カブトムシとゴキブリの違い(カブトムシは甲虫の仲間(無害虫)、ゴキブリはシロアリの仲間(害虫の中の害虫))
(カブトムシのメスは、ゴキブリによく間違えられる)
夏になり、子供がカブトムシを採集してきた時、カブトムシを飼育するかどうか、家庭内で揉めるという話をよく聞く。
「 黒光りしてる昆虫は全部ゴキブリと一緒。ゴキブリは嫌いでカブトムシは平気というのが理解できない」
「ゴキブリは害虫だが、カブトムシは違う。カブトムシが害虫なら、ペットショップで売ってるわけないだろう」
このように、「カブトムシとゴキブリの違い」はなんとなくわかるけれど、その違いをきちんと伝えられる人は意外に少ない。その結果、家庭内でいろいろ揉めるとしたら、困惑するのはカブトムシを採集してきた子供達だろう。
1.カブトムシはゴキブリの「仲間」だろうか?
(カブトムシは甲虫の仲間、ゴキブリはシロアリの仲間)
(1)カブトムシは甲虫の仲間
カブトムシは甲虫の仲間だ。甲虫の「甲」は亀の甲羅(こうら)の意味で、亀の甲羅(こうら)のような固く厚い羽(前翅)を持つのが特徴だ。武士が身に着けていた「鎧(よろい)」のように内側の薄く柔らかい羽(後翅)と柔らかい腹部を保護している。
(2)ゴキブリはシロアリの仲間
ゴキブリの和名の由来は、「御器(食器)をかぶる(かじる)」事から「御器囓り(ごきかぶり)」だ。この由来の通り、ゴキブリはカブトムシと違って、一年中、人間の前に姿を現し、食卓にあるものを何でも食べてしまう。また、ゴキブリはカブトムシ(甲虫)と違って、武士の鎧(よろい)のような固く厚い羽(前翅)を持っていない。ゴキブリは、体が柔らかいシロアリ(経済害虫)の仲間なのだ。
2.カブトムシやゴキブリは「害虫」だろうか?
(カブトムシは無害虫、ゴキブリは「害虫の中の害虫」)
一般的に、「害虫」は以下の3つに分類される。
①「経済害虫」(経済上の損失の原因になる害虫)
②「衛生害虫」(菌・ウィルスなどの病原体を媒介する害虫)
③「不快害虫」(人を不快にさせる害虫)
(1)カブトムシは無害虫
カブトムシは「経済害虫」「衛生害虫」「不快害虫」のどれにも該当しない。
(2)ゴキブリは「害虫の中の害虫」
ゴキブリは「経済害虫」「衛生害虫」「不快害虫」の全てに該当する。ゴキブリが「害虫の中の害虫」と呼ばれる所以だ。
(カブトムシは「夏の風物詩」、ゴキブリのように一年中見られるわけではない)
3.ゴキブリが「害虫」である理由
(1)「経済害虫」である理由
ゴキブリはカブトムシと違って、住居にあるものを何でも食べてしまう。住居内の食べ残し、飲み残し、食器の洗い残し、風呂場の排水溝の髪の毛や石鹸カスまで、何でも食べてしまう。「不衛生な住環境はゴキブリの天国」と言われる所以だ。
(2)「衛生害虫」である理由
ゴキブリはカブトムシとは違って、下水、排水口、トイレといった不衛生な場所から侵入する。だから、ゴキブリは全身に雑菌をまとったまま、住居内を動き回る。その結果、ゴキブリは、サルモネラ菌・赤痢菌・チフス菌・大腸菌・小児麻痺病原体などを住居内にまき散らす。ゴキブリ自身は全身を油膜で包まれており、これら雑菌の影響を受けずに増殖を続ける。
(3)「不快害虫」である理由
①「衛生害虫」であること
「ゴキブリを見た飲食店には二度と行かない」という人が9割を超えるというアンケート調査がある。このように、多くの人がゴキブリを「衛生害虫」として毛嫌いている。
②一年中快適な温度の住居内では、季節や時期に関係なく繁殖する
住居でよく見かけるゴキブリ(クロゴキブリ)の寿命は約1年4か月で、卵(約1か月)→ 幼虫(約8か月)→ 成虫(約7か月)という成長段階を踏む(不完全変態)。カブトムシのようなサナギの時期がないのが特徴だ。つまり、小さなゴキブリ(幼虫)が脱皮を繰り返して大きなゴキブリ(成虫)になる。その結果、ゴキブリの幼虫は、ゴキブリ(成虫)と一緒に住居内を動き回る。しかも、ゴキブリはカブトムシと違って、一年中快適な温度の住居内では季節や時期に関係なく繁殖し続ける。「ゴキブリを1匹見かけたら近くに100匹居ると思え」と言われる所以だ。
4.猫とカブトムシ
古来より、猫は「穀物庫の番人役」(害獣・害虫ハンター)として人類に貢献してきた益獣(人間に利益をもたらす動物)である。猫がカブトムシを攻撃しないのは、「カブトムシはゴキブリと違って害虫ではない」と感じているからなのかもしれない。
(1)猫は、約9,500年前の新石器時代から「穀物庫の番人役」(害獣・害虫ハンター)として人類に貢献してきた。
(2)猫は、紀元前4000年の古代エジプト時代には害獣・害虫がまき散らす疫病から人間を守る存在として、死後は家族の一員として丁重に埋葬されるまでになった。
(3)猫は、「穀物庫の番人役」(害獣・害虫ハンター)として、中世ヨーロッパでは「麦穂の精霊」と同一視され、中国でも「稲穂の精霊」とされていた。
(4)猫は、日本では奈良時代に、教典などの大事な書物をネズミから守る益獣として、中国から輸入された。「日本猫」の始まりである。