カブトムシの幼虫、さなぎの育て方2018年

虫好きな猫たちのために、ベランダでカブトムシの幼虫を育てる悪戦苦闘の物語

カブトムシの大きさの秘密④「”温度ーサイズ則”の視点で見る”世界のカブトムシ”」(「中南米のヘラクレスオオカブト属」「東南アジアのアトラスオオカブト属」の中でも”世界最大””アジア最大”と呼ばれる大型種ほど、標高が高く涼しい高山帯に生息する。一方、「東アジアのカブトムシ属カブトムシ種」の中でも”ミニカブト”と呼ばれる小型亜種ほど、温帯地域より低緯度の暖かい亜熱帯・熱帯地域に生息する)

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(昼夜の長さが等しくなる秋分から釣りシーズン。9/9に近所の川を事前調査)

1.「カブトムシの大きさの秘密①~③」で述べたように、「温度ーサイズ則」(temperature-size rule)は特に「変温動物」である魚類や昆虫類に当てはまる

(1)「変温動物」である昆虫類の「大きさの違い」は、栄養環境だけでは説明することはできない。これは、「変温動物」である魚類も同じである。なぜなら、「変温動物」である魚類や昆虫類は、「恒温動物」である哺乳類や鳥類と違って、「発育」に必要な「温度」を自ら作り出し調整する事は出来ない。そのため、どんなに豊富な食糧が身近にあっても「発育」に必要な「温度」を「外気温」(気温・水温・地温)に頼らざるを得ないからだ。

(2)そして、生物の「発育」は、体内で起きる「化学反応」であり、「化学反応」の速度は、普通10℃の差で2~3倍変わる。従って、一般的に「生物の発育速度」は「温度」に比例し、10℃上昇するごとに2~3倍に増加する(温度係数Q10=2~3)。特に、「変温動物」である魚類や昆虫類は、「恒温動物」である哺乳類や鳥類と違って、その「発育」は、「外気温」(気温・水温・地温)に大きく左右され、「外気温」が10℃上昇するごとに「発育速度」は2~3倍に増加する。

(3)このように「外気温」(気温・水温・地温)が高くなり、「発育速度」が増加すると、「変温動物」である魚類や昆虫類の成体(成魚・成虫)の体サイズはどうなるのか?「温度ーサイズ則」(temperature-size rule)によれば、

①外気温(気温・水温・地温)が「発育有効温度帯」の上限(最高発育限界温度)に近づくほど、未成魚期・幼虫期の発育速度は速まり、成長率が高くなるため、未成魚・幼虫は発育期間を著しく短縮して「小型化」した成魚・成虫へと発育を遂げる。

②外気温(気温・水温・地温)が「発育有効温度帯」の下限(最低発育限界温度)に近づくほど、未成魚期・幼虫期の発育速度は遅くなり、成長率が低くなるため、未成魚・幼虫は発育期間を著しく延長して「大型化」した成魚・成虫へと発育を遂げる。

③参考資料1:「日本産昆虫、ダニの発育零点と有効積算温度定数:第2版」によれば、「温度ーサイズ則」は概ね80% 以上の変温動物に当てはまるとされている。

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(釣れたのはセイゴ、成長につれて呼び名が変わる出世魚「スズキ」の未成魚)

2.「温度-サイズ則」(temperature-size rule)は魚類より特に昆虫類に適合

(1)このように、「温度-サイズ則」によれば、「変温動物」である魚類や昆虫類は、どんなに豊富な食糧が身近にあっても、外気温(気温・水温・地温)次第で、成体(成魚・成虫)の体サイズは、「小型化」したり「大型化」してしまう。

(2)しかし、魚類は、昆虫類と違って、成体になるタイミングを正確につかめない。なぜなら、昆虫類は性成熟以後は成長を停止するが、魚類は性成熟以後も成長を続けるからだ。 

①昆虫類は「決定成長(determinate growth)」性成熟以後は成長を停止する。
②魚類は「非決定成長(indeterminate growth)」性成熟以後も成長を続ける。

(3)したがって、参考資料2:「温度-サイズ則の適応的意義」によれば「温度-サイズ則に従うかどうかが実験によって調べられた種の大半は昆虫類である」という。つまり、魚類については実験結果は少ないが、昆虫類については実験結果が豊富に存在し、「温度-サイズ則」は魚類よりも特に昆虫類に適合するということである。

