カブトムシの幼虫、さなぎの育て方2018年

虫好きな猫たちのために、ベランダでカブトムシの幼虫を育てる悪戦苦闘の物語

「毎日の健康診断チェック」(カブトムシ1匹目オスが、今日で羽化後70日目を迎えたが、「毎日の健康診断チェック」で全てアラートが出てしまった。そろそろ本当に寿命が近づいたようだ。敬老の日までしばしお別れだが大丈夫だろうか?)

カブトムシ1匹目オスが、今日で羽化後70日目を迎えたが、前回、「1匹目のオスの食が細くなった」と書いたように、そろそろ本当に寿命が近づいたようだ。今週は日中マットに全く潜らなくなり、今朝は木にしがみつく力も弱くなった。9月10日(月)を境に、東京の平均気温・最低気温は5℃以上ガクンと落ちたままだ。ベランダ飼育なので、この急な気温低下も影響しているのだろう。

明後日は敬老の日なので週末は実家だ。しばしお別れだが大丈夫だろうか?今日が最後かもしれないので、いつもより沢山写真を載せてしまった。

 1.9月15日(土)朝7時半の様子

(1)上は1匹目オス:日中は、マットの下に潜っていない⇒不健康。
(2)下は2匹目オス:日中は、マットの下に潜っている⇒健康。 f:id:chart15304560:20180915080820j:plain

(飼育ケースの汚れ具合を見ても、上の1匹目オスは2匹目オスに比べ、食事・排泄の量が少ないことがわかる)

2.1匹目オス:サイズ(小)、色(赤)、蛹化6/20、羽化7/6、後食7/14

「毎日の健康診断チェック」。今朝は、とうとう全てアラートが出てしまった。

(1)夜間は、マットの上に出て活動していること(食事・排泄など)⇒×。
(2)木にしがみつく力が強いこと(体力)⇒×。
(3)日中は、マットの下に潜っていること(休息・太陽光や熱の遮断)⇒×。

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 (エサ皿にしがみつく力も日々弱まっているようだ)

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(「木にしがみつく力が強いこと」のチェック)

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(角度を上げると後ろ足が浮いてしまう。「しがみつく」というより、前足だけで「ぶら下がる」といった感じだ)

 3. 2匹目オス:サイズ(中)、色(茶)、蛹化6/27、羽化7/11、後食7/18

2匹目オスも今日で羽化後65日目を迎えた。

「毎日の健康診断チェック」。今朝も正常を確認した。

(1)夜間は、マットの上に出て活動していること(食事・排泄など)⇒〇。
(2)木にしがみつく力が強いこと(体力)⇒〇。
(3)日中は、マットの下に潜っていること(休息・太陽光や熱の遮断)⇒〇。

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(今朝は、マットの下ではなく、エサ皿の下に潜っていた)

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(「木にしがみつく力が強いこと」のチェック)

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(角度を上げても後ろ足は浮かない。しっかり「しがみつく」力はまだあるようだ)

カブトムシの大きさの秘密③「同一生息地(栄養環境)では生息深度の地温の違いが”幼虫期の発育速度”と”成虫の大きさ”を決定づける」(各深度の地温は、昼夜の長さが等しくなる春分・秋分の頃に「表層=中層=深層」となり、「春から夏にかけての気温上昇」に伴い「表層>中層>深層」となり、「秋から冬にかけての気温低下」に伴い「表層<中層<深層」となる)

前回、以下のように述べた。

「有効積算温度の法則」及び「温度ーサイズ則」によれば、カブトムシの幼虫が「発育速度」を変えて「大型化・小型化」する仕組みは、以下のように説明できる。

(1)外気温が「発育有効温度帯」の上限(最高発育限界温度)に近づくほど、幼虫期の発育速度は速まり、成長率が高くなるため、カブトムシの幼虫は発育期間を著しく短縮して「小型化」した成虫へと発育を遂げる。

(2)外気温が「発育有効温度帯」の下限(最低発育限界温度)に近づくほど、幼虫期の発育速度は遅くなり、成長率が低くなるため、カブトムシの幼虫は発育期間を著しく延長して「大型化」した成虫へと発育を遂げる。

それでは、「カブトムシの幼虫の発育速度に影響を与える外気温」とは何だろうか?「変温動物である昆虫類の発育速度や大きさの秘密」を解き明かす上で、ここでいう「外気温」が何を意味するのかが、最も重要なポイントである。なぜなら、「変温動物」である昆虫は、「恒温動物」である哺乳類や鳥類と違って、「発育」に必要な「温度」を自ら作り出し調整する事は出来ない。そのため、どんなに豊富な食糧が身近にあっても「発育」に必要な「温度」が外部から供給されなければ発育出来ないからだ。昆虫にとって成虫になるまで一気に発育を行うか、一旦発育を停止して冬眠するか、発育速度を加速させるか減速させるかは、全て「外気温」次第なのだ。

それでは、カブトムシの幼虫にとって、ここでいう「外気温」とは「気温」のことだろうか?そうであるとすると、同一生息地(雑木林や養殖場)であれば「気温」も同じであるから、「外気温」が「幼虫期の発育速度」に与える影響は同じはずである。更に、同一生息地(雑木林や養殖場)であれば、幼虫の栄養環境(腐葉土や堆肥や朽木)も同じである。従って、この場合、「幼虫期の発育速度」に違いは無く、「幼虫の発育期間」や「成虫の大きさ」の違いも無いはずである。

しかし、実際は、同一生息地(雑木林や養殖場)であっても、カブトムシの「幼虫期の発育速度」には違いがあり、「幼虫の発育期間」や「成虫の大きさ」には違いが存在する。従って、カブトムシの幼虫にとって、ここでいう「外気温」は「気温」であるとは言えない。

それでは、同一生息地(雑木林や養殖場)であっても、カブトムシの「幼虫期の発育速度」に異なる影響を与える「外気温」とは何だろうか? f:id:chart15304560:20180907205825j:plain

(9月7日朝6時撮影。1匹目のオス、羽化62日目。今朝は食が細いようだ。そろそろ寿命が近づいたのかもしれない)

1.昆虫の発育速度に影響を与える外気温(「気温」「水温」「地温」)

昆虫は幼虫期に発育し、成虫期になると発育を停止する。従って、「昆虫の発育速度」に影響を与える「外気温」は、その昆虫の幼虫期の生活環境(「地上」「水中」「地中」)によって異なる(「気温」「水温」「地温」)。

(1)「地上で生活する昆虫」の場合(「外気温」=「気温」)

バッタ等の「地上で生活する昆虫」は、幼虫期も成虫期も地上で生活するため、「気温」の影響を直接受ける。従って、バッタ等の「地上で生活する昆虫」の「幼虫期の発育速度」に影響を与える「外気温」は「気温」である。

(2)「水中で生活する昆虫」の場合(「外気温」=「水温」)

ゲンゴロウ等の「水中で生活する昆虫」は、幼虫期も成虫期も水中で生活するため、「気温」の影響を直接受けない。ゲンゴロウ等の「水中で生活する昆虫」の「幼虫期の発育速度」に影響を与える「外気温」は「水温」である。

(3)「地中で生活する昆虫」の場合(「外気温」=「地温」)

ケラ等の「地中で生活する昆虫」は、幼虫期も成虫期も地中で生活するため、「気温」の影響を直接受けない。ケラ等の「地中で生活する昆虫」の「幼虫期の発育速度」に影響を与える「外気温」は「地温」である。

(4)「カブトムシ」の場合(「外気温」=「地温」)

カブトムシは、幼虫期を地中で生活し、成虫期は地上で生活する。従って、カブトムシは、成虫は「気温」の影響を直接受けるが、幼虫は「気温」の影響を直接受けない。カブトムシの「幼虫期の発育速度」に影響を与える「外気温」は「地温」である。

2.昆虫の「発育速度」

(1)「生物の発育速度」

生物の「発育」は、体内で起きる「化学反応」であり、「化学反応」の速度は、普通10℃の差で2~3倍変わる。従って、一般的に「生物の発育速度」は「温度」に比例し、10℃上昇するごとに2~3倍に増加する(温度係数Q10=2~3)。

(2)「昆虫の発育速度」

特に、「変温動物」である昆虫は、「恒温動物」である哺乳類や鳥類と違って、「発育」に必要な「温度」を自ら作り出し調整する事は出来ない。そのため、昆虫の「発育」は、「外気温」に大きく左右され、「外気温」が10℃上昇するごとに「昆虫の発育速度」は2~3倍に増加する。

(3)「カブトムシの幼虫期の発育速度」

これをカブトムシに当てはめた場合、カブトムシの「幼虫期の発育速度」に影響を与える「外気温」は「地温」であるから、カブトムシの「幼虫期の発育速度」は、「地温」が10℃上昇するごとに2~3倍に増加することになる。

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(9月7日朝6時撮影。2匹目のオス、羽化57日目。相変わらず食が細い。先月と違った変化は特に見られない。もう少し寿命を延ばすだろうか?)

