたが、エサ皿の上に置いても大きな角をゆっくり上下に動かすことは無かった。その2時間後、2匹目オス(茶)から全ての生命反応が消えた。 とても健やかな表情で天国へ旅立った。
(天国へ向かう2匹目オス(茶)「シュワッチュ♪♪」)
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(2匹目オス(茶)「1匹目オス、遅くなってごめん」)
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(2匹目オス(茶)「バナナ食べながらベランダで”日向ぼっこ”してたら、少し寝過ごした。もう秋だよね??」)
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(天国の1匹目オス(赤)「あれから二ヶ月経ちました。ずっと待ってました。もう冬ですけど??」)
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(2匹目オス(茶)「そんなバナナ!!」)
カブトムシと地球温暖化⑥「夏の昆虫たちの最後の砦(とりで)”雑木林の地温”の限界」(”初冬のカブトムシ”「温暖化が心配です。吐く息を止めなくても大丈夫ですか?」。飼い主「大丈夫です。念のため、専門家に聞いてみよう」。国立環境研究所「私たちが呼吸によって吐き出すCO2はもともと大気中に存在したものなのです。ですから、いくら呼吸をしても大気中のCO2を増やしも減らしもしません」。”初冬のカブトムシ”「安心しました。あとはあの記事を書いてくれたら、心置き無く天国へ行けます」。飼い主「??」)
(12/2撮影、今日(12/2)で羽化後144日目を迎えた2匹目オス(茶))
2匹目オス(茶)「温暖化が心配です。吐く息を止めなくても大丈夫ですか?」
飼い主「大丈夫です。念のため、専門家に聞いてみよう」
国立環境研究所「私たちが呼吸によって吐き出すCO2はもともと大気中に存在したものなのです。ですから、いくら呼吸をしても大気中のCO2を増やしも減らしもしません」
2匹目オス(茶)「安心しました。あとはあの記事を書いてくれたら、心置き無く天国へ行けます」
飼い主「??」
温暖化の科学 Q1 呼吸で大気中の二酸化炭素が増加する? - ココが知りたい地球温暖化 | 地球環境研究センター
(とうとう、”初冬(12月)のカブトムシ”となった2匹目オス(茶))
2匹目オス(茶)は、先月から老衰が急速に進んで瀕死の状態にある。それでも何とか生きようとしている理由はなんだろう?2匹目オス(茶)は何かを見届けようとしているようだ。「冬に地球温暖化の話」を書くのは気が重いが、話を先に進めよう。今回のテーマは「夏の昆虫たちの最後の砦(とりで)”雑木林の地温”の限界」である。地球温暖化に伴い、日本に生息するカブトムシが今世紀末までに絶滅するか否か、もしくは特定の地域で全滅するか否か、非常にシビアな気温境界線の話である。
優れた事業家や投資家ほど、自然界の変化に敏感である。彼らはカブトムシには興味は無いが、世界の食料の63%の野菜や果物に花粉を運ぶ昆虫(ハチ目、チョウ目)には興味を示す。11/5ブログ「カブトムシと地球温暖化③」で述べたように、カブトムシ等のコウチュウ目とハチ目・チョウ目の「高温障害温度域」の違いは、わずか1~2℃である。「地球温暖化に伴いカブトムシが、かつてのメダカのように絶滅危惧種に指定されたら、次は人類の食料生産を支えるハチやチョウの番である」という。
地球温暖化の原因は「CO2等の温室効果ガスの急増」であって「太陽光」ではない。「魚のための水つくり」「農作物のための土つくり」「昆虫のための土つくり」に太陽光は欠かせない。そのため、カブトムシやメダカの屋外飼育に”こだわり”を感じている人も多いであろう。屋外飼育は太陽光の恩恵を十分受けるので、カブトムシやメダカが健康で長生きできる微生物環境が整いやすい。そして、水や土の深さを調整することで夏の猛暑からメダカやカブトムシを守ることが出来る。今回のテーマはカブトムシの屋外飼育における土(マット)の「深さ」を算出する上で参考になるだろう。
11/18ブログ「カブトムシと地球温暖化④」で述べたように、「雑木林の外の気温」(気象庁発表の気温)が「猛暑によるカブトムシ3000匹衰弱死」の気温境界線(37.1℃)を超えると、「雑木林の林内気温」は「木陰効果(-2.1℃)」を考慮しても「昆虫の致死温度(35℃)」に到達すると推測される。
それでは、「雑木林の林内気温」が「昆虫の致死温度(35℃)」に突入すると、雑木林の昆虫は全て「死に至る」のだろうか?産卵した卵や孵化した幼虫も全て「死に至る」のだろうか?
(10月上旬の近所の公園。10/7は真夏日(最高32.3℃、最低23.9℃)。緑が濃い)
⇩
(10月下旬の近所の公園 10/31の気温(最高19.9℃、最低11.9℃)。やや紅葉)
⇩
(11月下旬の近所の公園 11/30の気温(最高16.0℃、最低8.1℃)。ほぼ紅葉)
1.「高温障害」を避けるための昆虫の移動
昆虫は「高温障害」を避けるため、「外気温」が「高温障害温度域」(一般に28℃~35℃)に到達すると涼しい場所を求めて移動する(負の趨温(すうおん)性)。雑木林の木陰に隠れたり、落ち葉の下に隠れたり、土壌の深層まで潜ることによって、「猛暑による高温」から身を守る。
したがって、「雑木林の林内気温」が「昆虫の致死温度(35℃)」に突入し、木陰に隠れた昆虫たちが「死に至った」としても、日中、落ち葉の下に隠れたり、土壌の深層まで潜ることが出来た昆虫たちは「死に至たらなかった」可能性がある。
9/7ブログ「カブトムシの大きさの秘密③」で考察したように、「地温」(土壌の温度)は地表に近いほど「気温」の影響を受け易く、深くなるほど影響を受けにくい。「気温」が上昇する夏の時期は、雑木林の「地温」は深くなるほど「林内気温」より低い。
そのため、例えばカブトムシのメスは「猛暑による高温」から卵を守るため、雑木林の中でも、柔らかい腐葉土や黒土が厚く積もっている場所を探し出し、土壌の深層まで潜って産卵する。このような場所では、カブトムシのオスのような大きな角を持った昆虫でもかなり深くまで潜ることが出来る。
(針葉樹も黄金色に染まる初冬(12月)。カブトムシの幼虫も地下深く潜る)
2.夏の雑木林の「林内気温と各深度の地温の差」
それでは、どの程度の深さまで土壌に潜れば、昆虫たちは「猛暑による高温」から身を守ることが出来るのであろうか?それを知るためには、夏の雑木林の「林内気温と各深度の地温の差」を知る必要がある。
9/7ブログ「カブトムシの大きさの秘密③」では、「カブトムシの幼虫の発育速度や成虫の大きさ」を決定づける「深度別地温」の考察を行った。その際に参考にした「国立科学博物館附属自然教育園」(東京都港区白金台五丁目)の参考資料1:「自然教育園内の深度別地温観測 (2010年~2016年)」には、自然教育園内の雑木林の「林内気温」と「各深度の地温」が7年分(2010年~2016年)記載されている。
この7年分(2010年~2016年)のデータの中から夏(6月~8月)のデータのみを抜粋し、6月・7月・8月の「林内気温」と「各深度の地温」を比較すると以下の通りである(ーはデータ欠損である。ブランクは未観測であると思われる)。
(晩秋から初冬にかけて咲き乱れるサザンカは、公園の中でも一際目立つ)
6月 林内気温 地温(5cm深 10cm深 30cm深 50cm深)
2010年 21.5℃ 19.8℃ 15.5℃
2011年 20.8℃ 19.6℃ 15.9℃
2012年 19.6℃ 18.5℃ 18.1℃ 16.7℃ 15.7℃
2013年 20.9℃ ー 19.0℃ ー 16.0℃
2014年 21.4℃ 19.7℃ 19.4℃ 18.4℃ 16.9℃
2015年 20.6℃ 18.9℃ 18.7℃ 17.5℃ 16.4℃
2016年 20.9℃ 19.4℃ 19.0℃ 18.1℃ 16.8℃
平 均 20.8℃ 19.3℃ 18.8℃ 17.7℃ 16.2℃
7月 林内気温 地温(5cm深 10cm深 30cm深 50cm深)
2010年 25.6℃ 24.1℃ 19.1℃
2011年 25.3℃ 23.5℃ 18.7℃
2012年 24.2℃ 22.8℃ 22.0℃ 19.7℃ 18.3℃
2013年 25.0℃ ー 22.6℃ 20.2℃ 18.7℃
2014年 24.5℃ 22.5℃ 22.0℃ 21.7℃ 19.0℃
2015年 24.6℃ 22.5℃ 22.0℃ 20.2℃ 18.8℃
2016年 24.0℃ 22.2℃ 21.7℃ 20.6℃ 19.0℃
平 均 24.7℃ 22.9℃ 22.1℃ 20.5℃ 18.8℃
8月 林内気温 地温(5cm深 10cm深 30cm深 50cm深)
2010年 27.4℃ 25.5℃ 20.8℃
2011年 25.6℃ 24.3℃ 20.2℃
2012年 26.7℃ 24.8℃ 24.0℃ 21.6℃ 20.2℃
2013年 26.6℃ ー 24.3℃ 22.1℃ 20.7℃
2014年 25.6℃ 23.8℃ 23.4℃ 23.3℃ 20.7℃
2015年 25.4℃ 23.7℃ 23.4℃ 22.1℃ 20.8℃
2016年 25.6℃ 24.1℃ 23.5℃ 22.7℃ 21.1℃
平 均 26.1℃ 24.4℃ 23.7℃ 22.4℃ 20.6℃
(親子連れが懐かしい歌を口ずさんでいる「さざんか さざんか 咲いたみち♪ たき火だ たき火だ 落ち葉たき♪」)
以上の6月・7月・8月の各7年平均(2010年~2016年の平均)から、6月・7月・8月の「林内気温と各深度の地温の差」を求めると以下の通りである。
林内気温差 地温(5cm深 10cm深 30cm深 50cm深)
6月 -1.5℃ -2.0℃ -3.1℃ -4.6℃
7月 -1.8℃ -2.7℃ -4.3℃ -5.9℃
8月 -1.8℃ -2.4℃ -3.8℃ -5.5℃
「林内気温と10cm深の地温の差」は-2.0℃~-2.4℃であり、これは「木陰効果(-2.1℃)」に匹敵する。また、「林内気温と50cm深の地温の差」は-4.6℃~-5.9℃であり、これは「地球温暖化に伴い今世紀末までに予想される年平均気温の上昇幅(全国平均4.5℃)」に匹敵する。このように、雑木林の地中の世界は、夏の昆虫たちにとって「猛暑による高温」から身を守るための「最後の砦(とりで)」と言える。
(ツバキは花弁が丸ごと落ちるが、サザンカは花びらが桜のように個々に散る)
3.「猛暑によるカブトムシ3000匹衰弱死」の気温境界線(37.1℃)における地温
それでは、今年7月に兵庫県市川町で発生した「猛暑によるカブトムシ3000匹衰弱死」の気温境界線(37.1℃)における「各深度の地温」を求めてみよう(「林内気温」は「気温」から「雑木林の木陰効果(-2.1℃)」を差し引いて捉え、「各深度の地温」は、「林内気温」から上記「林内気温と各深度の地温の差」を差し引いて捉えることになる)。
気温 林内気温 地温(5cm深 10cm深 30cm深 50cm深)
7月 37.1℃ ⇨ 35℃ ⇨ 33.2℃ 32.3℃ 30.7℃ 29.1℃
この「各深度の地温」を「昆虫の高温障害」の視点で考察すると以下の通りである。
(1)5cm深~10cm深の土壌に潜ることが出来た昆虫
5cm深の地温は33.2℃であり、10cm深の地温は32.3℃である。したがって、
①「死に至たらなかった」
5cm深~10cm深の地温は「昆虫の致死温度(35℃)」に到達しない。つまり、5cm深~10cm深の土壌に潜ることが出来た昆虫たちは「死に至たらなかった」と推測される。
②しかし、「生理的障害」や「産卵不能障害」が発生した
しかし、5cm深~10cm深の地温は「生理的障害温度域(28~32℃)」や「産卵不能障害温度域(32~35℃)」に到達する。つまり、5cm深~10cm深の土壌に潜ることが出来た昆虫たちには「生理的障害」(孵化率や羽化率の低下、成虫寿命の短縮、産卵数の減少等)や「産卵不能障害」が発生したと推測される。
(ツバキの花は立体的で厚みがあるが、サザンカの花は平面的で薄い)
(2)30cm深~50cm深の土壌に潜ることが出来た昆虫
30cm深の地温は30.7℃であり、50cm深の地温は29.1℃である。したがって、
①「死に至たらなかった」
30cm深~50cm深の地温は「昆虫の致死温度(35℃)」に到達しない。つまり、30cm深~50cm深の土壌に潜ることが出来た昆虫たちは「死に至たらなかった」と推測される。
②「子孫を残すことも出来た」
また、30cm深~50cm深の地温は「産卵不能障害温度域(32~35℃)」にも到達しない。つまり、30cm深~50cm深の土壌潜ることが出来た昆虫たちは「子孫を残すことも出来た」と推測される。
③しかし、「生理的障害」は発生した
しかし、30cm深~50cm深の地温は「生理的障害温度域(28~32℃)」に到達する。つまり、30cm深~50cm深の土壌に潜ることが出来た昆虫たちには、「生理的障害」(孵化率や羽化率の低下、成虫寿命の短縮、産卵数の減少等)が発生したと推測される。
(ピンクのサザンカの花言葉は寒さに負けずひたむきに咲く姿から「永遠の愛」)
4.地温を推測する上で一年の最高気温(38.8℃)を基準にしてはいけない理由
11/18ブログ「カブトムシと地球温暖化④」で述べたように、今年7月に兵庫県市川町で発生した「猛暑によるカブトムシ3000匹衰弱死」の原因は「7月14日以降の14日連続猛暑」であり、その間に今年の最高気温38.8℃(福崎、7月24日)を記録している。しかし、地温を推測する上で一年の最高気温(38.8℃)を基準に算出してはいけない。
(1)一日の最高気温(38.8℃)は「一瞬の出来事」(10分以内)
通常、一日の最高気温は一瞬の出来事である。気象庁の10分ごとの記録によると、7月24日に福崎で記録した38℃台の気温が継続した時間は10分にすぎない。したがって、この日記録した今年の最高気温(38.8℃)も一瞬の出来事(10分以内)であったと推測される。
(2)一年の最高気温(38.8℃)は「猛暑の高温域の端」(最高気温の最大値)
「一年の最高気温」はその年に発生した「一日の最高気温」の最大値であり、その年に発生した「猛暑の高温域の端」(38.8℃)に過ぎない。しかし、自然界に影響を及ぼす温度は「一日の最高気温」の平均値であり、その年に発生した「猛暑の高温域の中心」(37.1℃)である。
(左は、サザンカ立寒椿「勘次郎」。右は、背の高いスギ科のメタセコイア)
(3)雑木林の土壌は「温まりにくく、冷めにくい」
猛暑にさらされたアスファルト道路の温度は急速に上昇する。しかし、「水分」を多く含む雑木林の土壌の温度は急速に上昇しない。11/24ブログ「カブトムシと地球温暖化⑤」で述べたように「水」は比熱が大きく「温まりにくく、冷めにくい」性質がある。
また、参考資料1:「自然教育園内の深度別地温観測(2010年~2016年)」によれば、『下層ほど,有機物含量が減り,より固相が無機質になるとともに緻密化し固相率も高くなることで,土壌が温まり難く,且つ,冷えにくくなる要因にもなっていると考えられる』という。
(4)雑木林の土壌は「夜間冷める前に翌日の日中に更に温められる」ことにより地温が上昇する
11/18ブログ「カブトムシと地球温暖化④」で述べた通り、「猛暑によるカブトムシ3000匹衰弱死」の原因は、「猛暑の高温域の中心」(一日の最高気温の平均値)が35℃台から37℃台にシフトしたことにより「平年に比べ1日の平均気温が4.3℃高い気温帯」が発生し(日中の気温は30.2℃~37.1℃、夜間の気温は24.9℃~30.2℃)、翌日以降も「37℃以上の気温」が連日発生しやすい状況が生まれた為だと推測される(14日連続猛暑)。同様に、雑木林の土壌も「夜間冷める前に翌日の日中に更に温められる」ことにより地温が上昇すると推測される。
このように「温まりにくく、冷めにくい」土壌の温度(地温)を推測する際には、一瞬の出来事(10分以内)である「猛暑の高温域の端」(一日の最高気温の最大値38.8℃)ではなく、一定期間繰り返される「猛暑の高温域の中心」(一日の最高気温の平均値37.1℃)を基準に推測する必要がある。
(赤いサザンカの花言葉は、控えめでどこか寂しげな花姿にちなんで「謙譲」)
5.昆虫が土壌に潜ることが出来る深さの限界
(1)雑木林の土壌は「下層ほど土壌硬度が増大する」(5~10cm深は柔らかい黒土層、30~50cm深は固い赤土層)
参考資料1:「自然教育園内の深度別地温観測 (2010年~2016年)」によれば、『5および10cm深は有機物を多く含む黒土』であり『30および50cm深は有機物が少なく気相率の小さい赤土層』である。『園内での研究結果から,土壌は下層ほど気相率が減少し,固相はより緻密化し,土壌硬度も増大することが明らかにされている』という。
(2)昆虫が土壌に潜ることが出来る深さの限界
①カブトムシの成虫の場合
このように雑木林の土壌は「下層ほど土壌硬度が増大する」ため、昆虫が土壌に潜ることが出来る深さには限界がある。アリは集団でトンネルを作りながら地下に潜るため、地下1m~5mの固い赤土層に巣穴を作ることが出来る。しかし、カブトムシは単体で土壌を掻き分けながら地下に潜るため、5cm深~10cm深の柔らかい黒土層を掘り進むことは可能であるが、30cm深~50cm深の固い赤土層を掘り進むことは困難を伴う。特に、カブトムシのオスのような大きな角を持った昆虫にとっては、至難の業である。
②カブトムシの幼虫の場合
一方、10/16ブログ「カブトムシの幼虫の季節的垂直移動」で述べたように、10月下旬頃からカブトムシの三齢幼虫は越冬のため土壌深く潜る(コガネムシの三齢幼虫でさえ30cm深~40cm深の固い赤土層を掘り進む)。真冬の地温は深層でも最低発育限界温度10℃を下回るため、カブトムシやコガネムシの三齢幼虫は越冬中はエサをほとんど食べない。そのため、越冬中の三齢幼虫にとって「エサとなる有機物が少ない環境」(30cm深~50cm深)であっても問題はない。しかし、夏の孵化したばかりのカブトムシの一齢幼虫や二齢幼虫にとって「エサとなる有機物が少ない環境」(30cm深~50cm深)での生活は生死に関わる。
したがって、カブトムシの成虫や幼虫が土壌に潜ることが出来る深さの限界は、「有機物が少なく固い赤土層が存在する」30cm深~50cm深であると推測される。
(白いサザンカ「富士の峰」。サザンカが散ると次はツバキの開花シーズン)
6.「各深度の地温」が「昆虫の致死温度(35℃)」に到達する気温境界線
それでは、「各深度の地温」が「昆虫の致死温度(35℃)」に到達する気温境界線は何度であろうか?また、「産卵不能障害温度域(32~35℃)」に到達する気温境界線は何度であろうか?
