カブトムシの幼虫、さなぎの育て方2018年

虫好きな猫たちのために、ベランダでカブトムシの幼虫を育てる悪戦苦闘の物語

急激な気温変化に伴うカブトムシの突然死。その理由と対策(昆虫類は気温の変動に伴って体温が変化する変温動物であるため、「急激な気温変化」に非常に弱く、寿命を縮める要因になる。釣り名人「急激な水温変化に伴う魚の突然死と同じ。魚の場合は水合わせを行って突然死を防いでいる」)

例年「子供が夏休みに入った頃に、購入したカブトムシや採集したカブトムシがすぐ死んでしまった」という話をよく聞く。前々回「カブトムシの寿命が尽きる時期」で述べたように、カブトムシの成虫の寿命は平均1.5カ月(1~3ヶ月)と短く、先日寿命が尽きた2匹のカブトムシのように、カブトムシの寿命が尽きる前には必ず数日前から前兆がある。しかし、今年は例年と違って「前日まで非常に元気だったカブトムシが突然死んでしまった」という話をよく聞く。今年のカブトムシの突然死の原因は、他にあるようだ。

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(1匹目のオス、羽化50日目。自然界のカブトムシ同様、直射日光が当たらなければ、庭先やベランダなどの屋外でも猛暑を乗り切る)

1.急激な気温変化に伴うカブトムシの突然死

(1)「購入したカブトムシが突然死んでしまった」という例は、「屋外(庭先やベランダなどの日陰)での飼育」に多い

ペットショップ等で販売されるカブトムシは、大半が養殖された個体であり、地方の養殖地で羽化し地上に出るとすぐに出荷され、問屋を経て都市部のペットショップ等で販売される。従って、購入したカブトムシは、購入者の手元に届くまでの大半の時間を、冷房の効いた屋内で過ごすことになる。その後は「冷房の効いた屋内での飼育」の家庭もあれば、「屋外(庭先やベランダなどの日陰)での飼育」の家庭もあるだろう。そして「購入したカブトムシが突然死んでしまった」という例は、後者の「屋外(庭先やベランダなどの日陰)での飼育」に多い。

(2)逆に、「採集したカブトムシが突然死んでしまった」という例は、「冷房の効いた屋内での飼育」に多い

一方、採集したカブトムシは、近隣の雑木林などで羽化し地上に出ているところを採集される。従って、採集されたカブトムシは、採集者の手元に届くまでの大半の時間を、屋外で過ごすことになる。その後は「冷房の効いた屋内での飼育」の家庭もあれば、「屋外(庭先やベランダなどの日陰)での飼育」の家庭もあるだろう。そして「採集したカブトムシがすぐ死んでしまった」という例は、前者の「冷房の効いた屋内での飼育」に多い。

(3)「屋外飼育」と「屋内飼育」の決定的な違いは「気温の差」(平均して一昨年は約3度差、昨年は約6度差、今年は約8度差もあった)

子供が夏休みに入った頃(7月21日~31日)と言えば、例年梅雨が終わり、冷房が最も使われる時期だ(北海道を除く、全国の夏の家庭電力消費量の58%はエアコンに使われている)。

また、ある調査ではエアコンの設定で「ちょうどよい」と回答した比率が最も高かったのは「25度」である(68.3%)。

そこで、「屋内平均気温」25度を基準として、子供が夏休みに入った頃(7月21日~31日の11日間)の東京の「最高気温」(屋外)と比較すると、その気温差は、平均すると、次の通りである。

2016年は平均+3.27℃(最小ー3℃、最大+8℃)、
2017年は平均+6.27℃(最小+3℃、最大+9℃)、
2018年は平均+8.00℃(最小+3℃、最大+14℃)である。

したがって、子供が夏休みに入った頃(7月21日~31日)の「屋内飼育」と「屋外飼育」の「気温の差」は、過去3年間、拡大を続け、平均して一昨年は約3℃差、昨年は約6℃差、今年は約8℃差もあった。