 3.地温の「深度分布」の特徴

地温は地表に近いほど気温の影響を受ける。そのため、同一生息地(雑木林や養殖場)であっても、「地温」は地中の「深度」によって異なる。したがって、カブトムシの「幼虫期の発育速度」も、地中の「深度」によって異なり、「地温」が10℃上昇するごとに2~3倍に増加することになる。

それでは、具体的に「気温」と比べて「各深度の地温」はどのように異なるのだろうか?
・「各深度の地温」は、「気温」と比べてどの程度違うのか?
・「各深度の地温の振れ幅」は、「気温の振れ幅」と比べてどの程度違うのか?
・「各深度の地温」は、「気温の変化」と常に同期して変化するのか?
・「気温及び各深度の地温」は、その差が最も縮まる時期はいつか?

そこで、参考として「地温に関するデータ」を参考資料1:「自然教育園内の深度別地温観測 (2010年~2016年)」から引用した(国立科学博物館附属自然教育園は、東京都港区白金台五丁目に存在する国立科学博物館附属の自然緑地である)。

例:自然教育園内の気温及び地温(5, 10, 30, 50cm深)の月別平均値
2014年  気温  5cm深   10cm深  30cm深  50cm深
1月   4.5    5.0    6.0    8.5     10.0
2月   4.2    3.9    4.6    6.9      8.3
3月   9.1    7.8    8.0    8.2      8.5
4月   13.8   12.2   12.0   11.6   11.1
5月   18.4   17.6   15.7   14.7   13.5
6月   21.4   19.7   19.4   18.4   16.9
7月   24.5   22.5   22.0   21.7   19.0
8月   25.6   23.8   23.4   23.3    20.7
9月   21.2   20.4   20.5   20.4    20.0
10月   17.0   17.1   17.4   18.2   18.2
11月   12.2   13.1   13.7   15.5   15.9
12月   5.4    7.9    8.7     12.6     12.6

このデータによれば、昆虫の冬眠期間(最低発育限界温度10℃未満)は、50cm深は2カ月、30cm深は3カ月、10cm深・5cm深は4カ月である。このように冬眠期間は深度によって異なるため、地下1m~5mに巣穴を作るアリは、冬眠をせずに越冬出来るのである。

  (1)「各深度の地温」は、「気温」と比べてどの程度違うのか?

①参考資料1の「図3 気温および深度別日平均地温の季節変動(2014~2015年)」によると、「各深度の地温」と「気温」の日平均値の差(絶対値)は、以下の通りである。「各深度の地温」と「気温」との差は、深くなるほど、大きくなる傾向がある。

・5cm深の地温と「気温」の差⇒1.6℃(絶対値)
・10cm深の地温と「気温」の差⇒2.0℃(絶対値)
・30cm深の地温と「気温」の差⇒3.3℃(絶対値)
・50cm深の地温と「気温」の差⇒4.1℃(絶対値)

②ちなみに、東京の年平均気温15.4℃を基準にすると鹿児島18.6 ℃(+3.2℃)、秋田11.7 ℃(-3.7℃)であり、これは、気温と30cm深の地温の温度差3.3℃(絶対値)に相当する。

(2)「各深度の地温の振れ幅」は、「気温の振れ幅」と比べてどの程度違うのか?

①参考資料1の「表1 気温,相対湿度および地温(5, 10, 30, 50cm深)の月別平均値」(2014年)によると、気温と「各深度の地温」の「月平均の最高地温と最低地温の差」は、以下の通りである。このように「各深度の地温の振れ幅」は、深くなるほど狭まるため、地温は深くなるほど季節を通して安定する傾向がある。

・気温の振れ幅⇒ 25.6℃(8月)ー4.2 ℃(2月)=21.4℃
・5cmcm深の地温の振れ幅⇒23.8℃(8月)ー3.9 ℃(2月)=19.9℃
・10cm深の地温の振れ幅⇒23.4℃(8月)ー4.6 ℃(2月)=18.8℃
・30cm深の地温の振れ幅⇒23.3℃(8月)ー6.9 ℃(2月)=16.4℃
・50cm深の地温の振れ幅⇒20.7℃(8月)ー8.3 ℃(2月)=12.4℃

②また参考資料1によると、生命反応速度の振れ幅も、50cm深では5cm深の1/2と穏やかであることを指摘している。

(3)「各深度の地温」は、「気温の変化」と常に同期して変化するのか?

①参考資料1によると、「気温や表層付 近の地温の推移に対し,特に50cm深の地温は時間的な遅れを伴って推移していた。これは,大気中 や表層土付近に加えられた熱が徐々に熱伝導により下方に移動している様子や徐々に放熱している様 子を示していると考えられる」。

②「時間的な遅れ」の具体記述は無いが、参考資料1の「表1 気温,相対湿度および地温(5, 10, 30, 50cm深)の月別平均値」(2014年)を見ると、「気温の変化」に対して、30cm深で約1か月、50cm深で約2カ月のタイムラグを確認できる。

③したがって、「地温」は、地表に近いほど「気温の変化」と同期し、深くなるほど、同期しにくい傾向がある。

 (4)「気温及び各深度の地温」は、その差が最も縮まる時期はいつか?

①参考資料1の「図3 気温および深度別日平均地温の季節変動(2014~2015年)」によると、「3月上旬から 4月中旬ごろにかけて,そして8月下旬から9月中旬ごろにかけては,日平均気温を含め表層付近か ら50cm深までの温度差が最も小さくなる時期であった。つまり,この時期は大気環境から地表下 50cm深までがほぼ同程度の温度であるということである」。

②したがって、「気温及び各深度の地温」は、その差が最も縮まる時期は「3月上旬から 4月中旬頃」「8月下旬から9月中旬頃」であり、ほぼ同程度の温度になる。これは「昼夜の長さが等しくなり気温が上昇に転じる」春分の頃、「昼夜の長さが等しくなり気温が下降に転じる」秋分の頃に相当する。

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(9月6日朝8時撮影。昨日までは1匹目のオスの食いっぷりは良かったが・・)

 4.地温の「深度分布」の特徴(まとめ)

以上の地温の「深度分布」の特徴をまとめると、以下の通りである。

「地温」は、地表に近いほど「気温」の影響を受け易く、深くなるほど影響を受けにくい(「深くなるほど温まりにくく、且つ、冷えにくい」)。したがって、

(1)「各深度の地温」と「気温」との差は、深くなるほど、大きくなる傾向がある(例:5cm深1.6℃、10cm深2.0℃、30cm深3.3℃、50cm深4.1℃)。

(2)「各深度の地温の振れ幅」は、深くなるほど狭まるため、地温は深くなるほど季節を通して安定する傾向がある(例:5cm深19.9℃、10cm深18.8℃、30cm深16.4、50cm深12.4℃)

(3)「地温」は、地表に近いほど「気温の変化」と同期し、深くなるほど、同期しにくい傾向がある(例:「気温の変化」に対して、30cm深で約1か月、50cm深で約2カ月のタイムラグを確認できる)

(4)「気温及び各深度の地温」は、その差が最も縮まる時期は「3月上旬から 4月中旬頃」「8月下旬から9月中旬頃」であり、ほぼ同程度の温度になる。これは「昼夜の長さが等しくなり気温が上昇に転じる」春分の頃、「昼夜の長さが等しくなり気温が下降に転じる」秋分の頃に相当する。

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(9月6日朝8時撮影。1匹目のオス、体温調整が出来ないカブトムシは成虫も地温を頼りにしている)

5.地温の「季節変動サイクル」

以上の地温の「深度分布」の特徴(1)~(4)から、「各深度の地温」は季節変動によって以下のように移り変わることがわかる。

(1)「春から夏にかけての気温の上昇」期

「各深度の地温」は、「春から夏にかけての気温の上昇」に伴い上昇するが、深くなるほど気温の影響を受けにくく、また、同期しにくいので「各深度の地温」に温度差が生じる(気温>表層>中層>深層)。例:「気温の変化」に対して、30cm深で約1か月、50cm深で約2カ月のタイムラグを確認できる。

(2)「昼夜の長さが等しくなり気温が下降に転じる」秋分の頃

「各深度の地温」は、「昼夜の長さが等しくなり気温が下降に転じる」秋分の頃に、温度差がなくなり(タイムラグが解消され)、ほぼ同程度の温度になる(気温=表層=中層=深層)。