「各深度の地温」が「昆虫の致死温度(35℃)」に到達する気温境界線は、以下の通りである。また()内は「各深度の地温」が「産卵不能障害温度域(32~35℃)」に到達する気温境界線である(「林内気温」は「各深度の地温」に上記「各深度の地温と林内気温の差」を足して捉え、「気温境界線」は、「林内気温」に「雑木林の木陰効果(-2.1℃)」を足して捉えることになる)。
(1)「5cm深の地温」が「昆虫の致死温度(35℃)」に到達する気温境界線
気温境界線 林内気温 地温(5cm深)
6月 38.6℃(35.6℃) ⇨ 36.5℃(33.5℃) ⇨ 35℃(32℃)
7月 38.9℃(35.9℃) ⇨ 36.8℃(33.8℃) ⇨ 35℃(32℃)
8月 38.9℃(35.9℃) ⇨ 36.8℃(33.8℃) ⇨ 35℃(32℃)
(2)「10cm深の地温」が「昆虫の致死温度(35℃)」に到達する気温境界線
気温境界線 林内気温 地温(10cm深)
6月 39.0℃(36.0℃) ⇨ 37.0℃(34.0℃) ⇨ 35℃(32℃)
7月 39.8℃(36.8℃) ⇨ 37.7℃(34.7℃) ⇨ 35℃(32℃)
8月 39.5℃(36.5℃) ⇨ 37.4℃(34.4℃) ⇨ 35℃(32℃)
(3)「30cm深の地温」が「昆虫の致死温度(35℃)」に到達する気温境界線
気温境界線 林内気温 地温(30cm深)
6月 40.2℃(37.2℃) ⇨ 38.1℃(35.1℃) ⇨ 35℃(32℃)
7月 41.4℃(38.4℃) ⇨ 39.3℃(36.3℃) ⇨ 35℃(32℃)
8月 41.9℃(38.9℃) ⇨ 38.8℃(35.8℃) ⇨ 35℃(32℃)
(4)「50cm深の地温」が「昆虫の致死温度(35℃)」に到達する気温境界線
気温境界線 林内気温 地温(50cm深)
6月 41.7℃(38.7℃) ⇨ 39.6℃(36.6℃) ⇨ 35℃(32℃)
7月 43.0℃(40.0℃) ⇨ 40.9℃(37.9℃) ⇨ 35℃(32℃)
8月 42.6℃(39.6℃) ⇨ 40.5℃(37.5℃) ⇨ 35℃(32℃)
(白いサザンカの花言葉は、冬の風に吹かれても愛らしく咲く姿から「愛嬌」)
7.夏の昆虫たちの最後の砦「雑木林の地温」の限界
このように、カブトムシの成虫や幼虫が土壌に潜ることが出来る深さの限界が「有機物が少なく固い赤土層が存在する」30cm深~50cm深であるとすると、「30cm深~50cm深の地温」が「昆虫の致死温度(35℃)」又は「産卵不能障害温度域(32~35℃)」に到達する「気温境界線」が「カブトムシの成虫や幼虫が子孫を残せず全滅する気温境界線」となる。
例えば、7月の「30cm深~50cm深」の地中の世界を「昆虫の高温障害」の視点で考察すると以下の通りである。
(1)30cm深の土壌に潜ることが出来た昆虫たち
①「猛暑の高温域の中心」が38.4℃にシフトすると「産卵不能障害」が発生する
「30cm深の地温」が「産卵不能障害温度域(32~35℃)」に到達する気温境界線は38.4℃である。つまり、一日の最高気温が38.4℃以上の猛暑が数日続き、「猛暑の高温域の中心」(一日の最高気温の平均値)が38.4℃にシフトすると、「30cm深の地温」が「産卵不能障害温度域(32~35℃)」に到達する。したがって、30cm深の土壌に潜ることが出来た昆虫たちも「産卵不能障害」が発生すると推測される。
②「猛暑の高温域の中心」が41.4℃にシフトすると「死に至る」
「30cm深の地温」が「昆虫の致死温度(35℃)」に到達する気温境界線は41.4℃である。つまり、一日の最高気温が41.4℃以上の猛暑が数日続き、「猛暑の高温域の中心」(一日の最高気温の平均値)が41.4℃にシフトすると、「30cm深の地温」が「昆虫の致死温度(35℃)」に到達する。したがって、30cm深の土壌に潜ることが出来た昆虫たちも「死に至る」と推測される。
(2)50cm深の土壌に潜ることが出来た昆虫たち
①「猛暑の高温域の中心」が40.0℃にシフトすると「産卵不能障害」が発生する
「50cm深の地温」が「産卵不能障害温度域(32~35℃)」に到達する気温境界線は40.0℃である。つまり、一日の最高気温が40.0℃以上の猛暑が数日続き、「猛暑の高温域の中心」(一日の最高気温の平均値)が40.0℃にシフトすると、「50cm深の地温」が「産卵不能障害温度域(32~35℃)」に到達する。したがって、50cm深の土壌に潜ることが出来た昆虫たちも「産卵不能障害」が発生すると推測される。
②「猛暑の高温域の中心」が43.0℃にシフトすると「死に至る」
「50cm深の地温」が「昆虫の致死温度(35℃)」に到達する気温境界線は43.0℃である。つまり、一日の最高気温が43.0℃以上の猛暑が数日続き、「猛暑の高温域の中心」(一日の最高気温の平均値)が43.0℃にシフトすると、「50cm深の地温」が「昆虫の致死温度(35℃)」に到達する。したがって、50cm深の土壌に潜ることが出来た昆虫たちも「死に至る」と推測される。
(机の上は冷たいので飼育ケースの下に使用済みの「猫の爪とぎ」を敷いている)
8.”冬の(12月)のカブトムシ”の様子(瀕死の状態)
2匹目オス(茶)は、バナナを毎日食べて、今日(12/2)で羽化後144日目を迎えた。1匹目オス(赤)より49日寿命を延ばしている。とうとう、2匹目オス(茶)は、”初冬(12月)のカブトムシ”になってしまった。しかし、以下の通り、老衰が急速に進んでいるようだ。
(1)歩き回って仰向けに転がっていることが多い
この週末(12月1日・2日)、飼育ケースの中を歩き回って仰向けに転がっていることが多かった。11月14日に左後ろ足の鍵爪が取れて以来、後ろ足2本が動かないことが原因だが、突然飼育ケースの中を歩き回るようになった原因は不明だ。
(2)エサを食べられなくなった可能性がある
この週末、じっくり観察したが、エサを食べている時間が少ない。もしかしたら、消化系等の内臓の老化が進んでエサを食べられなくなった可能性がある。
(3)外見にも変化が見られる
外見にも変化が見られる。固い外側の前翅が縮んでいるようだ。
(12/2撮影、12月に入ってからエサを食べている時間が少なくなった)
このように2匹目オス(茶)の体は急速に衰えている。12月に入ったので、天国の1匹目オス(赤)がクリスマスを一緒に過ごそうと、迎えに来ているのかもしれない。
①夜間は、マットの上に出て活動していること(食事・排泄など)⇒△。
②木にしがみつく力が強いこと(体力)⇒×。
③日中は、マットの下に潜っていること(休息・太陽光や熱の遮断)⇒×。
(12/2撮影、横から見ると、固い外側の前翅が縮んでいるように見える)
(12/2撮影、後ろから見ても、前翅が縮んでいるように見える)
参考資料1:「自然教育園内の深度別地温観測 (2010年~2016年)」
研究と標本・資料 ≫ 学術出版物 :: 国立科学博物館 National Museum of Nature and Science,Tok
カブトムシと地球温暖化⑤「気象庁”歴代全国ランキング”(年間最高気温)に南西諸島に位置する那覇や屋久島が挙がらない理由」(那覇や屋久島は、東京・名古屋・大阪・福岡に比べ、緯度が低いため「平均気温」は高いが、海に囲まれているため「気温変動幅」(最低気温~最高気温)は小さくなる。那覇や屋久島では観測開始以来「36℃以上の気温」は観測されていない。そのため”那覇や屋久島の昆虫たち”は「猛暑によるカブトムシ3000匹衰弱死」の気温境界線(37.1℃)を経験したことが無い)
(近所の公園。サザンカの名所だが、11月は雨上がりの紅葉と落葉が目を引く)
1.札幌初雪、1877年(明治10年)の観測開始以来、最も遅い記録に並ぶ
今週(11月20日)、ようやく札幌で初雪が観測されたという。「1890年(明治23年)の記録と並ぶ最も遅い初雪」だという。青森の平年(1981年~2010年の30年間の平均)の初雪は11月6日である。したがって「今年の札幌の初雪」は「平年の青森の初雪」より14日も遅いことになる。
札幌で最も遅い初雪観測 1890年と同日(北海道新聞) - Yahoo!ニュース
『道内は上空に寒気が入った影響で19日、帯広市で初雪を観測した。札幌市でも20日午前0時50分ごろ観測し1877年(明治10年)の観測開始以来、最も遅い記録に並んだ』『札幌管区気象台などによると、帯広の初雪は平年より12日、昨年より27日遅く、観測史上5番目に遅かった』『札幌は、平年より22日、昨年より27日遅かった。札幌でこれまで初雪が最も遅かったのは1890年(明治23年)の11月20日』
(ズーム機能は使わずに被写体に近寄って撮影。雨に濡れた紅葉は美しい)
2.那覇や屋久島では観測開始以来「36℃以上の気温」は観測されていない
前回「カブトムシと地球温暖化④」で考察したように、今年の夏、兵庫県市川町で発生した「猛暑によるカブトムシ3000匹衰弱死」の気温境界線は37.1℃であると推測される。「雑木林の木陰効果(-2.1℃)」を考慮すると「雑木林の林内気温」が「昆虫の致死温度(35℃)」を超えるのは 「雑木林の外の気温」(気象庁発表の気温)が37.1℃を超える時だからである。
それでは、南西諸島に位置する沖縄県那覇や鹿児島県屋久島では、これまで「猛暑によるカブトムシ3000匹衰弱死」の気温境界線(37.1℃)を超えたことは無いのだろうか?
