カブトムシの幼虫、さなぎの育て方2018年

虫好きな猫たちのために、ベランダでカブトムシの幼虫を育てる悪戦苦闘の物語

カブトムシが脱走する理由(光、餌、異性)と対策(予防策と防止策)

 1.カブトムシが脱走する理由

羽化したばかりのカブトムシは、骨格や内臓が十分に成熟するまで、約1~2週間、地中の蛹室の中に留まる。羽化2週目以降(羽化7日~10日後)になると、様々な刺激に対する感覚器官も成熟し、刺激(光、餌、異性)を求めて地上に出てくる。従って、

(1)羽化1週目までは、カブトムシが脱走する理由はない

  事実、4匹全て、羽化1週目までは、餌も食べず、飼育ケースの中でおとなしくしていた。コバエ侵入防止用のキッチンペーパーも傷一つ無かった。

(2)羽化2週目以降(羽化7日~10日後)は脱走する理由がある

  自然界では羽化したばかりのカブトムシは、羽化2週目以降になると、夜間、様々な刺激(光、餌、異性)を求めて地上に出てくる。それと同じように、飼育ケースの中でも、夜間、様々な刺激(光、餌、異性)を求めて飼育ケースの外に出ようとする。

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(夜中、カブトムシが飼育ケースの外に出ようとするとベランダへ直行する猫)

 2.カブトムシが求める刺激(光、餌、異性)

(1)光(夜行性・走行性)

①夜行性(月や星の光のような、わずかな光を求めるが、人工的な強い光は嫌う)

カブトムシはカラス等の天敵から身を守るため、昼間は隠れ、夜行動する夜行性の昆虫だ。夜行性の昆虫は、暗闇でも行動できるように、数億年前から、月や星の光のような、わずかな光に対して非常に敏感な目を持っている。だから、月や星の光のような、わずかな光を求めるが、太陽のような強い光を嫌う。古来より自然界では、夜間には蛍光灯などの人工的な強い光は存在しなかった。夜間、飼育ケースの中に、あるはずもない強い光が差し込めば、パニックになるのも無理はない。

②走行性(人工的な強い光は、飛行制御を失わせ、パニックに陥らせる)

夜行性の昆虫は、月や星のわずかな光に対して一定の角度で飛ぶことによって飛ぶ高さを調整する機能を持っている(走光性)。しかし、街灯などの人工的な光は平行ではなく放射状に出るから、この光に対して体を一定の角度に保って飛ぼうとすると、螺旋軌道を描いてしまう。やがて昆虫は飛行制御が出来ないことに気づき、パニックに陥る。夜行性の昆虫は、街灯に集まりたくて集まっているのではない。あるはずもない強い光によって、飛行制御を失うのだ。「飛んで火に入る夏の虫」の由来もここにある。

 (2)餌(人工的な餌(昆虫ゼリー)をすぐに餌として認識するのは困難)

カブトムシはサナギの時期を含め、地上にでるまでの約1か月間、何も食べない。だから、カブトムシが羽化し、骨格や内臓が成熟して地上に出る頃は、空腹の絶頂だ。しかし、地上は初めて経験する場所だ。餌がどこにあるかも良くわからず、成熟したばかりの視覚と臭覚だけを頼りに、狂ったようにあちこち飛び回る。自然界でもそんな状態だ。飼育ケースの中に人工的な餌(昆虫ゼリー)が置いてあっても、それをすぐ餌だと認識することは困難だろう。初めは、人工的な餌(昆虫ゼリー)を餌と認識できず、餌皿を蹴飛ばしてマットに埋めてしまう。そして、空腹のあまりカブトムシは、飼育ケースの外に餌を求めてしまうのだ。事実、羽化2週目に入った2匹のオスが、最近ようやく昆虫ゼリーを食べるようになったが、当初は餌皿を蹴飛ばすだけで、昆虫ゼリーの大半はマットに埋められていた。

(3)異性(異性のカブトムシが発散するフェロモンに誘引される)