(3)「秋から冬にかけての気温の低下」期

「各深度の地温」は「秋から冬にかけての気温の低下」に伴い低下するが、深くなるほど気温の影響を受けにくく、また、同期しにくいので「各深度の地温」に温度差が生じる(気温<表層<中層<深層)。例:「気温の変化」に対して、30cm深で約1か月、50cm深で約2カ月のタイムラグを確認できる。

(4)「昼夜の長さが等しくなり気温が上昇に転じる」春分の頃

「各深度の地温」は、「昼夜の長さが等しくなり気温が上昇に転じる」春分の頃に、温度差がなくなり(タイムラグが解消され)、ほぼ同程度の温度になる(気温=表層=中層=深層)。

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(9月6日朝8時撮影。2匹目のオス、このように地中を掘れば自然界のカブトムシもまだ出てくる)

6.地温の「季節変動サイクル」への「温度ーサイズ則」の適用

地温の「季節変動サイクル」へ「温度ーサイズ則」を適用すると、次のようになる。

同一生息地(雑木林や養殖場)であっても、生息深度によって地温が違うため、カブトムシの「幼虫期の発育速度」に違いが生じ、「幼虫の発育期間」や「成虫の大きさ」にも違いが発生する(「温度ーサイズ則」)。「各深度の地温」は季節変動によって移り変わるため、具体的な違いは、地温の「季節変動サイクル」が決定づける。

(1)「春から夏にかけての気温の上昇」期

「各深度の地温」は、「春から夏にかけての気温の上昇」に伴い上昇するが、深くなるほど気温の影響を受けにくく、また、同期しにくいので「各深度の地温」に温度差が生じる(「気温>表層>中層>深層」)。そのため、

①生息深度が浅いほど地温は高くなるため、幼虫期の発育速度は速まり、成長率が高くなるため、カブトムシの幼虫は発育期間を著しく短縮して「小型化」した成虫へと発育を遂げる。

②生息深度が深いほど地温は低く留まるため、幼虫期の発育速度は遅くなり、成長率が低くなるため、カブトムシの幼虫は発育期間を著しく延長して「大型化」した成虫へと発育を遂げる。

 (2)「秋から冬にかけての気温の低下」期

「各深度の地温」は「秋から冬にかけての気温の低下」に伴い低下するが、深くなるほど気温の影響を受けにくく、また、同期しにくいので「各深度の地温」に温度差が生じる(「気温<表層<中層<深層」)。そのため、

①生息深度が浅いほど地温は低くなるため、「冬眠期間」(最低発育限界温度10度未満)が長くなり、その分「発育可能期間」(最低発育限界温度10度以上)は短くなる。その結果、カブトムシの幼虫は発育期間を著しく短縮して「小型化」した成虫へと発育を遂げる。
②生息深度が深いほど地温は高く留まるため「冬眠期間」(最低発育限界温度10度未満)は短くなり、その分「発育可能期間」(最低発育限界温度10度以上)は長くなる。その結果、カブトムシの幼虫は発育期間を著しく延長して「大型化」した成虫へと発育を遂げる。

それでは、地球温暖化に伴い、カブトムシの生息域はどのように変わるのだろうか?また、「温度ーサイズ則」によれば、カブトムシの大きさはどのように変わるのだろうか?沖縄に生息するオキナワカブトやタイワンカブトの様に小型化してしまうのだろうか?

長くなるので、次回へ続く。 

参考資料1:「自然教育園内の深度別地温観測 (2010年~2016年)」

研究と標本・資料 ≫ 学術出版物 :: 国立科学博物館 National Museum of Nature and Science,Tokyo

 

カブトムシの大きさの秘密②「幼虫が”発育速度”を変えて”大型化・小型化”する仕組み」(「有効積算温度の法則」「温度ーサイズ則」。昆虫は変温動物であるため、発育に適した温度帯の範囲では、外気温が上がるほど幼虫期の発育速度は速まり、成虫サイズが小さくなる。逆に、外気温が下がるほど幼虫期の発育速度は遅くなり、成虫サイズが大きくなる)

前回、以下のように述べた。

(1)「カブトムシの初夏(6月上旬頃)の小型化」は「幼虫の発育速度が速いこと」が原因であり、「カブトムシの晩夏(8月上旬頃)の大型化」は「幼虫の発育速度が遅いこと」が原因である。
(2)したがって、これを飼育ケースで実現し、カブトムシの幼虫を健康な「オオカブト」「ミニカブト」に育てるには、単なる「幼虫のエサの質と量の調整」ではなく「幼虫の発育速度の調整」が必要になると考えられる。

それでは、カブトムシの幼虫が「発育速度」を変えて「大型化・小型化」する仕組みは何だろうか?f:id:chart15304560:20180901200533j:plain

(9月1日朝9時撮影。1匹目のオス、羽化56日目。今朝のように、外気温が30度未満の比較的涼しい朝はマットの上に居ることが多い)

1.一般的に生物の「発育」の速度は「温度」に比例する

(1)生物の「発育」は体内で起きる「化学反応」であり、「化学反応」の速度は、普通10℃の差で2~3倍変わる(温度係数Q10=2~3)。

(2)従って、一般的に生物の「発育」の速度は「温度」に比例する。

2.「変温動物」の「発育」は「恒温動物」と違って外気温に大きく左右される

(1)「恒温動物」(人間などの哺乳類やスズメなどの鳥類)

「恒温動物」は、「発育」に必要な「温度」を自ら作り出し調整することが出来るため、外気温の変動にかかわらず体温をほぼ一定に保つ事が出来る。そのため、「恒温動物」の「発育」は、外気温に大きく左右されない。

(2)「変温動物」(メダカなどの魚類や、カブトムシなどの昆虫類)

「変温動物」は、「発育」に必要な「温度」を自ら作り出す事は出来ない。そのため、「変温動物」の「発育」は、外気温に大きく左右される。多くの生物反応の温度係数(Q10値)は2~3であるから、外温度が10℃上昇するごとに「変温動物」の「発育速度」は2~3倍に増加することになる。

3.昆虫の発育有効温度帯(最低発育限界温度~最高発育限界温度)

(1)発育有効温度帯

このように「変温動物」である昆虫の「発育」は、外気温に大きく左右されるため、昆虫の「発育」には「発育に有効な一定の温度の範囲」(有効温度帯)が必要とされ、それより高い温度帯や低い温度帯では発育できない(最低発育限界温度~最高発育限界温度)。

(2)最低発育限界温度

昆虫は一 般に10℃以上の気温で発育し、それ以下では発育できない。10℃以下の気温になると発育を停止し、冬眠状態に入る。なお、具体的な「最低発育限界温度」は、各種昆虫の個体群ごとに異なる。

(3)最高発育限界温度

昆虫は一 般に35℃以下の気温で発育し、それ以上では発育できない。35℃以上の気温になると発育を停止し、それを5℃上回るだけで致死温度になる(42~50℃に数分から数時間暴露することで昆虫種の90%の死亡をもたらす)。なお、具体的な「最高発育限界温度」は、各種昆虫の個体群ごとに異なる。

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(9月1日朝9時撮影。「変温動物」であるカブトムシの体温は外気温に大きく左右される。そのため外気温が30度を超えると、地中に潜って外気温の影響を遮断する)

 4.有効積算温度の法則

(1)有効積算温度

「発育」には「発育期間」が必要であるため、昆虫が幼虫から成虫へ発育を遂げるためには、「瞬間的な温度」ではなく、「発育に有効な一定の温度(有効な温度の時間積分)」が必要となる。これは「有効積算温度」と呼ばれ、次の式で表される。

「有効積算温度」=「 発育期間」×(「発育期間中の日平均気温」ー「最低発育限界温度」)

例えば、「最低発育限界温度」が15℃である昆虫が、幼虫から成虫へ発育を遂げるために必要となる「有効積算温度」を求めてみよう。その昆虫が幼虫から成虫へ発育を遂げるために必要とした「 発育期間」を100日、「発育期間中の日平均気温」を22℃とすると、その昆虫が幼虫から成虫へ発育を遂げるために必要とした「有効積算温度」は700日℃であったことがわかる。

100日 ×(22℃ー15℃)=700日℃

(2)有効積算温度の法則

「有効積算温度」と「最低発育限界温度」は、各種昆虫の個体群ごとに固有の値(定数)を持つ。これは「有効積算温度の法則」と呼ばれ、次の式で表される。

「発育期間」=「有効積算温度」÷(発育期間中の日平均気温ー最低発育限界温度)