(同じ木の下。雨に濡れた紅葉は、視点を変えると違った色合いを放つ)
(1)気象庁「歴代全国ランキング」(年間最高気温)
以下は気象庁の「歴代全国ランキング」(年間最高気温)ある。ランキングに挙がっているのは全て「温帯地域」の地名である。「亜熱帯地域」の沖縄県那覇や「温帯最下部」の鹿児島県屋久島はランキングに挙がっていない。
1位:埼玉県 熊谷 41.1℃ 2018年7月23日
2位:岐阜県 美濃 41.0℃ 2018年8月 8日
2位:岐阜県 金山 41.0℃ 2018年8月 6日
2位:高知県 江川崎 41.0℃ 2013年8月12日
5位:岐阜県 多治見 40.9℃ 2007年8月16日
6位:新潟県 中条 40.8℃ 2018年8月23日
6位:東京都 青梅 40.8℃ 2018年7月23日
6位:山形県 山形 40.8℃ 1933年7月25日
9位:山梨県 甲府 40.7℃ 2013年8月10日
10位:和歌山県 かつらぎ 40.6℃ 1994年8月 8日
10位:静岡県 天竜 40.6℃ 1994年8月 4日
12位:山梨県 勝沼 40.5℃ 2013年8月10日
13位:新潟県 三条 40.4℃ 2018年8月23日
13位:埼玉県 越谷 40.4℃ 2007年8月16日
15位:愛知県 名古屋 40.3℃ 2018年8月 3日
15位:群馬県 館林 40.3℃ 2007年8月16日
15位:群馬県 上里見 40.3℃ 1998年7月 4日
15位:愛知県 愛西 40.3℃ 1994年8月 5日
19位:千葉県 牛久 40.2℃ 2004年7月20日
19位:静岡県 佐久間 40.2℃ 2001年7月24日
19位:愛媛県 宇和島 40.2℃ 1927年7月22日
(紅葉は、人の目を引き、落葉は、木の存在感を露わにする)
それでは、南西諸島に位置する那覇や屋久島の「観測史上最高気温」は何度であろうか?「温帯地域」の東京・名古屋・大阪・福岡の「観測史上最高気温」と比べてみよう。
観測史上最高気温
那 覇(北緯26度12.4分) 35.6℃(2001年)
屋久島(北緯30度23.1分) 35.4℃(2006年、2016年)
東 京(北緯35度41.5分) 39.5℃(2004年7月20日)
名古屋(北緯35度10.0分) 40.3℃(2018年8月03日)
大 阪(北緯34度40.9分) 39.1℃(1994年8月08日)
福 岡(北緯33度34.9分) 38.3℃(2018年7月20日)
以上の気象記録から以下の事がわかる。
①那覇や屋久島では観測開始以来「36℃以上の気温」は観測されていない。したがって、「那覇や屋久島の昆虫たち」は「猛暑によるカブトムシ3000匹衰弱死」の気温境界線(37.1℃)を観測開始以来、経験したことが無いことになる。
②那覇や屋久島の「観測史上最高気温」は、東京・名古屋・大阪・福岡の「観測史上最高気温」と比べ、明らかに低い。例えば、那覇は名古屋と比べ4.7℃低く(40.3℃-35.6℃)、屋久島は名古屋と比べ4.9℃低い(40.3℃-35.4℃)。
(この公園にも毎日沢山の人々が訪れる。無人の風景を切り取るのは運次第)
次に、南西諸島に位置する那覇や屋久島の「今年の最高気温」は何度であろうか?「温帯地域」の東京・名古屋・大阪・福岡の「今年の最高気温」と比べてみよう。
今年の最高気温 猛暑日の発生日数
那 覇(北緯26度12.4分) 33.1℃(2018年7月24日) 0日
屋久島(北緯30度23.1分) 33.1℃(2018年9月04日) 0日
東 京(北緯35度41.5分) 39.0℃(2018年7月23日) 12日
名古屋(北緯35度10.0分) 40.3℃(2018年8月03日) 36日
大 阪(北緯34度40.9分) 38.0℃(2018年7月19日) 27日
福 岡(北緯33度34.9分) 38.3℃(2018年7月20日) 16日
以上の気象記録から以下の事がわかる。
①今年、那覇や屋久島では「34℃以上の気温」は観測されていない。今年、東京・名古屋・大阪・福岡では、猛暑日(最高気温≧35℃)が12日~36日も観測されたが、那覇や屋久島では、猛暑日(最高気温≧35℃)は全く観測されていない。
②那覇や屋久島の「今年の最高気温」は、東京・名古屋・大阪・福岡の「今年の最高気温」と比べ、明らかに低い。例えば、那覇・屋久島共に名古屋と比べ7.2℃も低い(40.3℃-33.1℃)。
(公園中央は特に人が多い。この日は雨上がりで運が良かったようだ)
3.気象庁「歴代全国ランキング」(年間最高気温)に南西諸島に位置する那覇や屋久島が挙がらない理由
それでは、気象庁の「歴代全国ランキング」(年間最高気温)に南西諸島に位置する那覇や屋久島が挙がらない理由は何であろう?今年の夏は、世界各地で猛暑が広がり、東京・名古屋・大阪・福岡では、猛暑日(最高気温≧35℃)が12日~36日も観測されたが、那覇や屋久島では、猛暑日(最高気温≧35℃)は全く観測されていない。その理由は何であろう?
(1)「平均気温」は緯度が低いほど高く、「気温変動幅」(最低気温~最高気温)は海に近いほど小さい
Wikipedia(フリー百科事典)の『気候因子』によると『気温は主に緯度や標高の影響を受ける。ただし、これは平均気温についてであり、気温の変動幅(年較差など)については主に緯度のほか地形や隔海度などの影響を受ける』『緯度が低いほど、また標高が低いほど平均気温は高い。緯度が高いほど、また隔海度が大きい(より内陸にある)ほど年較差は大きく、逆に隔海度が小さい(より海に近い)ほど年較差は小さい』という。
つまり、「平均気温」は緯度が低いほど高く「気温変動幅」(最低気温~最高気温)は海に近いほど(隔海度が小さいほど)小さい。したがって、那覇や屋久島は、東京・名古屋・大阪・福岡に比べ、緯度が低いため「平均気温」は高いが、海に囲まれているため(隔海度が小さいため)「気温変動幅」(最低気温~最高気温)は小さくなると推測される。
(紅葉は、人の目を引き、小さな鳩の群れは、木の大きさを露わにする)
(2)海は陸より「比熱」が大きく、「気温」の影響を受けにくい
それでは、なぜ「気温変動幅」(最低気温~最高気温)は、海に近いほど(隔海度が小さいほど)小さいのだろうか?
地球の表面を構成する海や陸は、太陽からの放射熱や温室効果ガス(二酸化炭素や水蒸気)からの反射熱を受けて温められる。「比熱の小さい土壌」からなる陸は、温度が上昇しやすく、「比熱の大きい海水」からなる海は温度が上昇ししにくい。
したがって、「気温変動幅」(最低気温~最高気温)は内陸にあるほど(隔海度が大きいほど)大きく、海に近いほど(隔海度が小さいほど)小さくなると推測される。
(左手の低木は梅、右手の高木はクヌギ・コナラ。どんぐりはもう落ちてない)
4.”晩秋(11月)のカブトムシ”の様子
「いろいろなエサを試したが、カブトムシを長生きさせるにはバナナが一番良かった」。9/18ブログ【敬老の日番外編①】で書いた青年の助言通り、2匹目オス(茶)は、バナナを毎日食べて、今日(11/23)で羽化後135日目を迎えた。1匹目オス(赤)より40日寿命を延ばしている。青年が実家から引き取った大きなカブトムシ(たぶん80mm超)は一昨年の11/19まで生きていた。その日よりも4日長く生きている。
(日中は、飼育ケースの通気性確保のため、段ボールから出して窓際に置く)
しかし、いつ寿命が尽きてもおかしくない状況は変わらない。11月14日に左後ろ足の鍵爪が取れて以来、後ろ足2本が動かない。「木にしがみつく力(体力)」は前足4本しかない。
①夜間は、マットの上に出て活動していること(食事・排泄など)⇒〇。
②木にしがみつく力が強いこと(体力)⇒×。
③日中は、マットの下に潜っていること(休息・太陽光や熱の遮断)⇒×。
札幌で初雪が観測された翌日(11月21日)、東京も最低気温が5.8℃まで下がった。2匹目オス(茶)は、飼育ケースの端に仰向けに転がっていた。死んでしまったかと思ったが、まだ頑張って生きている。
(1)バリアフリー対策
(11/21撮影、体力の無いカブトムシには、段差を少なくする)
2匹目オス(茶)が仰向けに転がっていた原因は「前足4本だけではバランスを崩して転倒しやすいため」と思われる。そこで、飼育ケース内の段差を出来るだけ無くした。いわゆるバリアフリー対策である。
(2)流動食対策(バナナ編)
(11/20撮影、体力の無いカブトムシには、液状化したバナナを与える)
①バナナの液状化
カブトムシは、エサを噛むのではなく吸うことによって栄養を体内に吸収する。そのため体力の無いカブトムシには液状化したバナナを与える。いわゆる流動食対策である。
しかし、液状化したバナナは12時間ほど経つと茶色く変色し、表面が固まってしまう。一度冷蔵庫に入れたバナナは常温に戻してから与えるので尚更である。特に高糖度のエクアドル産バナナは普通のフィリピン産バナナより水分が少なく、固まりやすい。
②表面が固まったバナナの除去
バナナの表面が固まると、体力の無いカブトムシは、バナナの水分を吸うことが出来ない。口や鼻がバナナで塞がってしまうこともある。そこで、液状化したバナナの表面が茶色く変色していたら、変色した部分だけをスプーンで除去するようにしている。
(3)流動食対策(昆虫ゼリー編)
(11/22撮影、バナナと昆虫ゼリー「サムライフラット」のハーフ&ハーフ)
①バナナと昆虫ゼリーのハーフ&ハーフ
エサ皿にはバナナと昆虫ゼリーのハーフ&ハーフをセットしてきたが、これまで2匹目オス(茶)は昆虫ゼリーには見向きもしなかった。しかし、最近昆虫ゼリーも食べるようになった。バナナの表面が固まりバナナの水分を吸うことが出来なくなると、仕方なく昆虫ゼリーの水分を吸っているようだ。
(「猫草の種」と一緒に通販で購入した「2種類の昆虫ゼリー」)
②最後に別の味を食べさせようと昆虫ゼリーの種類を増やす(「樹液の森」)
先月購入した50個入り昆虫ゼリー「サムライフラット」も毎日無駄に消費していたら、とうとう無くなってしまった。2匹目オス(茶)の寿命が迫っているので、最後に別の味の昆虫ゼリーを食べさせようと思った。
従来の「サムライフラット」(ワイド25個入り¥193)と併せて「樹液の森」(ワイド20個入り¥213)という商品を通販で買ってみた。「樹液の森」は「サムライフラット」に比べ水分が少ない。スプーンで砕くと、2匹目オス(茶)はなんとか食べてくれた。あと何日生きていられるだろうか?
(11/23撮影、バナナと昆虫ゼリー「樹液の森」のハーフ&ハーフ)
(4)温度管理
11月15日以降、東京の最低気温は10℃を下回り、最高気温も20℃を超えることはなくなった。”秋のカブトムシ”をベランダに出して日向ぼっこさせることは、もう出来ないだろう。室内は猫達のために常時18~22℃を維持している。22℃以上にすると、猫たちは春が来たと思ってベランダで虫探しを始める(外は寒いので30秒以内に部屋に戻ってくる)。
”秋のカブトムシ”も室内温度を22℃以上にすると活性化する。後ろ足2本が動かないのに翼を広げ飛ぼうとする(そのため体力消耗が著しい)。20℃前後だと大人しくバナナを食べている(又は、バナナに顔を突っ込んで寝ている)。
先週、段ボールと飼育ケースの隙間に入れた空間充填材は断熱効果が非常に高い。夜間の室内の温度変化にはこれで十分だと思う(朝方の冷え込み対策用の”湯たんぽ”は不要になった)。
8/21ブログ「カブトムシの寿命が尽きる時期」で述べたように、今年飼育した4匹のカブトムシの中で一番大きかった3匹目オス(黒)は日中ベランダでエサを食べている最中に高温障害で死亡した(8/19)。羽化後37日目の短命だった。もしかしたら、2匹目オス(茶)は、高温障害で先立った3匹目オス(黒)を思って、飼い主が「カブトムシと地球温暖化」を書き終えるのを見届けようとしているのかもしれない。
カブトムシと地球温暖化④「”猛暑によるカブトムシ3000匹衰弱死”が教える”木陰効果”の限界」(これまで「夏の昆虫」たちは、雑木林の木陰によって「猛暑による高温」から守られてきた(木陰効果-2.1℃)。そのため、例年は35℃を超える猛暑日であっても、林内気温が「昆虫の致死温度(35℃)」を超えることはほとんど無かった。今年7月、世界各地で記録的な猛暑が広がった。「猛暑の高温域の中心(例年35℃台)」が初めて37℃台にシフトし、雑木林の”木陰効果”は徐々に効力を失った)
(11/7撮影:立冬の東京の最高気温は20.0℃。カブトムシもベランダで日光浴)
1.”夏の虫たち”を代表するセミ、立冬(11月7日)に現れる
wikipedia(フリー百科事典)によると、「立冬」(11月7日)とは「秋が極まり冬の気配が立ち始める日」である。東京(北緯35度41.5分)の「平年気温(1981~2010 年の30年間の平均値)」では、「立冬」(11月7日)の翌日から「一日の最低気温」が10℃を下回る。朝方の気温が、昆虫の「最低発育限界温度」(一般に10℃)を下回るので、平年であればカブトムシの幼虫は地中深くに潜り、”秋の虫たち”も地上から姿を消す頃である。
しかし、今年は”夏の虫たち”を代表するセミが、立冬(11月7日)に現れたようだ。東京都心では11月5日から平年に比べ、1日の最高気温が2℃高い日が続き、新宿中央公園では立冬(11月7日)なのにセミの鳴き声が聞かれたという。wikipedia(フリー百科事典)によると、「温暖化が進む近年では、東京などの都市部や九州などでは、10月に入ってもわずかながらセミが鳴いていることも珍しくなくなった」という。
(1)『新宿中央公園管理事務所の富田広施設運営係員は「5年ほどここで仕事をしていますが、この時期にセミの声を聞くのは初めてです。まさかという思いです」と話していました』
(2)『セミの生態に詳しい大阪市立自然史博物館の初宿成彦学芸員は「11月以降にセミの鳴き声が聞こえるのは記憶になく、非常に珍しい。セミは成虫になって地上に出てからの3日間程度気温が高いと、鳴き始めることが知られていて、ここ数日、暖かい日が続いたため、活動が活発になっている可能性がある」と指摘しています』
(11/10撮影:この日の最高気温は22.8℃。1ヶ月ぶりにベランダでマット交換)
2.”夏の虫たち”を襲った「今年の夏の猛暑」
今年の夏、 兵庫県のカブトムシ観察施設で猛暑によりカブトムシ3000匹が衰弱死したというニュースがあった。この「大規模なカブトムシの衰弱死」の現象もまた、「立冬に出現したセミ」の現象のように「温暖化が進む近年では、珍しくない」と言われる日が来るのかもしれない。
前回述べたように、参考資料1:「日本産昆虫、ダニの発育零点と有効積算温度定数:第2版」によれば、多くの 昆虫種は最短発育温度(30℃)をわずか5℃上回るだけで致死温度(35℃)になる。
しかし、例年、夏には猛暑(最高気温35℃以上)が発生する。このような「大規模なカブトムシの衰弱死」が今年突然発生した原因は何だろうか?