 (4)したがって、カブトムシの突然死の原因として、「カブトムシの生存環境が購入を契機に冷房の効いた屋内から屋外へ変更された」又は「カブトムシの生存環境が採集を契機に屋外から冷房の効いた屋内へ変更された」ことによる「生存環境の急激な気温変化」が考えられる。

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(2匹目のオス、羽化45日目。自然界のカブトムシ同様、日中の高温を避けるため、夜間に活動し、明け方には地中に潜ってしまう)

 2.急激な気温変化がカブトムシの突然死を招く理由

それでは、このような「生存環境の急激な気温変化」があった場合に、「カブトムシの突然死」が起こるのは何故だろう? 

(1)哺乳類や鳥類は、「恒温動物」

人間や猫などの哺乳類や、スズメなどの鳥類は、外気温の変動にかかわらず体温をほぼ一定に保つ「恒温動物」だ。そのため、活動できる温度範囲が広く、「急激な気温変化」にも、ある程度耐えられる。

(2)魚類や昆虫類は、「変温動物」

一方、メダカなどの魚類や、カブトムシなどの昆虫類は、水温や気温の変動に伴って体温が変化する「変温動物」だ。そのため、活動できる温度範囲が狭く、「急激な温度変化」に非常に弱く、寿命を縮める要因になる。

(3)「変温動物」は3℃違うだけで、「恒温動物」に比べはるかに大きな温度差と感じる。

このように、「変温動物」のメダカやカブトムシは、水温や気温の変動に伴って体温が変化するため、「恒温動物」の人間や猫に比べ温度に敏感である。よく「釣った魚を手で触ると魚がやけどする」と言われるように、カブトムシも毎日子供に触られると衰弱死することが多い。それは、「変温動物」のメダカやカブトムシは3℃違うだけでも、「恒温動物」の人間や猫に比べはるかに大きな温度差と感じるからだ。

(4)「恒温動物」の人間や猫でさえ、「冷房の効いた屋内」と「屋外」の間を移動するだけで、疲れ、体力も消耗する。

(5)気温の変動に伴って体温が変化する「変温動物」のカブトムは、「恒温動物」の人間や猫に比べ温度に敏感であるため、「冷房の効いた屋内」と「屋外」の間を移動するだけで、寿命が縮まるほどのダメージを受ける。

(6)今年は特に、子供が夏休みに入った頃(7月21日~31日)の「屋内飼育」と「屋外飼育」の「気温の差」は、平均して約8℃差もあった(過去3年間で最高)。「変温動物」のカブトムシは、3℃違うだけで、「恒温動物」の人間に比べはるかに大きな温度差と感じる。それが毎日平均して8℃も違っていたのだから、「前日まで非常に元気だった」カブトムシが「突然死」するのも無理はない。

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(カブトムシは気温の変動に伴って体温が変化する「変温動物」であるため、出来るだけ直射日光を避けようとして地中深く潜る)

3.対策(「急激な気温変化に伴うカブトムシの突然死」を防ぐ方法)

既に述べたように、子供が夏休みに入った頃(7月21日~31日)の「屋内飼育」と「屋外飼育」の「気温の差」は、過去3年間、拡大を続け、平均して一昨年は約3℃差、昨年は約6℃差、今年は約8℃差もあった。従って、今年のような「急激な気温変化に伴うカブトムシの突然死」は、来年以降も恒例化する可能性がある。

それでは、このような「カブトムシの突然死」を防ぐ方法は無いだろうか?どの世界でも、その道の「コツ」を熟知しているのが、「名人」と言われる人達だ。都内でも川に釣りに行くたびに、孫のためにカブトムシやクワガタを沢山採ってくる「釣り名人」は多い。郊外の里山でもめったに見かけないヒラタクワガタコクワガタのようにザクザク採ってくる。魚釣りの醍醐味を知っている「釣り名人」は、昆虫採集の醍醐味も知っている。そんな「釣り名人」が指摘するコツは「急激な水温変化に伴う魚の突然死と同じ。魚の場合は水合わせを行って突然死を防いでいる」という。