「有効積算温度」と「最低発育限界温度」は、各種昆虫の個体群ごとに固有の値(定数)であるため、「発育期間」は「発育期間中の日平均気温」に反比例する。つまり、「発育期間」は温度が高いと短く、温度が低いと長くなる。

例えば、「最低発育限界温度」が15℃で、「有効積算温度」が700日℃である昆虫が、幼虫から成虫へ発育を遂げるために必要とする「発育期間」は、その年の日平均気温の違いにより、次のように予測できる。

①「発育期間中の日平均気温」が20℃の場合は、

「発育期間」=700日℃ ÷(20℃ー15℃)=140日となる。

②「発育期間中の日平均気温」が22℃の場合は、

「発育期間」=700日℃ ÷(22℃ー15℃)=100日となる。

③「発育期間中の日平均気温」が25℃の場合は、

「発育期間」=700日℃ ÷(25℃ー15℃)=70日となる。

このように、昆虫は、発育に適した「発育有効温度帯」の範囲内では、外気温が上がるほど「発育期間」は短くなり、「発育速度」は速まる。外気温が下がるほど「発育期間」は長くなり、発育速度は遅くなる。

(3)補足1「成虫の出現時期」の予測(9/3追記)

このように、その年の「日平均気温」から、ある昆虫の幼虫の「発育期間」を予測できるのであれば、その昆虫の「成虫の出現時期」を予測することが出来る。この予測手法は主に農作物等に被害を与える「害虫」の駆除に役立っている。つまり、「害虫の出現時期」を「その年の日平均気温」の推移状況から予測することにより、「農薬や害虫駆除剤を撒く最適な時期」を予測することが出来る。これにより、農作物等に撒く「農薬や害虫駆除剤の量」を必要最低限に抑えることが可能となる。

(4)補足2「成虫の世代数(年間出現回数)」の予測(9/3追記)

①地域別「年間の有効積算温度」

昆虫は一 般に10℃以上の気温で発育し、それ以下では発育できない(最低発育限界温度)。そこで、ある地域の「1年のうち冬眠期間(10℃未満)を除いた発育可能期間(10℃以上)において昆虫が発育に使用できる温度」を「年間の有効積算温度」と呼び、「年間の有効積算温度」=「(日平均気温ー最低発育限界温度10℃)の1年間の積算値」(但し、日平均気温が最低発育限界温度10℃以上の日に限る)で表される。例えば北海道の北端ではおよそ770日℃、青森では1000日℃、東京では2200日℃、石垣島では4400日℃になる。

②「成虫の世代数(年間出現回数)」の予測

ある地域の「年間の有効積算温度」を基に、ある昆虫の「成虫の世代数(年間出現回数)」を予測することが出来る。

「成虫の世代数(年間出現回数)」=「年間の有効積算温度」÷「有効積算温度」

従って、「有効積算温度」が高い昆虫は年間の世代数が少なく、低い昆虫は世代数が多いということになる。

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(8月29日朝8時撮影。1匹目のオス、朝から外気温が高く蒸し暑い日は、外気温の影響を遮断するため、飼育ケースの底まで深くまで潜る)

5.「温度ーサイズ則」(temperature-size rule)

このように、昆虫は、発育に適した「発育有効温度帯」の範囲内では、

(1)外気温が上がるほど幼虫期の発育速度は速まり、成長率が高くなるため、幼虫は発育期聞を著しく短縮して成虫へと発育を遂げる。その結果、成虫の体サイズが小型化する。

(2)外気温が下がるほど幼虫期の発育速度は遅くなり、成長率が低くなるため、幼虫は発育期聞を著しく延長して成虫へと発育を遂げる。その結果、成虫の体サイズが大型化する。

(3)これを「温度ーサイズ則」(temperature-size rule) と呼ぴ、概ね80% 以上の変温動物に当てはまるとされている。  

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(8月29日朝8時撮影。2匹目のオス、マットは外気温を遮断し、カブトムシの体温を冷ます役目があるため、底の方まで十分加湿して、ひんやり湿った状態にしておく)

6.カブトムシの幼虫が「発育速度」を変えて「大型化・小型化」する仕組み

このように「有効積算温度の法則」及び「温度ーサイズ則」によれば、カブトムシの幼虫が「発育速度」を変えて「大型化・小型化」する仕組みは、以下のように説明できる。

(1)外気温が「発育有効温度帯」の上限(最高発育限界温度)に近づくほど、幼虫期の発育速度は速まり、成長率が高くなるため、カブトムシの幼虫は発育期聞を著しく短縮して「小型化」した成虫へと発育を遂げる。

(2)外気温が「発育有効温度帯」の下限(最低発育限界温度)に近づくほど、幼虫期の発育速度は遅くなり、成長率が低くなるため、カブトムシの幼虫は発育期聞を著しく延長して「大型化」した成虫へと発育を遂げる。

従って、【お盆休み番外編①】で述べた「小さなカブトムシほど初夏に出現し、大きなカブトムシほど晩夏に出現する傾向」の要因は、「カブトムシの幼虫の発育速度に影響を与える外気温」であったことがわかる。

それでは、「カブトムシの幼虫の発育速度に影響を与える外気温」とは何だろうか?「変温動物である昆虫類の発育速度や大きさの秘密」を解き明かす上で、ここでいう「外気温」が何を意味するのかが、最も重要なポイントである。

長くなるので、次回へ続く。 

参考資料1:「日本産昆虫、ダニの発育零点と有効積算温度定数:第 2版」

http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/sinfo/publish/bulletin/niaes31-1.pdf

参考資料2:「温度-サイズ則の適応的意義」

温度-サイズ則の適応的意義

カブトムシの大きさの秘密①「自然界で極稀に見られる”カブトムシの大型化・小型化”の原因」(「幼虫の栄養過剰や栄養失調」が原因ではなく、「幼虫の発育速度が遅いこと・速いこと」が原因。健康な「オオカブト」「ミニカブト」に育てるには、単なる「幼虫のエサの質と量の調整」ではなく「幼虫の発育速度の調整」が必要)

例年、夏休みも終わる頃になると「飼育していたカブトムシが卵を産んだので、幼虫を育てたい」という相談が相次ぐ。但し、どの家庭も一度はカブトムシの幼虫飼育の経験があるので、その内容は昔と違って専門的だ。「出来るだけ赤いカブトムシに育てたい」とか「出来るだけ大きな80ミリ台のオオカブトに育てたい」とか「うちの子供はカナブンのような小さなカブトムシの方がカワイイというので、ミニカブトに育てたい」というユニークなものばかりだ。

(1)「赤カブト」については「カブトムシの色の秘密①②」で述べたように、「カブトムシの色は天敵から身を守る保護色として餌場の色と遺伝に関係しているため、その選別飼育は難しいこと(ここ数年のメダカブームの火付け役である楊貴妃メダカ等のカラーメダカの品種改良も保護色と遺伝が関係している)」、「飼育・養殖されたカブトムシの中にも遺伝法則に従い一定の割合で赤カブトは存在するため、毎年入手可能であること」を理由に、従来の飼育方法で納得してもらう。

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(今年猫たちのために飼育した幼虫4匹のうち、赤カブトになったのは1匹)

(2)「オオカブト」「ミニカブト」については、「育てたい理由は何故か」と聞くと、「売ってないから」という。確かに、ペットショップやホームセンター等で販売されているカブトムシは、大半が「普通のカブトムシ」だ。カブトムシは寿命が非常に短く「季節限定」であるため、「大きさ」よりも「健康で丈夫であること」を第一に大量に養殖されるのだろう。そのため、ペットショップやホームセンター等で販売されているカブトムシは、長い角のあるオスとないメスで価格の違いはあっても、「大きさ」によって価格の違いは無いようだ。
(3)そこで、「オオカブト」「ミニカブト」については、「幼虫のエサの質と量の調整で、オオカブトやミニカブトに育てることは可能。但し、栄養過剰や栄養失調といった少し不健康なカブトムシでよければ」と言うと「それでは困る」という。要するに「栄養過剰の肥満のオオカブト」や「栄養失調のミニカブト」はすぐ死んでしまいそうだから、自然界に極稀に現れる「オオカブト」や「ミニカブト」のように健康に育てたいというのだ。贅沢な話である。

(4)そもそも、自然界に極稀に現れる「カブトムシの大型化・小型化」の原因は、「幼虫の栄養過剰や栄養失調」が原因なのだろうか?それとも「幼虫の発育速度が遅いこと・速いこと」が原因なのだろうか?

①「大型化・小型化」⇒「幼虫の栄養過剰や栄養失調」が原因?