神戸新聞NEXT|総合|猛暑で観察施設のカブトムシ激減 衰弱死が3千匹
(1)『兵庫県市川町下牛尾の「リフレッシュパーク市川」内のカブトムシ観察施設のカブトムシが7月以降、次々と衰弱死し、残り数十匹となった。同パークなどによると、累計で3千匹近くが死んだという。猛暑の影響とみられ、過去約20年間で例のない被害という』
(2)『同パークの「かぶとむしど~む」は1996年から毎年夏季限定で営業。例年、ネットで囲われた約千平方メートルのコナラ林に数百匹を放ち、その後、死んで減る分を補う』
(3)『気象庁によると、同町に近い福崎町の観測点では、7月14日以降14日連続で猛暑日となり、24日には過去最高の38・8度を記録した。同社は「ネットで囲っている以外はそのままの自然環境。これだけ暑い日が続いて雨も降らないと、対策がない」と肩を落とす』
(マット交換後も”昨日のバナナ”に食らいつく”晩秋(11月)のカブトムシ”)
3.「猛暑によるカブトムシ3000匹衰弱死」のインパクト
このような「大規模なカブトムシの衰弱死」は、今年だけに限った現象なのであろうか?また、特定の場所や地域に限った現象なのであろうか?上記の記事を参考に、この「大規模なカブトムシの衰弱死」が発生した時期・範囲・地域・頻度・原因を考察してみよう。
(1)この現象が発生した時期(世界各地で記録的な猛暑が発生した時期)
①上記の記事にある通り、この現象が発生した時期は今年の「7月以降」であり、「7月14日以降14日連続で猛暑日となり、24日には過去最高の38・8度を記録した」という。その前日(7月23日)、埼玉県熊谷市(北緯36度09.0分)で「国内の観測史上最高」となる41.1度を記録し、東京都青梅市(北緯35度47.3分)で「都内初の40度超え」となる40.8度を記録した。
②世界気象機関(WMO)は、7月24日、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で記者会見し、世界各地で記録的な猛暑が広がっていると発表した(北極圏では30度、日本では40度、米国では50度を超えた)。そして、西日本を襲った豪雨災害も含め、一連の異常気象は「温暖化ガスの増加による長期的な地球温暖化の傾向と関係している」と分析した。
世界の異常気象「地球温暖化と関係」 国際機関 (写真=AP) :日本経済新聞
③このように、この現象が発生した時期は、ちょうど世界各地で記録的な猛暑が発生した時期である。したがって、世界各地で今後増々「温暖化ガスの増加による長期的な地球温暖化の傾向」が強まるに従って、来年以降もこのような「大規模なカブトムシの衰弱死」は発生する可能性が十分あると推測される。
(11/11撮影:近所のもう一つの公園。8月以来の散策。中央の木陰に鳩の群れ)
(2)この現象が発生した範囲(一般の雑木林でも発生していた可能性がある)
①上記の記事にある通り、この現象が発生したカブトムシ観察施設「かぶとむしど~む」は、「約千平方メートルのコナラ林」であり、「ネットで囲っている以外はそのままの自然環境」である。
②したがって、このような「大規模なカブトムシの衰弱死」は、このカブトムシ観察施設「かぶとむしど~む」だけではなく、「一般の雑木林」でも発生していた可能性があると推測される。
(3)この現象が発生した地域(東京・名古屋・大阪・福岡とほぼ同緯度)
①上記の記事にある通り、この現象が発生した場所は、兵庫県市川町であり、同町に近い気象庁の観測地は「福崎」(北緯34度57.0分)である。つまり、東京(北緯35度41.5分)、名古屋(北緯35度10.0分)、大阪(北緯34度40.9分)、福岡(北緯33度34.9分)とほぼ同緯度の地域である。
②したがって、10/26ブログ「カブトムシと地球温暖化②」で述べたように、参考資料2:気象庁「地球温暖化予測情報(第2章 気温の将来予測)」によれば、今世紀末までに、東京・名古屋・大阪・福岡と同様に、兵庫県市川町も、南西諸島の「屋久島の平年気温」に置き変わり、現在の屋久島のような「温帯最下部のほぼ亜熱帯に属する地域」になると推測される。
③したがって、このような「大規模なカブトムシの衰弱死」は、兵庫県市川町だけではなく、東京・名古屋・大阪・福岡とほぼ同緯度の地域の一般の雑木林でも発生していた可能性があると推測される。
(右手は紅葉が目立ってきた。手前が桜、奥の林はクヌギやコナラ)
(4)この現象が発生した頻度(過去22年間(1996年~2017年)は未発生)
①上記の記事にある通り、「かぶとむしど~む」は1996年から毎年営業し、「過去約20年間で例のない被害」であるという。
②したがって、このような「大規模なカブトムシの衰弱死」は、過去22年間(1996年~2017年)は未発生であったと推測される。
(5)この現象が発生した原因(今年の「7月14日以降の14日連続猛暑」)
①上記の記事にある通り、この現象が発生した原因は「7月以降」の「猛暑」とされる。「7月14日以降14日連続で猛暑日となり、24日には過去最高の38・8度を記録した」という。「福崎」の7月の気象記録を調べると、この地域周辺の今年7月最初の猛暑日は7月14日である。したがってこの現象が発生した原因は今年の「7月14日以降の14日連続猛暑」と推測される。
②しかし、例年、夏には猛暑(最高気温35℃以上)が発生する。それでは、このような「大規模なカブトムシの衰弱死」が今年突然発生した原因は何だろうか?「7月14日以降の14日連続猛暑」には、どのような意味があるのだろうか?
(左手は緑鮮やか。秋は”樹木の種類の違い”を”葉の色”で鮮明に教えてくれる季節)
4.「福崎」で観測された今年と例年の「真夏(7~8月)の猛暑」の違い
そこで、「福崎」で観測された今年と例年の「真夏(7~8月)の猛暑」の違いを考察してみよう。以下は、「かぶとむしど~む」が営業を始めた1996年以降の「福崎」の「過去22年間の真夏(7~8月)の猛暑」の気象記録である。
福崎(北緯34度57.0分)
7~8月 最高気温 猛暑日数 35℃台 36℃台 37℃台 38℃台
1996年 36.7℃ 6日 4日 2日
1997年 34.8℃ 0日
1998年 35.8℃ 2日 2日
1999年 37.6℃ 1日 - 1日
2000年 37.6℃ 11日 7日 4日
2001年 37.6℃ 13日 9日 2日 1日 1日
2002年 37.4℃ 9日 5日 3日 1日
2003年 35.6℃ 4日 4日
2004年 38.0℃ 11日 10日 - - 1日
2005年 37.3℃ 10日 7日 2日 1日
2006年 38.1℃ 13日 6日 4日 2日 1日
2007年 38.4℃ 11日 6日 3日 1日 1日
2008年 36.8℃ 15日 9日 6日
2009年 35.9℃ 4日 4日
2010年 37.6℃ 24日 5日 16日 3日
2011年 36.2℃ 11日 8日 3日
2012年 37.8℃ 18日 10日 6日 2日
2013年 37.3℃ 16日 7日 7日 2日
2014年 37.1℃ 6日 3日 2日 1日
2015年 37.9℃ 13日 2日 8日 3日
2016年 37.6℃ 22日 15日 5日 2日
2017年 36.0℃ 12日 11日 1日
22年平均 37.0℃ 10.5日 6.0日 3.4日 0.8日 0.2日
⇩
2018年 38.8℃ 30日 9日 9日 11日 1日
(2.85倍)(1.5倍)(2.64倍)(13.75倍)(5.0倍)
注1:2010年の猛暑日数は9月発生分(6日)を含めると合計30日である。
注2:2010年及び2015年に「12日連続猛暑」が発生している。2010年は8/29(最高気温34.6℃)を「猛暑日」と見做すと実質「20日連続猛暑」となる。
(桜の木に何かついている・・。近寄ってみる。キノコ?)
以上の記録から以下の事がわかる。
(1)例年の「猛暑の高温域の中心」は35℃台
22年平均を見ると、例年の「真夏(7~8月)の猛暑」は、1年に約10日(10.5日)の割合で発生し、その内訳は「35℃台:36℃台:37℃台:38℃台=6:3.4:0.8:0.2」である。37℃台の猛暑は1年に1日未満の割合(0.8日:1年に一度有るか無いか)で発生し、38℃台の猛暑は5年に1日の割合(0.2日:5年に一度有るか無いか)で発生している。これは、例年の「猛暑の高温域の中心」は35℃台であったことを示している(例外は過去22年間で「2010年」「2015年」の2年のみである。この2年は36℃台にシフトしている)。
(2)今年初めて「猛暑の高温域の中心」が37℃台にシフト
一方、今年の「真夏(7~8月)の猛暑」は例年の約3倍発生し(30日)、その内訳は「35℃台:36℃台:37℃台:38℃台=9:9:11:1」である。例年は1年に一度有るか無いかの「37℃台の猛暑日」が、今年は突然二桁も発生している(11日)。これは、今年の「猛暑の高温域の中心」は37℃台であったことを示している
(3)「38℃台の猛暑(38.8℃)」「猛暑日数(30日)」「連続猛暑(14日連続)」は主な相違点ではない
今年の「真夏(7~8月)の猛暑」の特徴として「38℃台の猛暑(38.8℃)」、「猛暑日数(30日)」、「連続猛暑(14日連続)」がある。しかし、上記の通り、「38℃台の猛暑」(1日)は過去に計4回発生している。「猛暑日数(30日)」も過去に発生している(注1)。「連続猛暑」(14日連続)も過去に発生している(注2)。したがって、これらは、主な相違点ではない。
(4)主な相違点は「猛暑の高温域の中心」(35℃台)が37℃台にシフトした事
このように、「福崎」の今年の「真夏(7~8月)の猛暑」と例年の「真夏(7~8月)の猛暑」の主な相違点は、 「37℃台の猛暑日」の発生日数の急増であり(13.75倍)、例年の「猛暑の高温域の中心」(35℃台)が、今年初めて37℃台にシフトした点である。例年は1年に一度有るか無いかの「37℃台の猛暑日」が、今年は突然二桁も発生している(11日)。したがって、「大規模なカブトムシの衰弱死」が今年突然発生した主な原因は、「猛暑の高温域の中心」(35℃台)が、今年初めて37℃台にシフトしたためであると推測される。
(ズーム機能は使わずに、被写体に近寄って撮影。このキノコの名は?)
5.「福崎」で観測された「7月14日以降の14日連続猛暑」の「気温帯」
それでは、「37℃台の猛暑日」の発生日数が急増し、「猛暑の高温域の中心」(35℃台)が37℃台にシフトすると、どのような「気温帯」になるのだろうか?以下は、「福崎」で観測された「7月14日以降14日連続猛暑」の気象記録である(なお、猛暑の発生時間のうち、1時間以下は最大値を取って1時間とした)。
福崎(北緯34度57.0分)
2018年 平均気温 最高気温 最低気温 35℃台 36℃台 37℃台 38℃台
7月 (猛暑の発生時間)
7/14 30.0℃ 36.8℃ 24.0℃ 1時間 1時間
7/15 30.2℃ 37.3℃ 25.1℃ 3時間 2時間 1時間
7/16 30.5℃ 37.5℃ 24.5℃ 1時間 3時間 1時間
7/17 30.6℃ 37.5℃ 25.3℃ 1時間 3時間 1時間
7/18 30.6℃ 37.3℃ 25.9℃ 1時間 1時間 1時間
7/19 30.4℃ 37.5℃ 25.0℃ 4時間 0時間 1時間
7/20 30.0℃ 37.2℃ 25.1℃ 1時間 1時間 1時間
7/21 29.6℃ 36.2℃ 25.2℃ 1時間 1時間
7/22 29.8℃ 36.6℃ 24.7℃ 2時間 2時間
7/23 31.0℃ 37.3℃ 25.5℃ 3時間 1時間 1時間
7/24 31.0℃ 38.8℃ 25.2℃ 1時間 2時間 2時間 1時間
7/25 29.9℃ 37.0℃ 23.6℃ 1時間 1時間 1時間
7/26 30.1℃ 36.6℃ 24.8℃ 5時間 1時間
7/27 28.7℃ 35.4℃ 24.8℃ 1時間
14日平均 30.2℃ 37.1℃ 24.9℃ 1.8時間 1.3時間 0.7時間 0.1時間
⇧ ⇧
平年値 25.9℃ 31.0℃ 22.1℃
(裏側にもう一つ。更に大きいキノコがある。これはサルノコシカケ?)
以上の記録から以下の事がわかる。
(1)「平年に比べ1日の平均気温が4.3℃高い気温帯」が発生
14日平均を見ると、1日の平均気温は30.2℃である。そして、平年(1981~2010 年の30年間)の7月の平均気温は25.9℃である。したがって「7月14日以降14日連続猛暑」は「平年に比べ1日の平均気温が4.3℃高い気温帯」であったことになる。これは、今世紀末までに予想される東京:最暖月(8月)の平均気温(30.5± 0.6℃)に相当する。
(2)「平年に比べ1日の平均気温が4.3℃高い気温帯」の内容
14日平均を見ると、1日の平均気温は30.2℃、最高気温は37.1℃である。したがって、「日中の最低気温」は30.2℃、「日中の気温」は30.2℃~37.1℃である。そのうち、35℃台の気温は1.8時間、36℃台は1.3時間、37℃台は0.7時間、38℃台は0.1時間の割合である。したがって、35℃以上の気温が発生した時間は3.9時間、36℃以上は2.1時間、37℃以上は0.8時間(1日に1時間弱)、38℃以上は0.1時間(1日に10分弱)の割合である。
(3)「平年に比べ1日の平均気温が4.3℃高い気温帯」が発生したことにより、翌日以降も「37℃以上の気温」が連日発生しやすい状況が生まれた
このように、「37℃台の猛暑日」の発生日数が急増し、「猛暑の高温域の中心」(35℃台)が37℃台にシフトすると、「平年に比べ1日の平均気温が4.3℃高い気温帯」が発生し(日中の気温は30.2℃~37.1℃)、翌日以降も「37℃以上の気温」が連日発生しやすい状況が生まれたため(14日連続猛暑)、このような「大規模なカブトムシの衰弱死」をもたらしたと推測される。
(1本の桜の木に2枚の「猿の腰掛け」。他の桜の木にはついていない)
6.「雑木林の林内気温」(「気象庁発表の気温」-「雑木林の木陰効果」)
このように、「大規模なカブトムシの衰弱死」が今年突然発生した原因は、「37℃台の猛暑日」の発生日数が急増し、「猛暑の高温域の中心」(35℃台)が37℃台にシフトしたためである。「猛暑によるカブトムシ3000匹衰弱死」の気温境界線は37℃であったと推測できる。
しかし、前回述べたように、参考資料1:「日本産昆虫、ダニの発育零点と有効積算温度定数:第2版」によれば、多くの 昆虫種は最短発育温度(30℃)をわずか5℃上回るだけで致死温度(35℃)になる。
それでは、昆虫の致死温度(35℃)と「猛暑によるカブトムシ3000匹衰弱死」の気温境界線(37℃)の差は何であろう?
(1)「雑木林の林内気温」(「気象庁発表の気温」-「雑木林の木陰効果」)
真夏の樹木の葉は雑木林全体を覆い隠す。そのため「雑木林の林内気温」は「雑木林の外の気温」(「気象庁発表の気温」)より通常低くなる。「夏の昆虫」たちは、雑木林の木陰によって「猛暑による高温」から守られている。したがって「雑木林の林内気温」は「気象庁発表の気温」から「雑木林の木陰効果」を差し引いて捉えることになる。
(エクアドル産の高糖度バナナを近所の”肉屋”で1房¥108で買ってみた)
(2)「雑木林の木陰効果」(一般に-2.1±0.3℃)
それでは「雑木林の木陰効果」は一般に何度程度であろうか?