(1)アクアリウムの世界では、「急激な水温変化に伴う魚の突然死」を防ぐ方法として「水あわせ」という対策が採られる

江戸時代から観賞魚として親しまれているメダカなどの魚類も、カブトムシと同様、ペットショップ等で購入したり、採集したりする変温動物だ。メダカを例にとると、ビニール袋にメダカと「元の生存環境の水」(ペットショップの水槽や採集現場の水)を一緒に入れて自宅に持ち帰り、「新しい生存環境の水」(自宅の水槽などの水)に移す。しかし、「元の生存環境の水」と「新しい生存環境の水」では水温や水質が違う。水温が3℃違うだけでも「変温動物」であるメダカにしてみれば、「恒温動物」の人間に比べてはるかに大きな温度差と感じる。場合によってはメダカは、寿命が縮まるほどのダメージを受ける。そこで、「元の生存環境の水」と「新しい生存環境の水」の水温や水質の違いによる魚類のダメージを軽減するために、アクアリウムの世界では、「水あわせ」という対策が採られる。

(2)「水あわせ」とは、メダカなどの魚類を「新しい環境の水温や水質」に時間をかけて慣れさせること

まず、購入又は採集してきたメダカを入れたビニール袋を「自宅の水槽」に浮かべ、メダカを「自宅の水槽」の水温に時間をかけて慣れさせる。次に、ビニール袋に「自宅の水槽」の水を半分ほど入れ、メダカを「自宅の水槽」の水質に時間をかけて慣れさせる。

(3)同様にカブトムシを「新しい生存環境の気温」に時間をかけて慣れさせれば良い

このように、アクアリウムの世界では、「急激な水温変化に伴う魚の突然死」を防ぐ方法として「水あわせ」という手法が用いられている。要するに、メダカなどの魚類を「新しい生存環境の水温」に時間をかけて慣れさせ、水温変化に伴うダメージを軽減させるのだ。同様に、カブトムシなどの昆虫類も、気温の変動に伴って体温が変化する変温動物だ。したがって、「急激な気温変化に伴うカブトムシの突然死」を防ぐには、カブトムシを「新しい生存環境の気温」に時間をかけて慣れさせ、気温変化に伴うダメージを軽減させれば良い。

(4)購入したカブトムシを「屋外(庭先やベランダなどの日陰)で飼育」する場合

購入したカブトムシの元の生存環境は、ペットショップ等の「冷房の効いた屋内」である。従って、購入したカブトムシを「屋外(庭先やベランダなどの日陰)で飼育」する場合は、初日からいきなり「屋外(庭先やベランダなどの日陰)で飼育」するのではなく、当初は「冷房の効いた屋内での飼育」から始めるのが良いだろう。そして、気温変化に伴うカブトムシのダメージを軽減させるために、「冷房の効いた屋内」と「屋外」の「気温の差」が3℃以内に縮まる雨天の日を待って「屋外(庭先やベランダなどの日陰)での飼育」へ移行するのが良いだろう。

(5)採集したカブトムシを「冷房の効いた屋内で飼育」する場合

採集したカブトムシの元の生存環境は、近隣の雑木林等の「屋外」である。従って、採集したカブトムシを「冷房の効いた屋内で飼育」する場合は、初日からいきなり「冷房の効いた屋内で飼育」するのではなく、当初は「屋外(庭先やベランダなどの日陰)での飼育」から始めるのが良いだろう。そして、気温変化に伴うカブトムシのダメージを軽減させるために、「冷房の効いた屋内」と「屋外」の「気温の差」が3℃以内に縮まる雨天の日を待って「冷房の効いた屋内での飼育」へ移行するのが良いだろう。

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(カブトムシは夜行性であるため、夕方になると地上付近に浮上して、夜間活動の準備を始める。そのため、夕方にエサをセットし、朝夕は加湿してマットの温度を下げる)