②「大型化・小型化」⇒「幼虫の発育速度が遅いこと・速いこと」が原因?

(5)なぜなら、飼育ケースの中とは違って、自然界にはカブトムシの幼虫のエサ(腐葉土など)は、クヌギやコナラなどの広葉樹が存在する場所であれば、どこにでも豊富に存在するからだ。都市部の公園でさえクヌギやコナラなどの広葉樹の落ち葉が集められた一角が必ず存在する。都市部の公園にカブトムシが少ないのは、「カブトムシの餌場の秘密①(整備された都市部の公園ほどカブトムシが居ない理由)」で述べたように、カブトムシの成虫のエサとなる樹液を出す広葉樹が少ないのが理由であって、カブトムシの幼虫のエサ(腐葉土など)は豊富に存在する。

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(今年の8月13日、晩夏に実家の庭先に現れた実測75ミリの茶カブト。実家の近所では例年に比べ「小さい方だ」という)

(6)「カブトムシの寿命が尽きる時期」で述べたように、日照時間の長さがピークを迎え、樹液の生成に必要な樹木の光合成が最も活発になるのは梅雨が明ける7月以降だ。そのため、 大半の普通のカブトムシは仲夏(7月上旬頃)に羽化する。

一方、【お盆休み番外編①】で「小さなカブトムシほど初夏に出現し、大きなカブトムシほど晩夏に出現する傾向がある」と述べた。

①「初夏(6月上旬頃)の小型化」⇒極少ない小型のカブトムシ

②「仲夏(7月上旬頃)の標準」⇒大半の普通のカブトムシ

③「晩夏(8月上旬頃)の大型化」⇒極少ない大型のカブトムシ

(7)それでは、仲夏(7月上旬頃)に羽化する大半の普通のカブトムシを「標準のカブトムシ」とすると、初夏(6月上旬頃)に出現する極少ない小型のカブトムシは「幼虫の栄養失調(幼虫の発育不足)」が原因で「小型化」したのだろうか?また、晩夏(8月上旬頃)に出現する極少ない大型のカブトムシは「幼虫の栄養過剰(幼虫の発育過剰)」が原因で「大型化」したのだろうか?

①「初夏の小型化」⇒「幼虫の栄養失調(幼虫の発育不足)」が原因?

②「仲夏の標準」⇒「標準のカブトムシ」

③「晩夏の大型化」⇒「幼虫の栄養過剰(幼虫の発育過剰)」が原因?

(8)それとも、初夏(6月上旬頃)に出現する極少ない小型のカブトムシは「幼虫の発育速度が速いこと」が原因で「小型化」したのだろうか?また、晩夏(8月上旬頃)に出現する極少ない大型のカブトムシは「幼虫の発育速度が遅いこと」が原因で「大型化」したのだろうか?

①「初夏の小型化」⇒「幼虫の発育速度が速いこと」が原因?

②「仲夏の標準」⇒「標準のカブトムシ」

③「晩夏の大型化」⇒「幼虫の発育速度が遅いこと」が原因?

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(8月31日朝5時撮影。1匹目のオス、羽化55日目。相変わらずの大食漢。夜は食い散らかし、昼は猛暑を避けるため、朝からマットに身を隠してしまう)

1.カブトムシの「初夏(6月上旬頃)の小型化」の原因は、「幼虫の栄養失調(幼虫の発育不足)」が原因ではなく、「幼虫の発育速度が速いこと」が原因

(1)仮に、「初夏の小型化」の原因が、「貧しい栄養環境」や「卵の孵化時期の遅れ」に伴う「幼虫の栄養失調(幼虫の発育不足)」にあるならば、何故、わざわざ、標準のカブトムシより早い時期(初夏)に羽化するのだろうか?

(2)「発育不足」な幼虫ほど、まだ羽化の準備は整っていないのだから、その分の「発育不足」を補うために、幼虫の発育期間を長くとるだろう。わざわざ、樹液があまり出ていない梅雨の時期(初夏)に、標準のカブトムシより早く羽化する必要はない。

(3)従って、「初夏(6月上旬頃)の小型化」の原因は、「幼虫の栄養失調(幼虫の発育不足)」が原因ではなく、「幼虫の発育速度が速いこと」が原因と考えられる。

 2.カブトムシの「晩夏(8月上旬頃)の大型化」の原因は、「幼虫の栄養過剰(幼虫の発育過剰)」が原因ではなく、「幼虫の発育速度が遅いこと」が原因

(1)仮に、「晩夏の大型化」の原因が、「豊富な栄養環境」や「卵の孵化時期の早め」に伴う「幼虫の栄養過剰(幼虫の発育過剰)」にあるならば、何故、わざわざ、標準のカブトムシより遅い時期(晩夏)に羽化するのだろうか?

(2)「発育過剰」な幼虫ほど、既に羽化の準備は整っているのだから、その分早く成虫となってより多くの子孫を残すために、幼虫の発育期聞を短くとるだろう。わざわざ、樹液が枯れ始めるお盆の時期(晩夏)まで待って、標準のカブトムシより遅く羽化する必要はない。

(3)従って、「晩夏(8月上旬頃)の大型化」の原因は、「幼虫の栄養過剰(幼虫の発育過剰)」が原因ではなく、「幼虫の発育速度が遅いこと」が原因と考えられる。 f:id:chart15304560:20180831063121j:plain

(8月31日朝5時撮影。2匹目のオス、羽化50日目。こちらも明け方にはマットに身を隠すため、エサを食べているところを撮影するには早起きが必要)

3、健康な「オオカブト」「ミニカブト」に育てるには、単なる「幼虫のエサの質と量の調整」ではなく「幼虫の発育速度の調整」が必要

(1)このように、「カブトムシの初夏(6月上旬頃)の小型化」は「幼虫の発育速度が速いこと」が原因であり、「カブトムシの晩夏(8月上旬頃)の大型化」は「幼虫の発育速度が遅いこと」が原因である。

(2)したがって、これを飼育ケースで実現し、カブトムシの幼虫を健康な「オオカブト」「ミニカブト」に育てるには、単なる「幼虫のエサの質と量の調整」ではなく「幼虫の発育速度の調整」が必要になると考えられる。

それでは、カブトムシの幼虫が「発育速度」を変えて「大型化・小型化」する仕組みは何だろうか?

長くなるので、次回へ続く。

急激な気温変化に伴うカブトムシの突然死。その理由と対策(昆虫類は気温の変動に伴って体温が変化する変温動物であるため、「急激な気温変化」に非常に弱く、寿命を縮める要因になる。釣り名人「急激な水温変化に伴う魚の突然死と同じ。魚の場合は水合わせを行って突然死を防いでいる」)

例年「子供が夏休みに入った頃に、購入したカブトムシや採集したカブトムシがすぐ死んでしまった」という話をよく聞く。前々回「カブトムシの寿命が尽きる時期」で述べたように、カブトムシの成虫の寿命は平均1.5カ月(1~3ヶ月)と短く、先日寿命が尽きた2匹のカブトムシのように、カブトムシの寿命が尽きる前には必ず数日前から前兆がある。しかし、今年は例年と違って「前日まで非常に元気だったカブトムシが突然死んでしまった」という話をよく聞く。今年のカブトムシの突然死の原因は、他にあるようだ。

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(1匹目のオス、羽化50日目。自然界のカブトムシ同様、直射日光が当たらなければ、庭先やベランダなどの屋外でも猛暑を乗り切る)

1.急激な気温変化に伴うカブトムシの突然死

(1)「購入したカブトムシが突然死んでしまった」という例は、「屋外(庭先やベランダなどの日陰)での飼育」に多い

ペットショップ等で販売されるカブトムシは、大半が養殖された個体であり、地方の養殖地で羽化し地上に出るとすぐに出荷され、問屋を経て都市部のペットショップ等で販売される。従って、購入したカブトムシは、購入者の手元に届くまでの大半の時間を、冷房の効いた屋内で過ごすことになる。その後は「冷房の効いた屋内での飼育」の家庭もあれば、「屋外(庭先やベランダなどの日陰)での飼育」の家庭もあるだろう。そして「購入したカブトムシが突然死んでしまった」という例は、後者の「屋外(庭先やベランダなどの日陰)での飼育」に多い。

(2)逆に、「採集したカブトムシが突然死んでしまった」という例は、「冷房の効いた屋内での飼育」に多い

一方、採集したカブトムシは、近隣の雑木林などで羽化し地上に出ているところを採集される。従って、採集されたカブトムシは、採集者の手元に届くまでの大半の時間を、屋外で過ごすことになる。その後は「冷房の効いた屋内での飼育」の家庭もあれば、「屋外(庭先やベランダなどの日陰)での飼育」の家庭もあるだろう。そして「採集したカブトムシがすぐ死んでしまった」という例は、前者の「冷房の効いた屋内での飼育」に多い。