9/7ブログ「カブトムシの大きさの秘密③」では、「カブトムシの幼虫の発育速度や成虫の大きさ」を決定づける「深度別地温」の考察を行った。その際に参考にした「国立科学博物館附属自然教育園」(東京都港区白金台五丁目)の参考資料3:「自然教育園内の深度別地温観測 (2010年~2016年)」には、「自然教育園内の雑木林の気温」と併せて「都市域の大手町の気温」が5年分(2010年~2014年)併記されている。
そこで、この5年分(2010年~2014年)のデータから、夏(6月~8月)のデータのみを抜粋し、「自然教育園内の雑木林の気温」と「都市域の大手町の気温」を比較すると、以下の通りである。
月別平均値 自然教育園内の雑木林 都市域の大手町 気温差
2010年6月 21.5℃ 23.6℃ -2.1℃
2010年7月 25.6℃ 28.0℃ -2.4℃
2010年8月 27.4℃ 29.6℃ -2.2℃
2011年6月 20.8℃ 22.8℃ -2.0℃
2011年7月 25.3℃ 27.3℃ -2.0℃
2011年8月 25.6℃ 27.5℃ -1.9℃
2012年6月 19.6℃ 21.4℃ -1.8℃
2012年7月 24.2℃ 26.4℃ -2.2℃
2012年8月 26.7℃ 29.1℃ -2.4℃
2013年6月 20.9℃ 22.9℃ -2.0℃
2013年7月 25.0℃ 27.3℃ -2.3℃
2013年8月 26.6℃ 29.2℃ -2.6℃
2014年6月 21.4℃ 23.4℃ -2.0℃
2014年7月 24.5℃ 26.8℃ -2.3℃
2014年8月 25.6℃ 27.7℃ -2.1℃
(15カ月平均) -2.1℃
以上の記録から以下の事がわかる。
15カ月平均を見ると、「自然教育園内の雑木林の気温」と「都市域の大手町の気温」との「気温差」は平均-2.1℃である(最大-2.6℃、最小-1.8℃)。したがって、夏(6月~8月)の日中の「雑木林の木陰効果」は一般に-2.1±0.3℃であると推測される。
(11/11撮影:この日の最高気温は20.1℃。ベランダで日光浴をするカブトムシ)
7.「7月14日以降14日連続猛暑」(福崎)の際の「日中の林内気温」
(1)「日中の林内気温」(28.1±0.3℃~35.0±0.3)
それでは、「雑木林の木陰効果」(一般に-2.1±0.3℃)を考慮すると、「7月14日以降14日連続猛暑」(福崎)の際の「日中の林内気温」はどうであっただろうか?
①「7月14日以降14日連続猛暑」(福崎)の際の「日中の気温」は30.2℃~37.1℃である。「日中の林内気温」は、「気象庁発表の日中の気温」から「雑木林の木陰効果」(一般に-2.1±0.3℃)を差し引いて捉えることになる。したがって、「日中の林内気温」は28.1±0.3℃~35.0±0.3℃であったと推測される。
②そして「7月14日以降14日連続猛暑」(福崎)の際の「日中の気温」(30.2℃~37.1℃)のうち、37℃以上の気温が発生した時間は0.8時間(1日に1時間弱)である。したがって、「日中の林内気温」(28.1±0.3℃~35.0±0.3℃)のうち、35℃以上の気温が発生した時間は、日中の平均0.8時間(1日に1時間弱)であると推測される。
(11/11撮影:日光浴の最中に翅を広げて飛ぼうとした”晩秋のカブトムシ”)
(2)「昆虫の高温障害」
この「日中の林内気温」を、前回述べた「昆虫の高温障害」の視点から考察すると、以下の通りである。
①「日中の林内気温」は28.1±0.3℃~35.0±0.3℃である。つまり、日中は終始、外気温が「昆虫の高温障害温度域」(一般に28~32℃)に突入していた事になる。したがって日中地上に居るカブトムシ等の昆虫類には、孵化率や羽化率の低下、成虫寿命の短縮、産卵数の減少等の「生理的障害」や「産卵不能障害」が発生したと推測される。
②「日中の林内気温」(28.1±0.3℃~35.0±0.3℃)のうち、35℃以上の気温が発生した時間は、日中の0.8時間である。つまり、日中の林内気温が「最高発育限界温度(一般に35℃)」を上回った時間は、日中の0.8時間を占めていた事になる。したがって、その間、地上に居たカブトムシ等の昆虫類の発育や活動は停止し、徐々に死に至ったと推測される。
(通販の段ボールに入っていた包装材。飼育ケースの隙間に入れてみた)
8.まとめ
(1)今年の夏、 兵庫県のカブトムシ観察施設で猛暑によりカブトムシ3000匹が衰弱死したというニュースがあった。この現象が発生した時期は、ちょうど世界各地で記録的な猛暑が発生した時期である。世界気象機関(WMO)は、7月24日、世界各地で記録的な猛暑が広がっていると発表した(北極圏では30度、日本では40度、米国では50度を超えた)。そして、西日本を襲った豪雨災害も含め、一連の異常気象は「温暖化ガスの増加による長期的な地球温暖化の傾向と関係している」と分析した。したがって、世界各地で「長期的な地球温暖化の傾向」が強まるに従って、来年以降もこのような「大規模なカブトムシの衰弱死」は発生する可能性が十分あると推測される。
(2)この現象が発生したカブトムシ観察施設「かぶとむしど~む」は、「約千平方メートルのコナラ林」であり、「ネットで囲っている以外はそのままの自然環境」である。また、この現象が発生した場所は、東京・名古屋・大阪・福岡とほぼ同緯度である。したがって、この「大規模なカブトムシの衰弱死」は、東京・名古屋・大阪・福岡とほぼ同緯度の地域の一般の雑木林でも発生していた可能性があると推測される。
(3)この現象が発生した原因は「7月14日以降の14日連続猛暑」とされる。そして、このような「大規模なカブトムシの衰弱死」は過去22年間(1996年~2017年)は発生していない。しかし、例年、夏には猛暑(最高気温35℃以上)が発生する。このような「大規模なカブトムシの衰弱死」が今年突然発生した原因は何だろうか?
(「空間充填材としても簡単に再利用できます」と書いてある。良いかも)
(4)この現象が発生した地域の今年の「真夏(7~8月)の猛暑」を例年の「真夏(7~8月)の猛暑」と比較すると、主な相違点は、 「37℃台の猛暑日」の発生日数の急増である(13.75倍)。例年の「猛暑の高温域の中心」(35℃台)が、今年初めて37℃台にシフトした点である。例年は1年に一度有るか無いかの「37℃台の猛暑日」が、今年は突然二桁も発生している(11日)。したがって、「大規模なカブトムシの衰弱死」が今年突然発生した主な原因は、「猛暑の高温域の中心」(35℃台)が、今年初めて37℃台にシフトしたためであると推測される。
(5)そして、「37℃台の猛暑日」の発生日数が急増し、「猛暑の高温域の中心」(35℃台)が37℃台にシフトすると、「平年に比べ1日の平均気温が4.3℃高い気温帯」が発生し(日中の気温は30.2℃~37.1℃)、翌日以降も「37℃以上の気温」が連日発生しやすい状況が生まれたため(14日連続猛暑)、このような「大規模なカブトムシの衰弱死」をもたらしたと推測される。
(6)これまで「夏の昆虫」たちは、雑木林の木陰によって「猛暑による高温」から守られてきた(木陰効果-2.1℃)。そのため、例年は35℃を超える猛暑日であっても、林内気温が「昆虫の致死温度(35℃)」を超えることはほとんど無かった。今年7月、世界各地で記録的な猛暑が広がった。「猛暑の高温域の中心(例年35℃台)」が初めて37℃台にシフトし、雑木林の”木陰効果”は徐々に効力を失った。これが「猛暑によるカブトムシ3000匹衰弱死」が教える”木陰効果”の限界である。
(11/14撮影:エサ皿の左手には・・取れてしまった左後ろ足の鍵爪)
9.”晩秋(11月)のカブトムシ”の様子
2匹目オス(茶)は、今日(11/17)で羽化後129日目を迎えた。したがって、1匹目オス(赤)より34日寿命を延ばしている。しかし、11月14日に、とうとう左後ろ足の鍵爪が取れてしまった。「鍵爪の欠損」は寿命が近づいていることを意味する。右後ろ足もあまり動かない。だから「木にしがみつく力(体力)」は前足4本しかないようだ。
①夜間は、マットの上に出て活動していること(食事・排泄など)⇒〇。
②木にしがみつく力が強いこと(体力)⇒×。
③日中は、マットの下に潜っていること(休息・太陽光や熱の遮断)⇒×。
(11/15撮影:鍵爪が取れてしまった左後ろ足。右後ろ足もあまり動かない)
9/18ブログ【敬老の日番外編①】で、一昨年のお盆過ぎ(8月下旬)に、実家の庭先に現れた大きなカブトムシ(たぶん80mm超)を引き取った青年の話を書いた。その青年の話では「11月19日まで生きていた。正月まで生きるかと思った」「いろいろなエサを試したが、カブトムシを長生きさせるにはバナナが一番良かった」という。
実際に2匹目オス(茶)は、バナナを食べて長生きしている。その青年の話はやはり本当だったようだ。但し、冬が刻々と近づくにつれ、2匹目オス(茶)の生命力が消えていくのを毎日感じる。
最後に出来ることはないかと考え、この2週間は、1ヶ月ぶりにマットを交換したり、エクアドル産の高糖度バナナを与えてみたり、段ボール箱と飼育ケースの隙間に空間充填材を入れたりしてみた。しかし、最大の恩恵は、「立冬」(11月7日)を過ぎても暖かい日が続いたことであろう。東京の朝の最低気温が10℃以下になったのは11月15日からである。2匹目オス(茶)の鍵爪が取れてしまったのもその頃(11月14日:最低気温10.1℃)である。天国の1匹目オス(赤)が迎えに来る日も、近いのだろうか?
(11/17撮影:今日(11/17)で羽化後129日目を迎えた2匹目オス(茶))
(10/9撮影:天国の1匹目オス(赤)が迎えに来る日も、近いのだろうか?)
参考資料1:「日本産昆虫、ダニの発育零点と有効積算温度定数:第2版」
http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/sinfo/publish/bulletin/niaes31-1.pdf
参考資料2:気象庁「地球温暖化予測情報(第2章 気温の将来予測)」
参考資料3:「自然教育園内の深度別地温観測 (2010年~2016年)」
研究と標本・資料 ≫ 学術出版物 :: 国立科学博物館 National Museum of Nature and Science,Tokyo
カブトムシと地球温暖化③「昆虫の高温障害の仕組みと温度域と症状」(外気温が「発育有効温度帯」の上限に近づくほど昆虫の「発育・反応速度」は速くなる。しかし、外気温が「高温障害温度域」に突入すると、高温によるストレスにより昆虫の「発育・反応速度」は逆に遅くなる(生理的障害・産卵不能障害)。更に外気温が「発育有効温度帯」の上限を突破すると昆虫は発育・活動を停止し死に至る(致死・即死))
(10月上旬の近所の公園。10/7は真夏日(最高32.3℃、最低23.9℃)。緑が濃い)
⇩
(10月末の近所の公園 10/31の気温(最高19.9℃、最低11.9℃)。やや紅葉)
前回「カブトムシと地球温暖化②」で述べたように、「気象庁の地球温暖化予測情報」の通りならば、今世紀末までに東京・名古屋・大阪・福岡の気温は、南西諸島の「屋久島の平年気温」に置き変わり、現在の屋久島のような「温帯最下部のほぼ亜熱帯に属する地域」になると推測される。
前回は「気象庁の地球温暖化予測情報」を基に、今世紀末に予想される東京・名古屋・大阪・福岡の「季節」を、この4都市の中で最も緯度が高く平年気温が低い都市「東京」を例に考察した。その上で「夏の季節」について以下①②のように述べた。
①猛暑日(最高気温≧35℃)は10倍増え約1か月間に及ぶ(2.4日⇒26.4± 7.0日)。最暖月(8月)は「昆虫の高温障害」が発生する猛暑日(最高気温≧35℃)が連日続くことなる。
②「日中の最高気温」は「昆虫種の致死温度帯(≧40℃)」に突入する。
「今年の夏、日本で起こった異常気象」を振り返れば、これは「控えめな表現」であることがわかる。上記①②の現象は、今世紀末を待つまでもなく、今年の夏、この4都市とほぼ同緯度の地域で既に起こった事実だからである。
また、「昆虫の高温障害」「昆虫種の致死」の上記温度についても、生命力の非常に高い昆虫種まで含む場合の温度であり、昆虫の大きな目であるコウチュウ、カメムシ、ハチ、チョウ目に限定すれば「昆虫の高温障害」「昆虫種の致死」が発生する温度はもっと低い。
(10月末の近所の公園 公園中央は、赤く色付き始めた)
1.2018年夏は「気象庁の地球温暖化予測通りの現象」が出始めた年である
(1)猛暑日の「将来日数」
今年の夏、兵庫県市川町のカブトムシ観察施設(約千平方メートルのコナラ林)でカブトムシ3000匹衰弱死するというニュースがあった。そこで、同町に近い福崎町の観測点(北緯34度57.0分)における今年7月~8月の猛暑日(最高気温≧35℃)の日数を調べてみた。猛暑日の日数は30日であった。これは、今世紀末までに予想される東京(北緯35度41.5分)の猛暑日の「将来日数」(26.4± 7.0日)に相当する。
(2)日中の最高気温の「将来気温」
今年の夏、埼玉県熊谷市(北緯36度09.0分)で「国内の観測史上最高」となる41.1度を記録した。東京都青梅市(北緯35度47.3分)で「都内初の40度超え」となる40.8度を記録した。これは、今世紀末までに予想される東京(北緯35度41.5分)の「日中の最高気温」の「将来気温」(40.1± 0.6℃)に相当する。
(10月末の近所の公園 ”どんぐり”を落としたクヌギ林は、まだ緑が濃い)
2.「昆虫の高温障害の仕組みと温度域」(一般に30±2.0℃(28~32℃))
wikipedia(フリー百科事典)によると、カブトムシは「コウチュウ目・コガネムシ科・カブトムシ亜科・真性カブトムシ族カブトムシ種」であり、コウチュウ目の仲間である。そしてカブトムシの飼育温度は「直射日光の当たらない、気温25度程度、35度以下の通気性の良い場所で飼育する」とある。
この35度という温度は、昆虫の「発育有効温度帯」(一般に10℃~35℃)の上限値(最高発育限界温度35℃)に相当する。屋外の気温では「猛暑日」(最高気温≧35℃)に当たる。それでは、最高発育限界温度35℃を超えない環境であれば、カブトムシ等の昆虫類は高温によるストレス(高温障害)を受けないのだろうか?健康な状態で寿命を全うし、翌年に子孫を残せるのだろうか?