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(いつも「入れ食い」状態のマハゼの未成魚、寿命は1年で春に産卵する)

 3.「温度ーサイズ則」の視点で見る「世界のカブトムシ」

(1)もし本当に、「80% 以上の変温動物に当てはまる」とされている「温度-サイズ則」が、「魚類よりも昆虫類に特に適合する」のであれば、「世界のカブトムシ」の「種」を超えた「温度管理の違い」や「大きさの違い」も、「温度-サイズ則」により容易に説明できるのではないだろうか。

 (2)例えば、熱帯地方に生息する”世界最大””アジア最大”と呼ばれる大型種を、温帯地方の日本で飼育する場合、低温飼育が必要(夏場でもエアコンは必須)であるのはなぜであろうか?

例①:世界最大のヘラクレスオオカブトの飼育温度は、大体18℃~28℃前後
例②:2番目に大きいネプチューンオオカブトの飼育温度は、大体18℃~24℃前後
例③:アジア最大のコーカサスオオカブトの飼育温度は、大体15℃~20℃前後

(3)また、東アジア広域に生息する同じカブトムシ種の中でも、”ミニカブト”と呼ばれる小型亜種は、なぜ温帯地域より低緯度の暖かい亜熱帯・熱帯地域に多く生息するのであろうか?

例①ヤクシマカブト(鹿児島屋久島のカブトムシ亜種)(♂約30~60mm前後)
例②オキナワカブト(沖縄本島のカブトムシ亜種)(♂約30~50mm前後)

(4)一般的に「世界のカブトムシ」と呼ばれる昆虫は、「真性カブトムシ族」(コウチュウ目・コガネムシ科・カブトムシ亜科・真性カブトムシ族)の昆虫を指し、「中南米ヘラクレスオオカブト属」「東南アジアのアトラスオオカブト属」「東アジアのカブトムシ属」などに分類される。なお、沖縄に生息するタイワンカブトは「サイカブト族」に属し、「真性カブトムシ族」には含まれない(20世紀初頭に台湾から上陸したサトウキビの害虫である)。

(5)そこで、「世界のカブトムシ」の「温度管理の違い」や「大きさの違い」を、「中南米ヘラクレスオオカブト属」「東南アジアのアトラスオオカブト属」「東アジアのカブトムシ属」ごとに、「温度ーサイズ則」の視点で見てみよう。

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(一昨年の秋、同じ場所で釣ったキチヌ。釣り名人の予想日時で約30分の成果)

4.「中南米ヘラクレスオオカブト属」

熱帯地方に生息する「中南米ヘラクレスオオカブト属」の中でも、「世界最大」と呼ばれる「大型種」(ヘラクレスオオカブトネプチューンオオカブト・サターンオオカブト)は、「標高が高く涼しい」高山帯に生息しているため、「低温飼育」が必要となる。一方、「小型種」(シロカブト)は暖かい平地に生息しているため、「常温飼育」が可能となる。

(1)大型種⇒高地性のカブトムシ⇒低温飼育

wikipedia(フリー百科事典)によると「高地性のカブトムシ全般に共通の傾向として、幼虫・成虫共に平地性種より更に暑さに弱い」「大型になる亜種、また大型の個体は標高1000〜2000mの高山帯にしか見られない」

例①:ヘラクレスオオカブト(♂50.0 - 180.0mm)標高1000〜2000mの高山帯
例②:ネプチューンオオカブト(♂50.0 - 165.0mm)アンデス山脈熱帯雨林
例③:サターンオオカブト(♂55 - 115mm )標高1000 - 2800mの熱帯雨林

 (2)小型種⇒平地性のカブトムシ⇒常温飼育

 例:シロカブト(♂40~70㎜)北アメリカ南部~中央アメリカ一帯

wikipedia(フリー百科事典)によると「新大陸を代表するカブトムシ類、同属のヘラクレスオオカブトよりも遙かに小さく、多くの種類は日本のカブトムシよりも小型であり、代表種のグラントシロカブトの体長は最大でも70mm程で、日本のカブトムシの大型個体には及ばない」

(3)この事実を、「温度ーサイズ則」の視点で見ると、

この事実を、「温度ーサイズ則」の視点で見ると、同じ「ヘラクレスオオカブト属」の中でも、「大型種」ほど「低温でゆっくり発育」し、「小型種」ほど「高温ですばやく発育」すると考察できる。