(3)「屋外飼育」と「屋内飼育」の決定的な違いは「気温の差」(平均して一昨年は約3度差、昨年は約6度差、今年は約8度差もあった)

子供が夏休みに入った頃(7月21日~31日)と言えば、例年梅雨が終わり、冷房が最も使われる時期だ(北海道を除く、全国の夏の家庭電力消費量の58%はエアコンに使われている)。

また、ある調査ではエアコンの設定で「ちょうどよい」と回答した比率が最も高かったのは「25度」である(68.3%)。

そこで、「屋内平均気温」25度を基準として、子供が夏休みに入った頃(7月21日~31日の11日間)の東京の「最高気温」(屋外)と比較すると、その気温差は、平均すると、次の通りである。

2016年は平均+3.27℃(最小ー3℃、最大+8℃)、
2017年は平均+6.27℃(最小+3℃、最大+9℃)、
2018年は平均+8.00℃(最小+3℃、最大+14℃)である。

したがって、子供が夏休みに入った頃(7月21日~31日)の「屋内飼育」と「屋外飼育」の「気温の差」は、過去3年間、拡大を続け、平均して一昨年は約3℃差、昨年は約6℃差、今年は約8℃差もあった。

 (4)したがって、カブトムシの突然死の原因として、「カブトムシの生存環境が購入を契機に冷房の効いた屋内から屋外へ変更された」又は「カブトムシの生存環境が採集を契機に屋外から冷房の効いた屋内へ変更された」ことによる「生存環境の急激な気温変化」が考えられる。

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(2匹目のオス、羽化45日目。自然界のカブトムシ同様、日中の高温を避けるため、夜間に活動し、明け方には地中に潜ってしまう)

 2.急激な気温変化がカブトムシの突然死を招く理由

それでは、このような「生存環境の急激な気温変化」があった場合に、「カブトムシの突然死」が起こるのは何故だろう? 

(1)哺乳類や鳥類は、「恒温動物」

人間や猫などの哺乳類や、スズメなどの鳥類は、外気温の変動にかかわらず体温をほぼ一定に保つ「恒温動物」だ。そのため、活動できる温度範囲が広く、「急激な気温変化」にも、ある程度耐えられる。

(2)魚類や昆虫類は、「変温動物」

一方、メダカなどの魚類や、カブトムシなどの昆虫類は、水温や気温の変動に伴って体温が変化する「変温動物」だ。そのため、活動できる温度範囲が狭く、「急激な温度変化」に非常に弱く、寿命を縮める要因になる。

(3)「変温動物」は3℃違うだけで、「恒温動物」に比べはるかに大きな温度差と感じる。

このように、「変温動物」のメダカやカブトムシは、水温や気温の変動に伴って体温が変化するため、「恒温動物」の人間や猫に比べ温度に敏感である。よく「釣った魚を手で触ると魚がやけどする」と言われるように、カブトムシも毎日子供に触られると衰弱死することが多い。それは、「変温動物」のメダカやカブトムシは3℃違うだけでも、「恒温動物」の人間や猫に比べはるかに大きな温度差と感じるからだ。

(4)「恒温動物」の人間や猫でさえ、「冷房の効いた屋内」と「屋外」の間を移動するだけで、疲れ、体力も消耗する。

(5)気温の変動に伴って体温が変化する「変温動物」のカブトムは、「恒温動物」の人間や猫に比べ温度に敏感であるため、「冷房の効いた屋内」と「屋外」の間を移動するだけで、寿命が縮まるほどのダメージを受ける。

(6)今年は特に、子供が夏休みに入った頃(7月21日~31日)の「屋内飼育」と「屋外飼育」の「気温の差」は、平均して約8℃差もあった(過去3年間で最高)。「変温動物」のカブトムシは、3℃違うだけで、「恒温動物」の人間に比べはるかに大きな温度差と感じる。それが毎日平均して8℃も違っていたのだから、「前日まで非常に元気だった」カブトムシが「突然死」するのも無理はない。

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(カブトムシは気温の変動に伴って体温が変化する「変温動物」であるため、出来るだけ直射日光を避けようとして地中深く潜る)

3.対策(「急激な気温変化に伴うカブトムシの突然死」を防ぐ方法)

既に述べたように、子供が夏休みに入った頃(7月21日~31日)の「屋内飼育」と「屋外飼育」の「気温の差」は、過去3年間、拡大を続け、平均して一昨年は約3℃差、昨年は約6℃差、今年は約8℃差もあった。従って、今年のような「急激な気温変化に伴うカブトムシの突然死」は、来年以降も恒例化する可能性がある。

それでは、このような「カブトムシの突然死」を防ぐ方法は無いだろうか?どの世界でも、その道の「コツ」を熟知しているのが、「名人」と言われる人達だ。都内でも川に釣りに行くたびに、孫のためにカブトムシやクワガタを沢山採ってくる「釣り名人」は多い。郊外の里山でもめったに見かけないヒラタクワガタコクワガタのようにザクザク採ってくる。魚釣りの醍醐味を知っている「釣り名人」は、昆虫採集の醍醐味も知っている。そんな「釣り名人」が指摘するコツは「急激な水温変化に伴う魚の突然死と同じ。魚の場合は水合わせを行って突然死を防いでいる」という。

(1)アクアリウムの世界では、「急激な水温変化に伴う魚の突然死」を防ぐ方法として「水あわせ」という対策が採られる

江戸時代から観賞魚として親しまれているメダカなどの魚類も、カブトムシと同様、ペットショップ等で購入したり、採集したりする変温動物だ。メダカを例にとると、ビニール袋にメダカと「元の生存環境の水」(ペットショップの水槽や採集現場の水)を一緒に入れて自宅に持ち帰り、「新しい生存環境の水」(自宅の水槽などの水)に移す。しかし、「元の生存環境の水」と「新しい生存環境の水」では水温や水質が違う。水温が3℃違うだけでも「変温動物」であるメダカにしてみれば、「恒温動物」の人間に比べてはるかに大きな温度差と感じる。場合によってはメダカは、寿命が縮まるほどのダメージを受ける。そこで、「元の生存環境の水」と「新しい生存環境の水」の水温や水質の違いによる魚類のダメージを軽減するために、アクアリウムの世界では、「水あわせ」という対策が採られる。

(2)「水あわせ」とは、メダカなどの魚類を「新しい環境の水温や水質」に時間をかけて慣れさせること

まず、購入又は採集してきたメダカを入れたビニール袋を「自宅の水槽」に浮かべ、メダカを「自宅の水槽」の水温に時間をかけて慣れさせる。次に、ビニール袋に「自宅の水槽」の水を半分ほど入れ、メダカを「自宅の水槽」の水質に時間をかけて慣れさせる。

(3)同様にカブトムシを「新しい生存環境の気温」に時間をかけて慣れさせれば良い

このように、アクアリウムの世界では、「急激な水温変化に伴う魚の突然死」を防ぐ方法として「水あわせ」という手法が用いられている。要するに、メダカなどの魚類を「新しい生存環境の水温」に時間をかけて慣れさせ、水温変化に伴うダメージを軽減させるのだ。同様に、カブトムシなどの昆虫類も、気温の変動に伴って体温が変化する変温動物だ。したがって、「急激な気温変化に伴うカブトムシの突然死」を防ぐには、カブトムシを「新しい生存環境の気温」に時間をかけて慣れさせ、気温変化に伴うダメージを軽減させれば良い。

(4)購入したカブトムシを「屋外(庭先やベランダなどの日陰)で飼育」する場合

購入したカブトムシの元の生存環境は、ペットショップ等の「冷房の効いた屋内」である。従って、購入したカブトムシを「屋外(庭先やベランダなどの日陰)で飼育」する場合は、初日からいきなり「屋外(庭先やベランダなどの日陰)で飼育」するのではなく、当初は「冷房の効いた屋内での飼育」から始めるのが良いだろう。そして、気温変化に伴うカブトムシのダメージを軽減させるために、「冷房の効いた屋内」と「屋外」の「気温の差」が3℃以内に縮まる雨天の日を待って「屋外(庭先やベランダなどの日陰)での飼育」へ移行するのが良いだろう。