(10月末の近所の公園 広い敷地の中で、この側道だけ花が咲いていた)
(1)昆虫の「発育有効温度帯」(一般に10℃~35℃)
「変温動物」である魚類や昆虫類は、「恒温動物」である哺乳類や鳥類と違って、「発育」や「活動」に必要な「温度」を自ら作り出し調整する事は出来ない。そのため、「変温動物」である昆虫の「発育」や「活動」は、外気温に大きく左右され、昆虫には「発育や活動に有効な一定の温度の範囲」(有効温度帯)が存在する。昆虫は、それより高い温度帯(一般に35℃以上)や低い温度帯(一般に10℃以下)では、「発育」や「活動」はできない(最低発育限界温度10℃~最高発育限界温度35℃)。
(2)昆虫の「発育速度」や「反応速度」は「温度」に比例する
昆虫類の幼虫は食料を消化して「発育」に必要な物質に変える(物質代謝)。また、昆虫類の幼虫や成虫は食料を消化して「活動」(食事・排泄・移動等)に必要なエネルギーに変える(エネルギー代謝)。これらの「代謝」は、体内で起きる「化学反応」であり、「化学反応」の速度は、普通10℃の差で2~3倍変わる。従って、昆虫の「発育速度」や「反応速度」は「温度」に比例し、10℃上昇するごとに2~3倍に増加する(温度係数Q10=2~3)。「温度」が1℃上昇するごとに昆虫の「発育」や「活動」に必要な「代謝」は約10%活発になる。
(ズーム機能は使わずに、被写体に近寄って撮影。この花の名は?)
(3)「高温障害」により昆虫の「発育速度」や「反応速度」は逆に遅くなる。
このように昆虫は一般に「発育有効温度帯」(一般に10℃~35℃)の範囲内では、外気温がその上限(最高発育限界温度)に近づくほど昆虫の「発育速度」や「反応速度」は速くなる。しかし、外気温が「昆虫の高温障害温度域」に突入すると、高温によるストレス(「高温障害」)を受け始め、昆虫の「発育速度」や「反応速度」は逆に遅くなる。
(4)「昆虫の発育速度が最大となる温度(最短発育温度)」は「昆虫の高温障害温度域」の中央値である
したがって、昆虫の「発育速度」や「反応速度」は、「最高発育限界温度」(一般に35℃)の手前の「昆虫の高温障害温度域」の中央値でピークを迎える。つまり、「昆虫の発育速度が最大となる温度(最短発育温度)」は「昆虫の高温障害温度域」の中央値である。
(更に被写体に近寄って撮影。結局、この花の名はわからなかった)
(5)昆虫一般の「高温障害温度域」は30±2.0℃(28~32℃)
それでは昆虫一般の「高温障害温度域」は具体的に何度なのだろうか?
参考資料1:「日本産昆虫、ダニの発育零点と有効積算温度定数:第2版」によれば、『119種について温度と高温障害の出現頻度を調べてみた。頻度分布曲線をスムーズにするために5点移動平均値を求めて描いた(Fig 3)。Fig. 3から高温障害がみられるのは28~32℃の範囲が一般的であることが伺える。この温度は夏にはごく日常的に経験する温度であること にも注目したい』という。
したがって昆虫一般の「高温障害温度域」は30±2.0℃(28~32℃)である。
(6)コウチュウ目の「最低発育限界温度」は10.9±2.5℃(8.4~13.4℃)、「高温障害温度域」は29.14±2.7℃(26.4~31.8℃)
それではカブトムシを含むコウチュウ目の「高温障害温度域」は具体的に何度なのだろうか?
参考資料1によれば『昆虫の大きな目であるコウチュウ、カメムシ、ハチ、チョウ目を取り上げて、そのT0と高温障害温度域の比較を行った(Table 8)。 T0は4目とも10℃を中心に7~14℃の範囲にある。高温障害は平均29~31℃で27~34℃の範囲を示す。したがってこの4目の間には、T0と高温障害に関しては、違いが認められなかった』という。注:T0とは最低発育限界温度(又は発育零点)の事である。
T0(最低発育限界温度) Heat stress(高温障害温度域)
Coleoptera(コウチュウ目) 10.9±2.5℃ 29.14±2.7℃
Hemiptera(カメムシ目) 10.8±3.83℃ 30.4±2.5℃
Hymenoptera(ハチ目) 10.2±2.62℃ 31.5±2.4℃
Lepidoptera(チョウ目) 10.2±2.33℃ 30.9±2.6℃
したがって、カブトムシを含むコウチュウ目の「最低発育限界温度」は10.9±2.5℃(8.4~13.4℃)、「高温障害温度域」は29.14±2.7℃(26.4~31.8℃)である。
(10/28”大人買い”記録更新。バナナを近所の八百屋で4房108円で購入)
(7)「最短発育温度」は昆虫一般で30℃、コウチュウ目では29.14℃
このように「高温障害温度域」は昆虫一般で30±2.0℃(28~32℃)、カブトムシを含むコウチュウ目では29.14±2.7℃(26.4~31.8℃)である。そして「最短発育温度」(発育速度が最大となる温度)は「昆虫の高温障害温度域」の中央値である。したがって「最短発育温度」(発育速度が最大となる温度)は昆虫一般で30℃、カブトムシを含むコウチュウ目では29.14℃である。
(8)まとめ
①昆虫は一般に「発育有効温度帯」(一般に10℃~35℃)の範囲内では、外気温がその上限(最高発育限界温度)に近づくほど「発育速度」や「反応速度」は速くなる。しかし、外気温が「昆虫の高温障害温度域」(一般に30±2.0℃)に突入すると、高温によるストレス(「高温障害」)を受け始め、「最短発育温度」(一般に30℃)をピークに昆虫の「発育速度」や「反応速度」は逆に遅くなる。
②なお、カブトムシを含むコウチュウ目の「最低発育限界温度」は10.9±2.5℃(8.4~13.4℃)、「高温障害温度域」は29.14±2.7℃(26.4~31.8℃)である。
(柄をラップで巻き、全体にラップして、冷蔵庫の野菜室に入れると長く持つ)
3.昆虫の「高温障害の症状」(「生理的障害:一般に28~32℃」「産卵不能障害:一般に32~35℃」「致死:一般に35℃~」「即死:一般に42~50℃」)
それでは、外気温が「昆虫の高温障害温度域」(一般に30±2.0℃)に突入すると、昆虫はどのようなストレス(「高温障害」)を受けるのであろうか?
参考資料1:「日本産昆虫、ダニの発育零点と有効積算温度定数:第2版」によれば、『高温による生理的障害である孵化率や羽化率の低下、成虫寿命の短縮、産卵数の減少などが、最短発育温度の付近や、それより下回る高い温度域でも見られる。 また、最短発育温度を2~3℃上回っただけで飼育中の個体が全部死んだり、成虫になっても産卵能力がなかったりする。Mason and Strait (1998)によれば、多くの 昆虫種は最短発育温度をわずか5℃上回るだけで致死温度になる。42~50℃に数分から数時間暴露することで 90%の死亡をもたらすという』
(バナナが大好きな2匹目オス(茶)。毎日、バナナで口や鼻が塞がってしまう)
したがって、昆虫の「高温障害の症状」は、以下のように分類できる。
(1)「高温による生理的障害」(一般に28~32℃)≒「真夏日」
①最短発育温度(一般に30℃)の付近やそれより下回る高い温度域(一般に28~32℃)では、「高温による生理的障害」(孵化率や羽化率の低下、成虫寿命の短縮、産卵数の減少)が発生する。
②この温度域は「夏にはごく日常的に経験する温度」、すなわち「真夏日」(最高気温30℃以上)の気温に相当する。
③この温度域は「最高発育限界温度(一般に35℃)」を下回る温度であるため、昆虫の発育や活動は可能であり、子孫を残すことが出来る。
(2)「高温による産卵不能障害」(一般に32~35℃)≒「真夏日~猛暑日」
①最短発育温度(一般に30℃)を2~3℃上回った温度域(一般に32~35℃)では、「高温による産卵不能障害」(成虫になっても産卵能力が無い)が発生する。
②この温度域は「夏にはごく日常的に経験する温度」、すなわち「真夏日」(最高気温30℃以上)の気温に相当する。
③この温度域は「最高発育限界温度(一般に35℃)」を下回る温度であるため、昆虫の発育や活動は可能であるが、産卵不能となる可能性が高いため、子孫を残すことが困難となる。
(10月最後の”秋のカブトムシ”の日向ぼっこ。11月は出来るだろうか?)
(3)「高温による致死」(一般に35℃以上)≒「猛暑日」
①多くの 昆虫種は最短発育温度(30℃)をわずか5℃上回るだけで致死温度(35℃)になる。
②この温度域は「夏には稀に経験する温度」、すなわち「猛暑日」(最高気温35℃以上)の気温に相当する。
③この温度域は「最高発育限界温度(一般に35℃)」を上回る温度であるため、昆虫の発育や活動は停止し、徐々に死に至る。
(4)「高温による即死」(一般に42~50℃)≒「記録的な猛暑日」
①42~50℃に数分から数時間暴露することで昆虫種の 90%の死亡をもたらす。
②この温度域は「夏でもほとんど経験しない温度」、すなわち「記録的な猛暑日」(最高気温40℃以上)の気温に相当する。
③この温度域は「最高発育限界温度(一般に35℃)」を遥かに上回る温度帯であるため、昆虫の発育や活動は停止し、「即死」に近い状態で死に至る。
(飼育ケースの掃除中は、炭木ごとカブトムシは退避してもらう)
(5)まとめ
外気温が「昆虫の高温障害温度域」(一般に28~32℃)に突入すると、孵化率や羽化率の低下、成虫寿命の短縮、産卵数の減少等の「生理的障害」が発生する。32~35℃の温度域では「産卵不能障害」が発生し、子孫を残すことが困難となる。更に「最高発育限界温度(一般に35℃)」を上回ると昆虫の発育や活動は停止し、徐々に死に至る。42℃以上の温度域では「即死」に近い状態で死に至る。
(夜は飼育ケースを段ボールの中へ。その横で、育った猫草を食べる猫たち)
4.”晩秋(11月)のカブトムシ”の様子
2匹目オス(茶)は、今日(11/5)で羽化後117日目を迎えた。したがって、1匹目オス(赤)より22日寿命を延ばしている。
但し「毎日の健康診断チェック」では、半分アラートが出たままである。左後ろ足を動かせない。「木にしがみつく力(体力)」も前回同様、衰えたままだ。
(今日(11/5)で羽化後117日目を迎えた2匹目オス(茶))
前回設置した”湯たんぽ”の効果があったようで食事の時間は増えている。一日中バナナに顔をうずめている。口や鼻がバナナにまみれて塞がってしまうので、ウエットティッシュで毎日拭き取っている。排泄の量は極端に減ったままである。
①夜間は、マットの上に出て活動していること(食事・排泄など)⇒〇。
②木にしがみつく力が強いこと(体力)⇒△。
③日中は、マットの下に潜っていること(休息・太陽光や熱の遮断)⇒×。
左後ろ足を動かせないから?それとも低温だから?理由はよくわからないが、飼育ケース内をほとんど動き回らない。ゆっくり”代謝”を行って、その分、長生きしているのかもしれない。
(左後ろ足が動かせない2匹目オス(茶)。今日も頑張って生きてます)
参考資料1:「日本産昆虫、ダニの発育零点と有効積算温度定数:第2版」
http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/sinfo/publish/bulletin/niaes31-1.pdf
カブトムシと地球温暖化②「気象庁地球温暖化予測のインパクト(季節編)」(今世紀末までに東京・名古屋・大阪・福岡は「温帯最下部のほぼ亜熱帯に属する地域」になる。冬日は消滅し「最寒月(1月)の気温」は「春の3月~4月の平年気温」に置き換わる。夏日は約半年間に及び、そのうち真夏日は約4カ月、熱帯夜は約2カ月を占める。最暖月(8月)は「昆虫の高温障害」が発生する猛暑日が連日続き、日中の最高気温は「昆虫種の致死温度帯」に突入する)
(曇りの日なら、魚の警戒心が薄れるので、日中でも釣りを楽しむことが出来る)
1.今世紀末までに、「名古屋・大阪・福岡の気温」も、「東京の気温」と同様に南西諸島の「屋久島の平年気温」に置き変わる
前回「カブトムシと地球温暖化①」で述べたように、参考資料1:気象庁「地球温暖化予測情報(第2章 気温の将来予測)」によれば、今世紀末までに、「東京の気温」は、南西諸島の「屋久島の平年気温」に置き変わる。
この現象は、東京(北緯35度41.5分)より低緯度の名古屋(北緯35度10.0分)、大阪(北緯34度40.9分)、福岡(北緯33度34.9分)でも同様である。むしろ、東京より緯度が低く平年気温が高いため、この現象は東京よりも早く、顕著に現れる。
例:東京(北緯35度41.5分)「将来気温」 ( ≒屋久島 「平年気温」)
【平均気温(年平均)】 19.7℃ ( ≒ 19.4℃)
【最高気温(年平均)】 24.2±0.6℃( ≒ 22.6℃)
【最低気温(年平均)】 16.0±0.6℃( ≒ 16.3℃)
例:名古屋(北緯35度10.0分)「将来気温」( ≒屋久島 「平年気温」)
【平均気温(年平均)】 20.1℃ ( ≒ 19.4℃)
【最高気温(年平均)】 24.9±0.6℃( ≒ 22.6℃)
【最低気温(年平均)】 16.3±0.6℃( ≒ 16.3℃)
例:大 阪(北緯34度40.9分)「将来気温」( ≒屋久島 「平年気温」)
【平均気温(年平均)】 21.0℃ ( ≒ 19.4℃)
【最高気温(年平均)】 25.2±0.5℃( ≒ 22.6℃)
【最低気温(年平均)】 17.5±0.5℃( ≒ 16.3℃)
例:福 岡(北緯33度34.9分)「将来気温」( ≒屋久島 「平年気温」)
【平均気温(年平均)】 21.1℃ ( ≒ 19.4℃)
【最高気温(年平均)】 25.0±0.5℃( ≒ 22.6℃)
【最低気温(年平均)】 17.8±0.5℃( ≒ 16.3℃)
(日中の魚の居場所を教えてくれるのは、様々な鳥たちだ。そこを狙う)
2.今世紀末までに東京・名古屋・大阪・福岡は、現在の屋久島のような「温帯最下部のほぼ亜熱帯に属する地域」になる
wikipedia(フリー百科事典)によると、屋久島は「温帯最下部のほぼ亜熱帯に属する地域」である。したがって、今世紀末までに東京・名古屋・大阪・福岡は、「温帯最下部のほぼ亜熱帯に属する地域」になる。
それでは、今世紀末までに東京・名古屋・大阪・福岡の「季節」は具体的にどの程度変わるのか?この4都市の中で最も緯度が高く平年気温が低い都市は東京である。そこで「気象庁の地球温暖化予測情報」を基に、今世紀末に予想される東京の「季節」を考察してみよう。
(浅場の魚の群れはシラサギが、深場の魚の群れはカワウが教えてくれる)
3.気象庁地球温暖化予測:「夏日」は全国的に増加し「冬日」は沖縄・奄美を除いて全国的に減少する
参考資料1:気象庁「地球温暖化予測情報(第2章 気温の将来予測)」によれば、「夏日の年間日数は、全国的に有意に増加する」「冬日の年間日数は、沖縄・奄美を除いて全国的に有意に減少する」という。
参考資料1に記載されている「夏日・冬日等年間日数」の「増減日数」をまとめると以下の通りである。
年間: 【夏 日】 【真夏日】 【猛暑日】
(最高気温≧25℃) (最高気温≧30℃) (最高気温≧35℃)
全国平均 58.2 ± 6.3日増加 48.7 ± 7.0日増加 19.1 ± 5.2日増加
北日本日本海側 55.2 ± 7.2日増加 32.3 ± 7.5日増加 5.7 ± 3.1日増加
北日本太平洋側 55.6 ± 8.5日増加 29.7 ± 7.5日増加 6.6 ± 3.1日増加
東日本日本海側 59.7 ± 7.3日増加 53.0 ± 7.9日増加 21.4 ± 7.8日増加
東日本太平洋側 62.0 ± 7.2日増加 55.1 ± 8.3日増加 24.0 ± 7.0日増加
西日本日本海側 57.9 ± 6.6日増加 58.6 ± 7.9日増加 26.6 ± 7.4日増加
西日本太平洋側 57.9 ± 6.6日増加 62.5 ± 8.2日増加 29.1 ± 7.4日増加
沖縄・奄美 67.4 ±11.5日増加 87.8 ± 9.1日増加 54.0±12.7日増加
年間: 【冬 日】 【真冬日】 【熱帯夜】
(最低気温<0℃)(最高気温<0℃) (最低気温≧25℃)
全国平均 46.9 ± 6.9日減少 14.3 ± 1.7日減少 40.7 ± 6.7日増加
北日本日本海側 65.4 ± 11.8日減少 37.6 ± 5.5日減少 17.3 ± 6.4日増加
北日本太平洋側 62.8 ± 11.0日減少 32.3 ± 3.4日減少 18.4 ± 6.7日増加
東日本日本海側 49.4 ± 4.6 日減少 3.8 ± 0.2日減少 51.6 ± 8.3日増加
東日本太平洋側 43.8 ± 7.7 日減少 4.7 ± 0.5 日減少 45.3 ± 8.1日増加
西日本日本海側 32.7 ± 3.6 日減少 1.1 ± 0.1 日減少 57.1 ± 8.0日増加