 カブトムシの幼虫やサナギや羽化1週目のカブトムシには匂いはほとんどない。しかし、羽化2週目に入ったカブトムシは、骨格や内臓が成熟してくるので、カブトムシ本来の匂いを発散し始める。異性のカブトムシを誘引するフェロモンだ。郊外の民家の庭先でカブトムシを飼育すると、夜間、飼育ケースに里山のカブトムシが集まってくる。里山のカブトムシは飼育ケースの中の餌を求めて集まるのではない。飼育ケースの中の異性のカブトムシが発散するフェロモンに誘引され集まるのだ。広い自然界ですら、そんな状態だ。飼育ケースの中に異性のカブトムシが居なければ、飼育ケースの外に異性を求めてしまうのも無理もない。異性のカブトムシが入った別の飼育ケースがすぐ近くにあれば尚更だ。

3.カブトムシの脱走の予防策

このように、羽化2週目以降(羽化7日~10日後)のカブトムシは、夜間、様々な刺激(光、餌、異性)を求めて飼育ケースの外に出ようとする。従って、カブトムシの脱走を予防するには、これらの刺激を緩和するしかない。

 (1)人工的な光を遮る。

人工的な強い光の刺激によって、夜行性のカブトムシがパニックにならないように、夜間は飼育ケースを新聞紙などで覆い、人工的な強い光を遮る。

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(ベランダの照明が真上にあるため、脱走翌日から、新聞紙で覆った飼育ケース)

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(7月17日、新聞紙で覆う前:虫よけシートの破損が激しい)

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(7月18日、新聞紙で覆った後:虫よけシートの破損はわずかに留まる)

 (2)人工的な餌(昆虫ゼリー)に慣れさせる。

飼育ケースの外に餌を求めてしまうことのないように、時間をかけて飼育ケースの中の人工的な餌(昆虫ゼリー)に慣れさせる。初めは、人工的な餌(昆虫ゼリー)をなかなか餌と認識できず、餌皿を蹴飛ばしてマットに埋めてしまい、飼育ケースの外に餌を求めてしまうかもしれない。しかし、このような場合でも昆虫ゼリーの露出面積を増やすことで、カブトムシに昆虫ゼリーの存在をアピールし、餌が飼育ケースに残っていることを認識させる。昆虫ゼリーの露出面積を増やすと「カブトムシの体が汚れる」「マットが汚れる」「コバエが寄り付く」などの短所があるが、これもカブトムシが昆虫ゼリーに慣れるまでの話だ。毎晩、脱走されるより良いだろう。

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(マットに埋められた昆虫ゼリー。慣れないカブトムシは餌が無いと思ってしまう)

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(マットを少しよけて昆虫ゼリーの上にカブトムシを置くと、数秒でしがみつく) 

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(そこで、昆虫ゼリーの露出面積を徐々に増やし、昆虫ゼリーの存在をアピール)

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(すると、ようやく人工的な餌(昆虫ゼリー)にも慣れたようだ)

(3)オス・メス一緒にするか、メスの飼育ケースを近づけない。

羽化2週目に入ったカブトムシは、骨格や内臓が成熟してくるので、カブトムシ本来の匂いを発散し始める。異性のカブトムシを誘引するフェロモンだ。飼育ケースの中に異性のカブトムシが居なければ、飼育ケースの外に異性を求めてしまうのも無理もない。異性のカブトムシが入った別の飼育ケースがすぐ近くにあれば尚更だ。そこで、考えられるのは、以下の2つだ。

①オス・メス一緒にしてしまう

②メスの飼育ケースを近づけない

現在、羽化2週目に入ったメスが1匹いるが、羽化不全であったこともあり、まだ餌を食べない。したがって、まだオスを誘引するフェロモンを出していないと思われる。メスが餌を食べだした頃に、他のオス3匹の行動を見て、オス達が飼育ケースを脱走するようであれば、上記①②のどちらかを選択せざるを得ないかもしれない。

4.カブトムシの脱走防止策

コバエ侵入防止用の「虫よけシート」を飼育ケースと蓋の間に挟むと、蓋が空きやすくなるデメリットがある。結果、カブトムシの脱走を容易に許してしまう。そこで、考えられるの対策は、以下の2つだ。

(1)蓋に重しを乗せ、飼育ケースの蓋が絶対に開かないようにする。

(2)たとえ飼育ケースの外に出ても、屋外には出られないようにする。

カブトムシがたとえ飼育ケースの外に出ても屋外には出られないように、昨日も、飼育ケースは全てベランダの小動物用ケージに入れてあったのだが、ケージのネットの隙間から脱走されてしまった。そこで、ケージのネットを全て貼り替え、再度、脱走防止対策をやり直したところだ。

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