(5)採集したカブトムシを「冷房の効いた屋内で飼育」する場合

採集したカブトムシの元の生存環境は、近隣の雑木林等の「屋外」である。従って、採集したカブトムシを「冷房の効いた屋内で飼育」する場合は、初日からいきなり「冷房の効いた屋内で飼育」するのではなく、当初は「屋外(庭先やベランダなどの日陰)での飼育」から始めるのが良いだろう。そして、気温変化に伴うカブトムシのダメージを軽減させるために、「冷房の効いた屋内」と「屋外」の「気温の差」が3℃以内に縮まる雨天の日を待って「冷房の効いた屋内での飼育」へ移行するのが良いだろう。

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(カブトムシは夜行性であるため、夕方になると地上付近に浮上して、夜間活動の準備を始める。そのため、夕方にエサをセットし、朝夕は加湿してマットの温度を下げる)

「夏の風物詩、カブトムシ」の世代を超えた人気の秘密(カブトムシは、子供たちの夏休みに合わせて姿を現し、子供たちのお盆の墓参りを見届けて一斉に散ってゆく。その姿を通して、子供たちは「命に限りがある事」を心に刻み、大人たちは残りの人生を照らし合わせ「命の儚さ(はかなさ)」を風情として感じ取る)

1.カブトムシは、クワガタと比べ、圧倒的に寿命が短い

前回、「カブトムシの寿命が尽きる時期」について述べたように、カブトムシの成虫の寿命は平均1.5カ月(1~3ヶ月)と短く、生存期間はほぼ夏季に限定される(初夏、仲夏、晩夏)。一方、クワガタの成虫の寿命は非常に長く一年を超すものも少なくない(ノコギリクワガタミヤマクワガタ3~6ヶ月、コクワガタヒラタクワガタ1~2年、オオクワガタ2~3年)。そのため、クワガタの生存期間は夏季に限定されない。

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(カブトムシは、クワガタと比べ、圧倒的に寿命が短い)

2.カブトムシは、クワガタと比べ、圧倒的に世話がかかる

(1)カブトムシは、クワガタと比べ、毎晩、エサを食い散らかし、大量の排泄を行うため、毎日の餌やりや掃除に手間がかかることも多く、世話がかかる。

(2)カブトムシは、クワガタと比べ、コバエ・ダニ・匂い・脱走・騒音などの対策に気を遣うことも多く、世話がかかる。

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(カブトムシは、クワガタと比べ、圧倒的に世話がかかる)

3.このように「クワガタと比べ、圧倒的に寿命が短く世話がかかるカブトムシ」が、半世紀に渡って圧倒的な人気を誇り、世代を超えて親しまれてきたのは何故だろう?

(1)一見すると、「寿命が長く世話がかからないクワガタ」の方が、「寿命が短く世話がかかるカブトムシ」より、圧倒的に人気がありそうだが、実際は逆だ。事実、「カブトムシは今も変わらず子どもが大好きな昆虫のランキング1位をキープし続けている」。また、ペットショップの売り場を覗いてみればわかるように「親や祖父母が、夏休みに子や孫に薦める昆虫はクワガタより圧倒的にカブトムシの方が多い」。

(2)その理由は、カブトムシはクワガタと違って「季節限定」であるためだ。カブトムシは寿命が短く、生存期間はほぼ夏季に限定される。カブトムシはクワガタと違って「季節限定」であるため「夏の風物詩」として世代を超えて親しまれる。しかし、クワガタは寿命が長く、生存期間は夏季に限定されない。クワガタは「季節限定」でないため「夏の風物詩」に挙げられない。

(3)7月25日のブログ 「カブトムシの底知れない魅力の秘密」で書いたように、「夏の風物詩」としてカブトムシがデパートなどで販売されて、今年でちょうど50年になる。その最大の理由は、カブトムシの「寿命の短さ」にある。生存期間が夏季に限定されるカブトムシは、そうでないクワガタと違って「季節限定」であるため、「夏の風物詩」として、あらゆる世代に「今しかない」と思わせる不思議な魅力がある。

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(カブトムシはクワガタと違って、「寿命が短い」からこそ、「季節限定」の「夏の風物詩」として、半世紀に渡って圧倒的な人気を誇り、世代を超えて親しまれてきた)

4.カブトムシが「夏の風物詩」として、親の世代、祖父母の世代の大人たちにも親しまれる理由(「命の儚さ(はかなさ)を感じさせる寿命の短さ」と「祖先の霊を祀るお盆をピークに寿命が尽きてゆくこと」)

(1)「風物詩(ふうぶつし)」とは、季節特有の現象、文化、味覚、生物など、その季節をより意識に特徴づけることができることだ。

(2)「風情(ふぜい)」とは、日本古来から存在する美意識の1つで、日本の四季が造り出す、儚(はかな)いもの、質素なもの、空虚なものの中にある美しさや趣や情緒を見いだし、心で感じることだ。特に、昔から人々は年を重ねるごとに「儚(はかな)いもの」に残りの人生を照らし合わせ「風情(ふぜい)」を感じとってきた。

(3)日本は四季の違いが鮮明に現れる国だ。だから、昔から人々は年を重ねるごとに「季節特有の風物詩」の「儚さ(はかなさ)」に残りの人生を照らし合わせ「風情」を感じとってきた。例えば、江戸時代の庶民の間では「秋の風物詩」として「鈴虫」が飼育されていた。「鈴虫」は、晩夏(8月上旬)に羽化し、秋の彼岸(9月下旬)をピークに徐々に姿を消してゆく。

(4)現代でも、「桜の花」は「春の風物詩」に挙げられ、「カブトムシ」は「夏の風物詩」に挙げられる。昔から人々は年を重ねるごとに「桜の花」や「カブトムシ」の「寿命の短さ」に「儚さ(はかなさ)」を見いだし、残りの人生を照らし合わせ「風情」を感じとってきたのだ。一年のうち、桜が花を咲かせる時期は、ほんの束の間だ。鈴虫の鳴き声が聴かれる時期も、ほんの束の間だ。それと同じように、カブトムシが姿を現すの時期も、ほんの束の間なのだ。

(5)前回述べたように、大半の普通のカブトムシは、仲夏(7月上旬頃)に羽化し、ちょうど子供たちの夏休みが始まった頃に頻繁に姿を現し、祖先の霊を祀るお盆の墓参りの時期(8月中旬頃)をピークに徐々に姿を消してゆく。

(6)例えば、先日寿命が尽きた2目のカブトムシも、仲夏(7月上旬頃)に羽化し(羽化7/12,12)、ちょうど子供たちの夏休みが始まった頃に頻繁に姿を現し(後食7/20,21)、祖先の霊を祀るお盆の墓参りの時期をピークに徐々に姿を消して行った(死亡8/15,19)。

(7)これを「風情」を添えて表現すれば「桜の花が、あたかも、子供たちの入学式に合わせて咲くように、カブトムシは、子供たちの夏休みに合わせて姿を現す。そして、桜の花が、あたかも、子供たちの新しい門出を見届けて一斉に散ってゆくように、カブトムシは、子供たちのお盆の墓参りを見届けて一斉に散ってゆく」。

(8)このように、カブトムシはクワガタと違って、「夏の風物詩」として親の世代、祖父母の世代の大人たちにも広く親しまれる。その理由は、「命の儚さ(はかなさ)を感じさせる寿命の短さ」と「祖先の霊を祀るお盆をピークに寿命が尽きてゆくこと」にある。

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(カブトムシはクワガタと違って、毎年、子供たちの夏休みに合わせて姿を現し、子供たちのお盆の墓参りを見届けて一斉に散ってゆく)

5.「夏の風物詩、カブトムシ」の世代を超えた人気の秘密

カブトムシは、子供たちの夏休みに合わせて姿を現し、子供たちのお盆の墓参りを見届けて一斉に散ってゆく。その姿を通して、子供たちは「命に限りがある事」を心に刻み込み、大人になってゆく。大人たちは年を重ねるごとに、残りの人生を照らし合わせ「命の儚さ(はかなさ)」を風情として感じ取る。

(1)先週のNHK連続テレビ小説「半分、青い」で、主人公の鈴愛(すずめ)が「祖父(仙吉)の死の意味」を理解できない娘(かの)に、「カブトムシの死」を例えて理解させようとする場面があった。このように、祖先の霊を祀るお盆の時期になると、子供たちは「カブトムシの死」を見つめる機会が多くなる。「カブトムシの死」を通して「命に限りがある事」を心に刻み込み、子供たちは大人になってゆく。

(2)「夏の風物詩」としてカブトムシがデパートなどで販売されて今年でちょうど50年になる。だから、今の子供たちの親の世代も、祖父母の世代も、子供の頃は、祖先の霊を祀るお盆の時期になると、「カブトムシの死」を見つめる機会が多かった。半世紀に渡り、子供たちは「カブトムシの死」を通して「命に限りがある事」を心に刻み込み、大人になってきたのだ。