西日本太平洋側 31.9 ± 4.2 日減少 0.7 ± 0.0日減少 58.7 ± 8.3日増加
沖縄・奄美 - - 90.5 ± 9.9日増加
(「春は部分換羽、秋は完全換羽」を行うシラサギは、秋の姿が一番美しい)
4.東京の「夏日・冬日等の年間日数」の「将来日数」
気象庁の記録によると、平年(1981~2010 年の30年間)における東京の「夏日・冬日等年間日数」の平均は以下の通りである(「平年日数」)。これに上記「東日本太平洋側」(東京を含む)の「夏日・冬日等年間日数」の「増減日数」を加減すると、今世紀末までに予想される東京の「夏日・冬日等年間日数」の「将来日数」を算出できる。
例:東京:年間 「平年日数」 ± 「増減日数」 =「将来日数」
【真冬日】(最高気温<0℃) 0.0日 - 4.7 ± 0.5日減少 = 0.0日
【冬 日】(最低気温<0℃) 20.5日 - 43.8 ± 7.7日減少 = 0.0日
【夏 日】(最高気温≧25℃)108.7日 + 62.0 ± 7.2日増加 = 170.7± 7.2日
【真夏日】(最高気温≧30℃) 46.4日 + 55.1 ± 8.3日増加 = 101.5± 8.3日
【猛暑日】(最高気温≧35℃) 2.4日 + 24.0 ± 7.0日増加 = 26.4± 7.0日
【熱帯夜】(最低気温≧25℃) 11.3日 + 45.3 ± 8.1日増加 = 56.6 ± 8.1日
以上から、今世紀末までに予想される東京の「季節」について以下の事がわかる。
①東京の「季節」から冬日(最低気温<0℃)は消滅する(20.5日⇒0.0日)。
②逆に、夏日(最高気温≧25℃)は約半年間に及ぶ(108.7日⇒170.7± 7.2日)。
③真夏日(最高気温≧30℃)は倍増え約4か月間に及ぶ(46.4日⇒101.5± 8.3日)。
④猛暑日(最高気温≧35℃)は10倍増え約1か月間に及ぶ(2.4日⇒26.4± 7.0日)。
⑤熱帯夜(最低気温≧25℃)は5倍増え約2か月間に及ぶ(11.3日⇒56.6 ± 8.1日)。
(羽繕いすることにより、尾羽の付け根の尾脂腺の脂を身体に塗り、水を弾く)
5.気象庁地球温暖化予測:季節ごとの平均気温も年平均気温と同様に上昇
参考資料1:気象庁「地球温暖化予測情報(第2章 気温の将来予測)」によれば、「季節ごとの平均気温も年平均気温と同様の傾向を示しているが、各季節とも高緯度地域ほど上昇 が大きく、海氷や積雪の融解による影響が大きい冬の方が夏よりも上昇が大きい」という。
以下は、参考資料1に記載されている「東日本太平洋側」(東京を含む)の「季節ごとの気温上昇幅」をまとめたものである。
例:東京:季節 【平均気温】 【最高気温】 【最低気温】
(季節平均) (季節平均) (季節平均)
春(3月~5月) 3.8 ± 0.9℃上昇 3.8 ± 0.9℃上昇 3.9 ± 1.0℃上昇
夏(6月~8月) 4.1 ± 0.6℃上昇 4.1 ± 0.6℃上昇 4.1 ± 0.6℃上昇
秋(9月~11月) 4.5 ± 0.8℃上昇 4.3 ± 0.7℃上昇 4.8 ± 0.9℃上昇
冬(12月~2月) 4.8 ± 1.0℃上昇 4.8 ± 1.0℃上昇 4.8 ± 1.0℃上昇
(手前の浅いタナには、マハゼの群れが見える。浅いため、型は小さい)
6.東京の「最暖月(8月)・最寒月(1月)」の「将来気温」
気象庁の記録によると、平年(1981~2010 年の30年間)における東京の「最暖月(8月)・最寒月(1月)」の気温は以下の通りである。これに上記「東日本太平洋側」(東京を含む)の「季節ごとの気温上昇幅」を加算すると、今世紀末までに予想される東京の「最暖月(8月)・最寒月(1月)」の「将来気温」を算出できる。
東京:最暖月(8月) 「平年気温」 +「気温上昇幅」 = 「将来気温」
【平均気温(月平均)】 26.4℃ + 4.1 ± 0.6℃ = 30.5± 0.6℃
【最高気温(月平均)】 30.8℃ + 4.1 ± 0.6℃ = 34.9± 0.6℃
【最低気温(月平均)】 23.0℃ + 4.1 ± 0.6℃ = 27.1± 0.6℃
東京:最寒月(1月) 「平年気温」 +「気温上昇幅」 = 「将来気温」
【平均気温(月平均)】 6.1℃ + 4.8 ± 1.0℃ = 10.9±1.0℃
【最高気温(月平均)】 9.6℃ + 4.8 ± 1.0℃ = 14.4±1.0℃
【最低気温(月平均)】 0.9℃ + 4.8 ± 1.0℃ = 5.7±1.0℃
(奥の深いタナには、クロダイやキビレの群れが見える。こちらも型は小さい)
7.今世紀末までに東京の「最寒月(1月)」の気温は「春の3月~4月の平年気温」に置き換わる
東京の「最寒月(1月)」の「将来気温」は、以下の通り、東京の「3月の平年気温」と「4月の平年気温」の間にあることがわかる。
東京 「3月の平年気温」<「1月の将来気温」<「4月の平年気温」
【平均気温(月平均)】 8.7℃ < 10.9±1.0℃ < 13.9℃
【最高気温(月平均)】 13.6℃ < 14.4±1.0℃ < 19.0℃
【最低気温(月平均)】 4.4℃ < 5.7±1.0℃ < 9.4℃
以上から、今世紀末までに予想される東京の「季節」について以下の事がわかる。
・東京の「最寒月(1月)」の気温は「春の3月~4月の平年気温」に置き換わる(3月の平年気温<最寒月(1月)の将来気温<4月の平年気温)。
(道端の鳩の群れを威嚇するシラサギ。同じシラサギとは思えない変身ぶりだ)
8.東京の月ごとの「最高気温(月平均)」の「将来気温」
気象庁の記録によると、平年(1981~2010 年の30年間)における東京の月ごとの「最高気温(月平均)」は以下の通りである。これに上記「東日本太平洋側」(東京を含む)の「季節ごとの気温上昇幅」(【最高気温】)を加算すると、今世紀末までに予想される東京の月ごとの「最高気温(月平均)」の「将来気温」を算出できる。
「最高気温(月平均)」
東京 「平年気温」+「気温上昇幅」=「将来気温」
1月 9.6℃ + 4.8 ± 1.0℃ = 14.4 ± 1.0℃
2月 10.4℃ + 4.8 ± 1.0℃ = 15.2 ± 1.0℃
3月 13.6℃ + 3.8 ± 0.9℃ = 17.4 ± 0.9℃
4月 19.0℃ + 3.8 ± 0.9℃ = 22.8 ± 0.9℃
5月 22.9℃ + 3.8 ± 0.9℃ = 26.7 ± 0.9℃
6月 25.5℃ + 4.1 ± 0.6℃ = 29.6 ± 0.6℃
7月 29.2℃ + 4.1 ± 0.6℃ = 33.3 ± 0.6℃
8月 30.8℃ + 4.1 ± 0.6℃ = 34.9 ± 0.6℃
9月 26.9℃ + 4.3 ± 0.7℃ = 31.2 ± 0.7℃
10月 21.5℃ + 4.3 ± 0.7℃ = 25.8 ± 0.7℃
11月 16.3℃ + 4.3 ± 0.7℃ = 20.6 ± 0.7℃
12月 11.9℃ + 4.8 ± 1.0℃ = 16.7 ± 1.0℃
以上から、今世紀末までに予想される東京の「季節」について以下の事がわかる。
①夏日(最高気温≧25℃)の時期は約1カ月早まり、約1カ月遅くなる(6月~9月⇒5月~10月)。
②真夏日(最高気温≧30℃)の時期は約1カ月早まり、約1カ月遅くなる(7月~8月⇒6月~9月)。
③最暖月(8月)は「昆虫の高温障害」が発生する猛暑日(最高気温≧35℃)が連日続くことになる。
(左:元「成虫用ケース」、中央:元「幼虫用ケース」、右:元「人工蛹室」)
9.東京の月ごとの「最低気温(月平均)」の「将来気温」
気象庁の記録によると、平年(1981~2010 年の30年間)における東京の月ごとの「最低気温(月平均)」は以下の通りである。これに上記「東日本太平洋側」(東京を含む)の「季節ごとの気温上昇幅」(【最低気温】)を加算すると、今世紀末までに予想される東京の月ごとの「最低気温(月平均)」の「将来気温」を算出できる。
「最低気温(月平均)」
東京 「平年気温」+「気温上昇幅」=「将来気温」
1月 0.9℃ + 4.8 ± 1.0℃ = 5.7 ± 1.0℃
2月 1.7℃ + 4.8 ± 1.0℃ = 6.5 ± 1.0℃
3月 4.4℃ + 3.9 ± 1.0℃ = 8.3 ± 1.0℃
4月 9.4℃ + 3.9 ± 1.0℃ = 13.3 ± 1.0℃
5月 14.0℃ + 3.9 ± 1.0℃ = 17.9 ±1.0℃
6月 18.0℃ + 4.1 ± 0.6℃ = 22.1± 0.6℃
7月 21.8℃ + 4.1 ± 0.6℃ = 26.9 ± 0.6℃
8月 23.0℃ + 4.1 ± 0.6℃ = 27.1 ± 0.6℃
9月 19.7℃ + 4.8 ± 0.9℃ = 24.5 ± 0.9℃
10月 14.2℃ +4.8 ± 0.9℃ = 19.0 ± 0.9℃
11月 8.3℃ + 4.8 ± 0.9℃ = 13.1 ± 0.9℃
12月 3.5℃ + 4.8 ± 1.0℃ = 8.3 ± 1.0℃
以上から、今世紀末までに予想される東京の「季節」について以下の事がわかる。
・熱帯夜(最低気温≧25℃)の時期は約1カ月早まり、約1カ月遅くなる(8月⇒7月~9月)
(久しぶりにベランダで撮影。太陽光に勝る照明は無い、といつも思う)
10.東京の「日中の最高気温」の「将来気温」
気象庁の記録によると、平年(1981~2010 年の30年間)における東京の「日中の最高気温」は以下の通りである。これに上記「東日本太平洋側」(東京を含む)の「季節ごとの気温上昇幅」(【最高気温】)を加算すると、今世紀末までに予想される東京の「日中の最高気温」の「将来気温」を算出できる。
東京 「平年気温」 +「気温上昇幅」 = 「将来気温」
【最高気温(30年平均)】 36.0℃ + 4.1 ± 0.6℃ = 40.1± 0.6℃
【最高気温(30年最大)】 39.5℃ + 4.1 ± 0.6℃ = 43.6± 0.6℃
【最高気温(30年最小)】 32.9℃ + 4.1 ± 0.6℃ = 37.0± 0.6℃
以上から、今世紀末までに予想される東京の「季節」について以下の事がわかる。
・「日中の最高気温」は「昆虫種の致死温度帯(≧40℃)」に突入する。
(カブトムシの色や光沢が鮮明なのは太陽光のおかげ。室内照明では難しい)
11.まとめ。
今世紀末までに東京・名古屋・大阪・福岡の気温は、南西諸島の「屋久島の平年気温」に置き変わり、現在の屋久島のような「温帯最下部のほぼ亜熱帯に属する地域」になる。この4都市の中で最も緯度が高く平年気温が低い都市は東京である。そこで「気象庁の地球温暖化予測情報」を基に、今世紀末に予想される東京の「季節」を考察すると以下のようになる。
(1)今世紀末に予想される東京の「冬」
①東京の「季節」から冬日(最低気温<0℃)は消滅する(20.5日⇒0.0日)。
②東京の「最寒月(1月)」の気温は「春の3月~4月の平年気温」に置き換わる(3月の平年気温<最寒月(1月)の将来気温<4月の平年気温)。
(2)今世紀末に予想される東京の「夏」
①夏日(最高気温≧25℃)は約半年間に及ぶ(108.7日⇒170.7± 7.2日)。夏日の時期は約1カ月早まり、約1カ月遅くなる(6月~9月⇒5月~10月)
②真夏日(最高気温≧30℃)は倍増え約4か月間に及ぶ(46.4日⇒101.5± 8.3日)。真夏日の時期は約1カ月早まり、約1カ月遅くなる(7月~8月⇒6月~9月)。
③熱帯夜(最低気温≧25℃)は5倍増え約2か月間に及ぶ(11.3日⇒56.6 ± 8.1日)。熱帯夜の時期は約1カ月早まり、約1カ月遅くなる(8月⇒7月~9月)。
④猛暑日(最高気温≧35℃)は10倍増え約1か月間に及ぶ(2.4日⇒26.4± 7.0日)。最暖月(8月)は「昆虫の高温障害」が発生する猛暑日が連日続くことなる。
⑤「日中の最高気温」は「昆虫種の致死温度帯(≧40℃)」に突入する
(3)今世紀末に予想される東京の「春と秋」
このように、東京の「季節」から冬日(最低気温<0℃)は消滅し、逆に夏日(最高気温≧25℃)は約半年間に及ぶ(5月~10月)。その結果、残り半年間(11月~4月)が「平年並みの春と秋」になる。夏日が終わる直後(11月)から最寒月(1月)までが「平年並みの秋」となり、最寒月の翌月(2月)から夏日が始まる直前(4月)までが「平年並みの春」となる。
(今日(10/26)で羽化後107日目を迎えた2匹目オス(茶)の健康チェック)
13.”秋のカブトムシ”の防寒対策(その2)
(1)2匹目オス(茶)の様子
2匹目オス(茶)は、今日(10/26)で羽化後107日目を迎えた。したがって、1匹目オス(赤)より12日寿命を延ばしている。但し「毎日の健康診断チェック」では、半分アラートが出ている状態だ。「木にしがみつく力(体力)」も日々衰えている。食事・排泄の量も極端に減ってしまった。とにかく動かない。1匹目オス(赤)のように、いつ生命反応を停止してもおかしくない状態だ。
①夜間は、マットの上に出て活動していること(食事・排泄など)⇒△。
②木にしがみつく力が強いこと(体力)⇒〇。
③日中は、マットの下に潜っていること(休息・太陽光や熱の遮断)⇒×。
(久ぶりに、外で”日向ぼっこ”をする”秋のカブトムシ”。炭木が暖炉のようだ)
(2)”秋のカブトムシ”の防寒対策(その2)
先日(10/22)、外の気温が11.6℃まで下がった。コオロギ等の秋の虫たちの鳴き声もすっかり消えてしまった。昆虫一般の最低発育限界温度(10℃)に近づいたので、地上に居る秋の虫たちも、そろそろ活動を停止する時期なのかもしれない。前回述べたように、もしかしたら2匹目オス(茶)が動かないのは、朝方の低温で代謝が下がり、活性が鈍っている可能性もある。
今週から飼育ケースへの冷気侵入を防ぐ目的で段ボール箱の中にアルミ保温シートを入れた。断熱効果が目的なので、飼育ケース内は暖かくならない。そこで、”秋のカブトムシ”の防寒対策(その2)として、段ボール箱の中に”湯たんぽ”を置いてみた。
(釣りの時にしか使わない100均のプラスチック製ミニ水筒。これを使う)
猫たち用の「ペット用床ホット」が2つ余っているが、猫の暖房用だから温かすぎる。アルミ保温シートとセットで使うと段ボール内に熱がこもりやすい。飼育ケースが”地球温暖化”のようになったら大変だ。そこで、100均のプラスチック製ミニ水筒にお湯を入れて使ってみた。ところが、段ボール内の温度が5分経過後5℃も上昇してしまった。そこでお湯と水を半分づつ入れてみた。保温性はないが、逆にそれが良いようだ。湯たんぽのように少しずつ熱を放出する。 夜12時セットで朝8時過ぎまで持続する。
”アルミ保温シート”が「温室効果ガス」だとしたら、この”湯たんぽ”は「太陽熱」の役割を担う。地球の温度(15℃)も「温室効果ガス」と「太陽熱」の絶妙なバランスで成り立っている。どちらが欠けても生物は生存できない。地球の隣の金星(400℃)や火星(-55℃)の姿がそれを教えてくれる。
参考資料1:気象庁「地球温暖化予測情報(第2章 気温の将来予測)」
カブトムシと地球温暖化①「気象庁地球温暖化予測のインパクト(列島編)」(今世紀末までに「東京の気温」は南西諸島の「屋久島の平年気温」に置き変わる。同様に、北海道最北端の「宗谷岬の気温」は「青森の平年気温」に置き変わり、「青森の気温」は「東京の平年気温」に置き変わり、「屋久島の気温」は「那覇の平年気温」に置き変わる)
(”川の駅”の”あずまや”。水陸両用バス「SKY Duck」は前方の川の上を走る)
9/23ブログ「カブトムシの大きさの秘密④」では、「世界のカブトムシ」の「温度管理の違い」や「大きさの違い」を、「中南米のヘラクレスオオカブト属」「東南アジアのアトラスオオカブト属」「東アジアのカブトムシ属」ごとに、「温度ーサイズ則」の視点から考察した。
10/1ブログ「カブトムシの大きさの秘密⑤」では、「世界最大」「アジア最大」と呼ばれる熱帯地域に生息する「世界の大型のカブトムシ」ほど「温度適応の幅が狭い」ため「昆虫の高温障害」になりやすく「地球温暖化」に伴う気温上昇につれて絶滅リスクが高いと述べた。その上で、絶滅を避けるための選択肢として「中南米のヘラクレスオオカブト属」「東南アジアのアトラスオオカブト属」ごとに「生息できる場所への移動」の可能性を考察し、移動が困難な個体群については「その場所での適応・進化」(小型化)の可能性を「温度ーサイズ則」「ベルクマンの法則」の視点から「太古の地球温暖化PETM」を参考に考察した。
それでは、残る「東アジアのカブトムシ属」についてはどうだろう?「地球温暖化」が「日本のカブトムシ」に与える影響は、「世界の大型のカブトムシ」に与える影響と同様なのだろうか?