5.「東南アジアのアトラスオオカブト属」

熱帯地方に生息する「東南アジアのアトラスオオカブト属」の中でも、「アジア最大」と呼ばれる「大型種」(コーカサスオオカブト)は、「標高が高く涼しい」高山帯に生息しているため、「低温飼育」が必要となる。一方、「小型種」(アトラスオオカブト)は暖かい平地に生息しているため、「常温飼育」が可能となる。

(1)大型種⇒高地性のカブトムシ⇒低温飼育

 例:コーカサスオオカブト(♂60~120mm)標高800-2000mの熱帯高地林

wikipedia(フリー百科事典)によると「元の生息地は赤道付近であるが、標高の高い涼しい森林に生息するため暑さには弱く、大体15℃~20℃前後が適温とされている。故にクーラー等の温度管理無しで日本の夏を越すのは厳しい」

(2)小型種⇒平地性のカブトムシ⇒常温飼育

例:アトラスオオカブト(♂50mm~100mm)東南アジアの低地

wikipedia(フリー百科事典)によると「フィリピン・インドネシアなど東南アジアの低地に分布する」

(3)この事実を、「温度ーサイズ則」の視点で見ると、

この事実を、「温度ーサイズ則」の視点で見ると、同じ「アトラスオオカブト属」の中でも、「大型種」ほど「低温でゆっくり発育」し、「小型種」ほど「高温ですばやく発育」すると考察できる。

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(最後はカニ。エサを現地で採集する釣り名人にとってはキチヌやチヌのエサ)

6.「東アジアのカブトムシ属カブトムシ種」

(1)カブトムシは東アジアの広範囲に生息する

wikipedia(フリー百科事典)によると「本州島以南から、台湾島インドシナ半島朝鮮半島、中国大陸まで分布する。北海道島には元々分布していなかったが、人為的に持ち込まれたものが1970年代から定着している。標高1500m以下の山地〜平地の広葉樹林に生息する」

(2)カブトムシは生息域によって、複数の亜種に分類される

wikipedia(フリー百科事典)によると、以下の通りである。

①タイリクカブトムシ:中国大陸・朝鮮半島
②ヤマトカブトムシ ( カブトムシ ) :本州・四国・九州・佐渡島壱岐対馬五島列島平戸島沖縄本島(人為的)北海道(人為的)
③カブトムシ屋久島・種子島亜種:鹿児島県屋久島・種子島
④ツチヤカブト:鹿児島県口永良部島
⑤オキナワカブト:沖縄本島
⑥クメジマカブト:沖縄県久米島
⑦ツノボソカブト:台湾
⑧ツヤカブト:タイ

(3)このように東アジア広域に生息するカブトムシの中でも、以下の通り、「ミニカブト」と呼ばれる小型亜種ほど、温帯地域より低緯度の暖かい亜熱帯・熱帯地域に生息する。

例①ヤクシマカブト(鹿児島屋久島のカブトムシ亜種)(♂約30~60mm前後)

屋久島の自然・昆虫・カブトムシ

 「ヤクシマカブトムシ」?: 屋久島自然史研究会

例②オキナワカブト(沖縄本島のカブトムシ亜種)(♂約30~50mm前後)

オキナワカブト| ドルクスダンケ

(4)この事実を、「温度ーサイズ則」の視点で見ると、

この事実を、「温度ーサイズ則」の視点で見ると、同じ「カブトムシ属カブトムシ種」の中でも、「大型亜種」ほど「低温でゆっくり発育」し、「小型亜種」ほど「高温ですばやく発育」すると考察できる。

 7.バナナの試食5日目の様子(写真は9月21日(金)昼12半撮影)
エサを昆虫ゼリーからバナナへ切り替えて今日で5日が経過したが、二匹共なんとかまだ生きているので、バナナは予想以上の効果があったようだ。

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 (実験:バナナとゼリーのハーフ&ハーフにしてみた。結果は・・) 

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(1匹目オス(赤)羽化後78日目。ゼリーよりバナナの方が好きなようだ)

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(二匹目オス(茶)羽化後73日目。こちらもバナナの方が好きなようだ)

参考資料1:「日本産昆虫、ダニの発育零点と有効積算温度定数:第 2版」

http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/sinfo/publish/bulletin/niaes31-1.pdf

参考資料2:「温度-サイズ則の適応的意義」

温度-サイズ則の適応的意義