(3)また、カブトムシはクワガタと違って、毎年、子供たちの夏休みに合わせて姿を現し、子供たちのお盆の墓参りを見届けて一斉に散ってゆく。毎年、祖先の霊を祀るお盆の時期になると、親の世代、祖父母の世代の大人たちは、年を重ねるごとに、残りの人生を照らし合わせ「夏の風物詩、カブトムシ」の「死」を通して「命の儚さ(はかなさ)」を風情として感じ取ってきた。

(4)このように、毎年、祖先の霊を祀るお盆の時期になると、「夏の風物詩、カブトムシ」の「死」を通して、子供たちは「命に限りがある事」を心に刻み、大人たちは「命の儚さ(はかなさ)」を風情として感じ取ってきた。こうした経験が、半世紀に渡り、親から子へ、子から孫へ引き継がれてきた。確かに、カブトムシは、クワガタと比べ、「圧倒的に寿命が短く世話がかかる」昆虫だ。しかし、それを補って余りある魅力がカブトムシにはあるのだろう。これが、「夏の風物詩、カブトムシ」が半世紀に渡って圧倒的な人気を誇り、世代を超えて親しまれてきた人気の秘密である。

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(毎年、祖先の霊を祀るお盆の時期になると、「夏の風物詩、カブトムシ」の「死」を通して、子供たちは「命に限りがある事」を心に刻み、大人たちは残りの人生を照らし合わせ「命の儚さ(はかなさ)」を風情として感じ取ってきた)

カブトムシの寿命が尽きる時期(カブトムシの寿命は、樹液の量に左右され、樹液の量は日照時間の長さに左右されるため、寿命が尽きる時期は羽化した時期(初夏、仲夏、晩夏)によって決まる。今年は記録的な猛暑の影響もあったようだ。飼育中の4匹のカブトムシも、お盆に入り2匹の寿命が尽きた)

1.カブトムシの寿命が尽きる時期

【お盆休み番外編】で「小さなカブトムシほど初夏に出現し、大きなカブトムシほど晩夏に出現する傾向がある」と述べた。それでは、カブトムシの大きさの違いによって「カブトムシの寿命が尽きる時期」に違いがあるのだろうか?正確には、カブトムシが羽化した時期(初夏(6月上旬頃)、仲夏(7月上旬頃)、晩夏(8月上旬頃))によって「カブトムシの寿命が尽きる時期」は決まる。カブトムシの寿命は、クヌギやコナラ等の広葉樹から出ている樹液の量に左右され、樹液の量は日照時間の長さに左右されるからだ。 

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(1)初夏(6月上旬頃)に羽化した極少ない小型のカブトムシは、子供たちの夏休みが始まった頃(7月中旬頃)をピークに徐々に寿命が尽きていく。

「一年で一番昼の時間が長い日」は夏至(6/21)だが、日本ではまだ梅雨の時期に当たるため、実は日照時間がまだまだ短い季節だ。日照時間の長さがピークを迎え、樹液の生成に必要な樹木の光合成が最も活発になるのは梅雨が明ける7月以降だ。

樹液があまり出ていない梅雨の時期(6月)によく見かけるクワガタは、コクワガタや小さなノコギリクワガタなど小型のクワガタが多い。初夏(6月上旬頃)に羽化した極少ないカブトムシも、小型だからこそ、樹液があまり出ていない梅雨の時期でも十分に生存できるのだろう。このように初夏(6月上旬頃)に羽化した極少ない小型のカブトムシは、大半の普通のカブトムシより早めに羽化するため、子供たちの夏休みが始まった頃(7月中旬頃)をピークに徐々に寿命が尽きていく。

「子供が夏休みに入った頃にペットショップ等で購入したカブトムシがすぐ死んでしまった」という話をよく聞くが、その大半は初夏(6月上旬頃)に羽化した個体ではないかと思う。

(2)仲夏(7月上旬頃)に羽化した大半の普通のカブトムシは、お盆(8月中旬頃)をピークに徐々に寿命が尽きていく。

日照時間の長さがピークを迎え、樹液の生成に必要な樹木の光合成が最も活発になるのは梅雨が明ける7月以降だ。だから、大半の普通のカブトムシは仲夏(7月上旬頃)に羽化し、ちょうど子供たちの夏休みが始まった頃に頻繁に姿を現す。しかし、夏至(6/21)以降、既に昼の時間は一日一日と短くなっているため、お盆(8月中旬頃)に入る頃には日照時間も一日一日と短くなる。今年もお盆が終わった8月17日以降、東京の最高気温は3日連続で30度以下になり、いくぶん涼しくなった。これから秋に向かって、日照時間が一日一日と短くなるのに比例して、クヌギやコナラ等の樹木から出る樹液の出る勢いが一日一日と弱まる。だから、仲夏(7月上旬頃)に羽化した大半の普通のカブトムシはお盆(8月中旬頃)をピークに徐々に寿命が尽きていく。

(3)晩夏(8月上旬頃)に羽化した極少ない大型のカブトムシも、秋の彼岸の頃(9月中旬頃)には寿命が尽きていく。

「暑さ寒さも彼岸まで」というように、例年、暑さは秋の彼岸の頃(今年は9/20~9/26)まで続く。しかし、秋の彼岸が過ぎるとすっかり涼しくなる。秋分(9/23)を境に昼夜の時間の長さが逆転するためだ。日照時間もぐっと下がるため、クヌギやコナラ等の樹木から出る樹液も枯れる。だから、お盆に実家の庭先に現れたような極少ない大型のカブトムシも、秋の彼岸の頃には寿命が尽きていく。

2.記録的な猛暑は、カブトムシの寿命にも影響を与える。

今年の夏の記録的な猛暑は、カブトムシの寿命にも影響を与えたようだ。

(1)今年は関東甲信地方で観測史上最も早い梅雨明け

関東甲信、過去もっとも早い梅雨明け 猛暑の予想 (写真=共同) :日本経済新聞

気象庁は29日、関東甲信地方が梅雨明けしたとみられると発表した。6月の梅雨明けは記録がある1951年以降でもっとも早く、梅雨の短さとしては78年と並ぶタイ記録だ』

(2)カブトムシ観察施設が閉園前倒し 猛暑で3000匹衰弱死

神戸新聞NEXT|総合|カブトムシ観察施設が閉園前倒し 猛暑で3000匹衰弱死

兵庫県市川町の野外活動施設内にある夏季限定のカブトムシ観察施設「かぶとむしど~む」が、猛暑の影響でカブトムシの衰弱死が相次いだことを受け、予定より3日早く、16日で今季の営業を終えた。7月以降、累計で3千匹近くが死んで残り数十匹となり、外部から仕入れて補充する予定だったが、調達できなくなったという。19日までは300円の入園料を徴収せず、無料開放する』

3.飼育中の4匹のカブトムシも、お盆に入り、2匹の寿命が尽きた。

(1)お盆の最中の8月15日「羽化不全のメスの寿命が尽きた」と自宅から連絡が入った。羽化後33日目だった。

8月9日のブログで「羽化不全のメスの左足2本に「鍵爪の欠損」が見つかった。「鍵爪の欠損」は寿命が近づいていることを意味する」と書いた。だから、寿命が近づいていると予想はしていたが、その6日後の8月15日に「羽化不全のメスの寿命が尽きた」と自宅から連絡が入った。羽化後33日目だった。

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(8月9日に「鍵爪の欠損」が見つかった羽化不全のメス。お盆の最中の8月15日に寿命が尽きた)

 (2)お盆が過ぎた8月19日、3匹目のオスの寿命が尽きた。羽化後37日目だった。お盆前の日中の暑さによる衰弱が原因と考えられる。

7月28日のブログ「カブトムシの毎日の健康診断法」で「カブトムシが健康かどうかの判断基準」の一つとして「日中は、マットの下に潜っていること」と述べた。これまで、オスは3匹共、日中はマットの中に潜っていた。

しかし、8月15日に「3匹目のオスだけは、日中なのにマットの中に潜らなかった」と自宅から連絡が入った。念のため、この個体の飼育ケースだけ室内へ移してもらったが、その4日後の8月19日に寿命が尽きた。羽化後37日目だった。

鍵爪の欠損は無かったが「8月15日以降、日中なのにマットの中に潜らなかった」こと、「日中、昆虫ゼリーを食べている状態で寿命が尽きた」ことから、お盆前の日中の暑さによる衰弱が原因と考えられる。

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(8月15日以降「日中なのにマットの中に潜らなかった」3匹目のオス。お盆が過ぎた8月19日に「日中、昆虫ゼリーを食べている状態」で寿命が尽きた)