(”川の駅”の休憩所。売店・トイレがあるので釣り人にも便利だ)
今夏は埼玉・熊谷で観測史上最高気温41.1度を記録し、北極圏では30度、米国では50度を超えた。西日本を襲った豪雨災害も含め、世界気象機関(WMO)は一連の異常気象は「温暖化ガスの増加による長期的な地球温暖化の傾向と関係している」と分析した。
兵庫県のカブトムシ観察施設では猛暑でカブトムシ3000匹が衰弱死したというニュースもあった。全国各地で最高気温の更新が相次ぎ、学校で熱中症になる子供も多かった。来夏に向けて政府は全国の公立小中学校へのエアコン設置を急ぐ方針だという。今月6日は秋なのに新潟で「猛暑(35℃以上)」となり「10月最高気温」を記録した。もしかしたら、「カブトムシ」の話どころではないのかもしれない。
そこで、まず「気象庁の地球温暖化予測情報」を基に、気象庁の予測通りならば、今世紀末までに日本の気温は具体的にどの程度変わるのか?を見てみよう。
(水深3m。ウキ釣りは、魚が居る様々な水深を探る事が出来るのでよく釣れる)
1.気象庁地球温暖化予測:今世紀末までに「年平均気温」は全国平均で4.5℃上昇し、「東京の気温」は「屋久島の平年気温」に置き変わる
(1)今世紀末までに「年平均気温」は全国平均で4.5℃上昇する
参考資料1:気象庁「地球温暖化予測情報(第2章 気温の将来予測)」によれば、「年平均気温は、全国平均で4.5℃上昇するなど、全国的に有意に上昇する」「高緯度地域 ほど上昇が大きい」「年平均気温と同様に、年平均した最高気温も全国的に有意に上昇する」「年平均気温と同様に、年平均した最低気温も全国的に有意に上昇する」という。
【平均気温】 【最高気温】 【最低気温】
(年平均) (年平均) (年平均)
全国平均 4.5℃上昇 4.3±0.6℃上昇 4.6±0.6℃上昇
北日本日本海側 4.8℃上昇 4.6±0.7℃上昇 5.0±0.7℃上昇
北日本太平洋側 4.9℃上昇 4.7±0.7℃上昇 5.1±0.7℃上昇
東日本日本海側 4.5℃上昇 4.3±0.6℃上昇 4.6±0.6℃上昇
東日本太平洋側 4.3℃上昇 4.2±0.6℃上昇 4.4±0.6℃上昇
西日本日本海側 4.1℃上昇 4.1±0.5℃上昇 4.2±0.5℃上昇
西日本太平洋側 4.1℃上昇 4.1±0.5℃上昇 4.2±0.5℃上昇
沖縄・奄美 3.3℃上昇 3.3±0.4℃上昇 3.4±0.5℃上昇
(2)「東京の気温」は「屋久島の平年気温」に置き変わる
参考資料1:気象庁「地球温暖化予測情報(第2章 気温の将来予測)」によれば、「これは、例えば、東日本太平洋側に属する東京の場合、 現在(1981~2010 年観測値の平均値)の年平均気温が 15.4℃なので、21 世紀末には 4.3℃上昇す ることで、現在の屋久島(1981~2010 年観測値の平均値19.4℃)に近い値になることに相当する」という。
注:wikipedia(フリー百科事典)によると、屋久島は「南西諸島のうち鹿児島県に属する大隅諸島を構成する島の一つ」であり「温帯最下部のほぼ亜熱帯に属する地域」である。「縄文杉」で有名な島である(1993年に日本初の世界自然遺産に登録)。
(3)気象庁の計算方法
このように、気象庁は、現在の「平年気温」である「1981~2010 年の30年間の観測値の平均値」を基準に、今世紀末(21 世紀末)に予想される「気温上昇幅」を加算して今世紀末(21 世紀末)に予想される「将来気温」を求めている。
例:東京 「平年気温」 + 「気温上昇幅」 =「将来気温」
【平均気温(年平均)】 15.4℃ + 4.3℃ = 19.7℃
【最高気温(年平均)】 19.8℃ + 4.2±0.6℃ = 24.2±0.6℃
【最低気温(年平均)】 11.6℃ + 4.4±0.6℃ = 16.0±0.6℃
したがって、東京の「将来気温」は屋久島 「平年気温」とほぼ同じである。
例:東京 「将来気温」 ( ≒屋久島 「平年気温」)
【平均気温(年平均)】19.7℃ ( ≒ 19.4℃)
【最高気温(年平均)】24.2±0.6℃( ≒ 22.6℃)
【最低気温(年平均)】16.0±0.6℃( ≒ 16.3℃)
(川の上を水陸両用バス「SKY Duck」が走ると潮の流れが変わり魚が活性化)
2.同様に、北海道最北端の「宗谷岬の気温」は「青森の平年気温」に置き変わり、「青森の気温」は「東京の平年気温」に置き変わり、「屋久島の気温」は「那覇の平年気温」に置き変わる
注:wikipedia(フリー百科事典)によると、宗谷岬は「日本の本土における最北端の地であり、私人(一般人)が通常訪れることのできる最北端の地」である。
気象庁の記録によると、「宗谷岬」「青森」「屋久島」「那覇」の「平年気温」(1981~2010 年の30年間の観測値の平均値)は、以下の通りである。
「平年気温」 宗谷岬 青 森 東 京 屋久島 那 覇
【平均気温(年平均)】 6.1℃ 10.4℃ 15.4℃ 19.4℃ 23.1℃
【最高気温(年平均)】 8.9℃ 14.5℃ 19.8℃ 22.6℃ 25.7℃
【最低気温(年平均)】 3.5℃ 6.7℃ 11.6℃ 16.3℃ 20.8℃
そこで、上記「気象庁の計算方法」により、「宗谷岬」「青森」「屋久島」「那覇」の「将来気温」を求めると、以下の通りである。
宗谷岬 「平年気温」 + 「気温上昇幅」=「将来気温」
【平均気温(年平均)】 6.1℃ + 4.8℃ = 10.9℃
【最高気温(年平均)】 8.9℃ + 4.6±0.7℃ = 13.5±0.7℃
【最低気温(年平均)】 3.5℃ + 5.0±0.7℃ = 8.5±0.7℃
青 森 「平年気温」 + 「気温上昇幅」 = 「将来気温」
【平均気温(年平均)】 10.4℃ + 4.9℃ = 15.3℃
【最高気温(年平均)】 14.5℃ + 4.7±0.7℃ = 19.2±0.7℃
【最低気温(年平均)】 6.7℃ + 5.1±0.7℃ = 11.8±0.7℃
屋久島 「平年気温」 + 「気温上昇幅」 =「将来気温」
【平均気温(年平均)】 19.4℃ + 4.1℃ = 23.5℃
【最高気温(年平均)】 22.6℃ + 4.1±0.5℃ = 26.7±0.5℃
【最低気温(年平均)】 16.3℃ + 4.2±0.5℃ = 20.5±0.5℃
那 覇 「平年気温」 + 「気温上昇幅」 =「将来気温」
【平均気温(年平均)】 23.1℃ + 3.3℃ = 26.4℃
【最高気温(年平均)】 25.7℃ + 3.3±0.4℃ = 29.0±0.4℃
【最低気温(年平均)】 20.8℃ + 3.4±0.5℃ = 24.2±0.5℃
(魚の夕食時(夕マズメ)の時間帯は短い。釣りも夕方の1~2時間だけ楽しむ)
(3)したがって、北海道最北端の「宗谷岬の気温」は「青森の平年気温」とほぼ同じであり、「青森の気温」は「東京の平年気温」とほぼ同じであり、「屋久島の気温」は「那覇の平年気温」とほぼ同じである。
宗谷岬 「将来気温」 ( ≒青 森「平年気温」)
【平均気温(年平均)】 10.9℃ ( ≒ 10.4℃)
【最高気温(年平均)】 13.5±0.7℃ ( ≒ 14.5℃)
【最低気温(年平均)】 8.5±0.7℃ ( ≒ 6.7℃)
青 森 「将来気温」 ( ≒東 京「平年気温」)
【平均気温(年平均)】 15.3℃ ( ≒ 15.4℃)
【最高気温(年平均)】 19.2±0.7℃ ( ≒ 19.8℃)
【最低気温(年平均)】 11.8±0.7℃ ( ≒11.6℃)
屋久島 「将来気温」 ( ≒那 覇 「平年気温」)
【平均気温(年平均)】 23.5℃ ( ≒ 23.1℃)
【最高気温(年平均)】 26.7±0.5℃ ( ≒ 25.7℃)
【最低気温(年平均)】 20.5±0.5℃ ( ≒20.8℃)
(羽化後102日目を迎えた2匹目オス(茶)。掃除中もバナナにしがみつく)
3.まとめ。
気象庁の「地球温暖化予測」の通りならば、今世紀末までに「東京の気温」は南西諸島の「屋久島の平年気温」に置き変わる。同様に、北海道最北端の「宗谷岬の気温」は「青森の平年気温」に置き変わり、「青森の気温」は「東京の平年気温」に置き変わり、「屋久島の気温」は「那覇の平年気温」に置き変わる。
4.”秋のカブトムシ”の防寒対策
(午後は炭木につかまったまま動かない。眠っているのだろうか?寒い?)
(1)2匹目オス(茶)の様子
2匹目オス(茶)は、今日(10/21)で羽化後102日目を迎えた。したがって、1匹目オス(赤)より7日寿命を延ばしている。但し「毎日の健康診断チェック」では、相変わらず、アラートが出ている状態だ。深夜から午前中にかけてエサを食べ、午後からは炭木につかまったまま動かない。眠っているのだろうか?左後ろ足が不調だからだろうか?とにかく動かない。1匹目オス(赤)のように、いつ生命反応を停止してもおかしくない状態だ。
①夜間は、マットの上に出て活動していること(食事・排泄など)⇒〇。
②木にしがみつく力が強いこと(体力)⇒△。
③日中は、マットの下に潜っていること(休息・太陽光や熱の遮断)⇒×。
(段ボール箱と飼育ケースの隙間に、100均のアルミ保温シートを入れてみた)
(2)”秋のカブトムシ”の防寒対策
最近、朝は外の気温が13℃まで低下している。室内は20℃以上あるが、もしかしたら2匹目オス(茶)が動かないのは、朝方の低温で代謝が下がり、活性が鈍っている可能性もある。そこで、”秋のカブトムシ”の防寒対策として、段ボール箱と飼育ケースの隙間に100均のアルミ保温シートを入れてみた。アルミ保温シートは保温効果があるので、機能的には”温室効果ガス”に似ている。しかし、”地球温暖化”のように外部から太陽熱は加わらないので暖かくはならない。飼育ケースへの冷気の侵入を防ぐ断熱効果は多少あるだろう。
(アルミ保温シートは保温効果があるので機能的には”温室効果ガス”に似ている)
参考資料1:気象庁「地球温暖化予測情報(第2章 気温の将来予測)」